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リストマーク 進展なし 映画みたいな恋がしたい 次へ

 テストが終わって、みんなが、
「どこに遊びに行く?」と言い合っているのを横目に、私はぼんやりしていた。奥の方に座っている彼を見つけて、
「由香ちゃんは?」と聞かれても分かってなくて、
「おーい、大橋」と呼ばれて、みんなを見た。
「撮影ボケか?」
「暑さボケだろ」と言われてしまった。まだまだ気温は高くて、
「俺さあ、すっかり日焼けしたっていうのに、女の子って焼かないんだな」
「俺、プールでバイトしたかったな」
「俺も」と隣の席の男子学生たちに言われて、
「やだなあ、そういう話はほかでしてよ」と女の子たちに怒られていた。
 
 ラフィロスの人に呼ばれて、沢登キャンパスに行った。部室で学園祭の手伝いをしていたけれど、スタッフの一部の人が落ち着かない様子で、
「人が来なかったらどうしよう」と何度も言うために、
「うるさい」と石渡君に怒られていて、
「だって、前のようだと」
「前?」と聞き返したら黙ってしまった。後から、九条君が合流してきたけれど、
「ほとんど終わってるみたいだな」と見まわしていた。
「なんだか緊張してきた」と言ったら、
「言わないでくれ」と止められた。九条君だけは淡々としていて、
「うらやましいぐらい、いつも通りだね、あなた」と言ったら、みんなが一斉にこっちを見た。
「なに?」と聞いたら、
「え、ああ、いや」とみんなが目をそらしていて、なんだろうなと思った。

 帰ってもいいというので、先に帰ろうとしたら、後ろから九条君が追ってきた。
「手伝わなくてもいいの?」と聞いたら、
「うるさいから逃げた」と言ったので、どういう意味だろうなと思ったら、
「俺たちのことを邪推してきてる」うーん。
「付き合ってるかと聞かれたよ」
「そう、それで?」
「いや、何も言わなかった」言えるはずもないよね。一応、デートはしました。という程度なのだから。その程度なら、撮影中とはほとんど変わらない。喧嘩の数は減ったけれど、デートしても言い合いで恋愛モードになんてならず、友達の延長で盛り上がるようなことはなくて、男女のデートとしては物足りないものだった。彼は淡々としていて、自分から楽しい話題を出してくれるわけもなく、私もそこまで気を使わず言いたいことを言って、それでおしまいだった。
「いいんじゃないの、それで。……なにもなかったわけだから」
「何か、言いたそうだな」とこっちの顔を見てきたけれど、黙っていた。
「言えばいいだろ、不満があるようだな」
「いや、ないよ。あなたに期待しないだけ」
「ふーん。ま、いいけど。そういえば、あいつらが俺の知り合いが見に来るなんてよけいなことを教えてくれて」
「嫌なの?」
「恩湯に行ってるやつら。悪友なんだよ」
「そう」
「お前は? 同級生は?」と聞かれて、
「え?」と少し驚いたら、
「見に来ないのか? だれか?」
「高校の友達には教えてないよ。それをしたら、かなり恥ずかしいもの」
「何のために出たんだろうな、お前。映画のような恋をする以前だな。女優気分を味わって、宣伝しなくてどうするんだよ」
「だって」
「お前の昔の男にそれとなく伝えておいたら、来るかもよ」と言われて、
「え、えー!!」動揺してのけぞったら、
「驚くことはないだろ。あいつ、地元なんだから、言えば来てくれるかもな。もっとも、相手はそれどころじゃないかもしれないけどな。彼女ができていたら」と言われて、窓の外を見た。
「ふーん」何か言いたげにこっちを見てきて、
「そういう話は耳に入れないで」と止めた。
「なんで? 相手の男も大学生だろ? 当然、そういう話の一つや二つは出てくる時期だろ」
「え、ああ、まあ」
「どこの大学だ?」と聞かれて黙ったら、
「ふーん、ここより悪いのか?」

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