Top Page About My Shop Catalog Buy Now Contact Us

Catalog
リストマーク  前へ 次へ

 エミリと洋服を見ながら、
「こっちは?」と勧められた。エミリには綸同君とデートをすることを教えてあった。さすがに誰にも言わずにデートするには緊張しすぎていた。
「何を話したらいいかな?」
「浮かれてるね」とからかわれたけれど、
「え、そうじゃなくて。緊張するし」
「相手とやっと話せるチャンスなんだから頑張らないと」
「そうだけどね」
「相手、いい人そうだから、そっちの方が絶対にいいよ」と強く言われてしまった。エミリに教えた後、相手の性格やどういう人なのかを詳しく聞かれて教えてあった。
「ただ、相手がのんびりした性格だと、波長は合うかもしれないけれど、会話には困るかもね」
「そうだよね」九条君でも困るのに、綸同君だともっと困りそうだ。
「でも、良い友達じゃない。絶対にくっつけたかったから、ついてきたんだよ、きっと」
「え、そうなのかな?」
「て、ことはさ、もしかしたら、もしかするかもよ」
「もしかしたらって?」
「だから、相手も由香を気になっていたから、この機会にくっつけようとお膳立てしてくれたってことだって」
「ないでしょ」
「えー、絶対にそうだって。相手が嫌がっているなら、そんなことにはしないでしょ。まんざらでもないんだろうね、向こうもね。きっと、高校時代からひそかに由香のことを」
「ない。と、思う。綸同君ってね、『恋愛をしたことがあるんだろうか?』って感じの人なの。のんびりとしていて、優しそうな穏やかそうな、そういう雰囲気の人」
「なるほどね。それだと、今まで恋人はおろか、恋もしてないだろうね。じゃあ、それでくっつけたいのかもね」
「そう言われても」
「いいじゃない。恩湯ならいいと思うよ。鹿飲と違ってすぐ会えるわけじゃないけれど」
「そうだけど」そう言われても、付き合いたいと思ったこともない相手と、いきなりデートと言うのは緊張していた。
「なんだか夢みたいだね」
「あー、ダメだよ。それだと。現実なんだから、浮かれていたらダメだって」
「そう言われても」
「デートして、どういう人かを確かめつつ、次に会っても良さそうと思わせないとね」
「はあ」
「大丈夫なの、それで?」
「エミリと違って、会話がスムーズにできないかもしれない」
「友達と同じだと思えばいいじゃない」
「え、でも、何を話していいか」
「ふーん、やっぱり好きなんだ。いまだに」と言われて不思議だったので、
「なんで、そうなるの?」と聞いた。
「好きだから緊張するんでしょ。友達だったら緊張しないでしょ。九条と緊張しながら話してないじゃない」と言い切られて、
「え、いや、緊張はしてたよ。最初の方は」
「今はしないでしょ」
「え、ああ、いや。緊張するどころか喧嘩になるから」
「それだと男女の恋愛には発展しそうもないね。由香が緊張するということは、『相手にどう思われるんだろう?』という心配があるからじゃないの。つまり、相手をかなり意識しているってこと」そう言われると、そうかも。
「ごめん、かなり緊張してきた」
「大丈夫、それで? 二人だけで会うんだよ。ま、いいんじゃないの。凱歌はカップルだらけだったからね」
「行ったことがあるんだものね、エミリは」
「3回行った」
「行きすぎだよ」
「誘われた子と一緒に行っただけ。2回はグループで、一回だけデート」
「誰と?」
「甲羅じゃないよ。社学の元彼」
「ああ、そっちね」
「甲羅は前の彼女とかと鉢合わせすると困るから避けたんじゃないの? 何度か行こうかと誘ったけれど、人が多そうだからって断られた」
「え、九条君は行ったと言ってたから、てっきり、甲羅も一緒に行ったかと思ってた」
「九条はデートだったんじゃないの? あそこ、カップル向けだよ。花が咲いていたり、プラネタリウムがあって、買い物もできるところだし」凱歌スクエアは、できたばかりで、オシャレな感じなせいもあり、地元情報番組で何度か紹介されている。ファミリーや年配者もいることはいるらしいけれど、どちらかというとカップル向けらしい。グループで行った子たちが、
「彼氏と行きたい」と何度も言っていた。
「ちょっと緊張するな」
「それなら花咲君と下見してきたら」
「何のために?」
「予行練習」と言われて、前に花火を一緒に見に行ったことを思い出した。お友達、もしくは優しいお兄さんと一緒に出掛けた、そんな感じだった。とても予行練習にはなりそうもない。

 前へ 次へ

ライン

inserted by FC2 system