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 エミリと合流して昼食を取った。
「あのさ、美優ちゃん、心配な噂を聞いたよ」と言い出して、
「それね」としか言えなかった。
「美優ちゃんがあこがれていた男って、美優ちゃんがバイトしていたテナントの近くのブランドショップだったんでしょ、しかも、紹介で」と聞かれて、うなずいた。サリがそう言っていた。美優ちゃんは夏休みの間、知り合いの紹介でデパートの近くのテナントショップでバイトをしていたらしい。そうして目当ての彼は近くの有名ブランドのショップでバイトをしていたようだ。服装などオシャレで顔もいいため、ひとめぼれに近かったという。
「その男、そのブランドショップで働いていた女の子ともデートしてたらしいよ。美優だけじゃなくてね。で、美優はデートしてほしくて、何かプレゼントしていたらしいんだけど、それが一つじゃないらしいよ」
「貢いだの?」さすがに驚いて聞いてしまった。
「相手の男、持ち物とか服装とかこだわるらしいよ。当然、女の子の容姿もね」うーん、そうか、だから、美優ちゃん……。
「困った男だね、それが本当だとしたら、ちょっとホストっぽいよ」
「言いすぎだよ」
「えー、普通は女の子からのプレゼントなんて気がないのに受け取らないよ。何回もなんて」そう言われるとそうか。
「一回ぐらいなら、渋々受け取るかもしれないけれど、美優ちゃんのメールにほとんど返信もしないような男がプレゼントだけは受け取るなんて、かなり不誠実な奴と見た」
「大丈夫かな?」
「言える状態じゃなさそうだよね。それとなくサリから注意してあげるとか」
「サリには言っておくよ。それだと心配だから。大丈夫かな」
「相手の男、久我山でしょ。由香、知り合いはいないの?」
「森園君が確か、久我山だったはずだけど、そこまで仲良くないんだよね。あとは誰かいたかなあ」と考えていた。

 ラフィロスの部室で、ポスターの種類を増やしたいからとシオンさんが考えていて、そばについていた。男性スタッフなのか、明神君の知り合いなのか、何人かが遊びに来ていて、
「俺さあ、今度合コンするんだよ」とうれしそうに報告していた。
「えー、ずるいよなあ」と言いあっていて、シオンさんは、
「こういうのって、もうちょっとひねった方がいいよね。コピーライターのような名文句を考えて」といきなり無理難題を言われてしまった。
「いや、そういうのは苦手だし」と適当にそこにあったDVDを手に取ってみていた。パッケージには宣伝文句が、確かにつらつらと書いてはあるけれど、あまり大げさに宣伝文句を考えても中身とともなってないとおかしなことになるしなあと思って、
「完成品の上映会は?」と聞いた。何度か聞いてはいるけれど、
「あと少しなんだ」としか言ってくれない。明神君はパソコンを持ち込んで、あれこれ悩んでいるようで、監督の石渡君と話し合っていて、
「でさ、服装と話題を考えてくれ」とそばにいた人が、まだ、合コン談義に夢中になっていた。
「話題って、俺には無理だよ。女が何を考えているかなんて。シオンに聞いてくれ」と言っているのが聞こえた。
「九条に聞けば?」と言い出す人もいたけれど、
「無理じゃないか。甲羅の方が思いつくだろう」そうだろうな……とぼんやりしていたら、
「由香さんのお友達は来るの?」とシオンさんに聞かれた。
「さあ」とだけ答えた。
「あら、違う学校の人にも宣伝をしておいてくれたほうが」シオンさんに言われて、
「友達には話したけれど、来るかどうか聞いてない。あとはお姉ちゃんも義理で来てやってもいいって」
「お姉さんいるんだ?」途端に後ろの男性たちがこっちを見てきた。
「どこの学校?」「きれい? かわいい?」「大橋さんに似てるの?」と食いついてきたけれど、
「さあ、顔は私には似てないし」としか言えなくて、
「どこの学校?」
「川之翔とか」と県内でもお金持ちが行くような学校名を挙げてきた。
「あー、俺、あそこの学校の子にあこがれてる。でも、あそこ、もうすぐ共学になるしなあ」と言い合っていた。私はポスターを見てぼんやりしていた。学園祭は、恩湯、沢登、鹿飲、それぞれのキャンパスごとに分かれている。合同企画は場所が広いからという理由なのか、恩湯キャンパスで行われるらしい。ラフィロスも参加するとは聞いていた。
「それでどこ?」と顔を見られて、すっかり忘れていたので、
「なに?」と聞き返したら、
「お姉さんの学校」と聞かれて、
「ああ、穂壁」と答えたら、
「げ、国立」と驚かれてしまった。姉は成績は私よりもはるかにいい。地元国立で農学部に行っているということは、エミリも知らないぐらいで、だれにも教えていなかった。聞いてくる人もいなかったし。
「知らなかった。お姉さん、頭いいんだね」とみんながうらやましそうだった。
「ほら、そこ、ちゃんとやれよ。時間もないし」石渡君に怒られて、
「はーい」とみんなが返事をしていた。

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