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「彼とだと異性と一緒にいるという感覚じゃなくなるから、無理じゃない?」
「はあ、ダメだね、それだと」と思いっきり呆れた顔をしていたので、
「何?」と聞いた。
「ごめん。家中さんから二人のことを何度もしつこく確認されているんだよね」
「聞いた。小坂さんが好きなんだってね」
「ほかにもいるよ。小坂さんだけじゃなくて、チナちゃんとナナセにも聞かれたし」
「へえ、いっぱいいるね」
「のんびりしてるなあ。彼女たちは、誘いたいとは思っているみたい。ただ、様子を確かめてからみたいだね。振られると困るからだろうけど」
「どうして?」
「同じ学部だと気まずくなると困るからじゃないの。由香と同じ理由でしょ」
「そう」
「由香さ、本当にいいの? 花咲君」
「彼のことは友達としか思えないよ。向こうも同じだと思うけどな」
「そうかな? 私は違うと思うけど」
「どうして?」
「だって、彼は由香には優しい目を向けている気がする」
「え、そう? みんなにじゃないの?」
「由香のことを一番見ている気がするけどなあ」
「感じないけど」
「でも、犬童は目の敵にしてる目を向けてるよ。時々」それは感じていた。
「だから、あの女も、分かってるんだよ。独特の嗅覚で」
「独特ねえ」
「それはあるでしょ。恋愛に対してのアンテナだけがやけに発達してる子がいる。そういう嗅覚が鋭いの。どの人だとライバルになりそうとか、そういうことばかり気にしてた」
「無理。友達にはそういう子がいなかったんだよね、だから、そう言われても分からないよ」
「恋愛体質の子はいたよ。双葉の方の大学に行っちゃったから、今はあまり会ってないけどね」双葉女子は大学があることはあるけれど、学部が少なすぎてそのまま進む子ばかりではないらしい。修啓グループの他大学に行くことも多いらしい。グループには外語大もあるらしい。ライフデザイン学科も双葉が修啓グループに入ってからできた新しい学科だった。
「学校の時に、そういう話をしていた子はいたけれど、仲良くなかったから、よく分からないよ」
「双葉女子大は派手だから、社学と違うよ」
「そうかもね」友達で川之翔に行っている子がいる。お金がいくらあっても足りないとぼやいていた。夏休みに会ったとき、かなり派手になっていた。
「うちの学校でさ、彼氏をとっかえひっかえしてた子がいたけれど、男に関しての勘は鋭かったからね」
「そう」
「だから、犬童も必死なんでしょ。由香と張り合いたいんだろうね」
「え、そう言われても。ただの友達なのに」
「引きはがしたくてしょうがないんだよ。不安なんだと思うよ。ライバルだから」
「ライバルじゃないよ」
「恋敵なの。言わないけれど、小坂さんだって心配そうにはしてるみたいだね。家中さんがそう言ってたからね」
「好きだと伝えた方がいいんじゃないの?」
「友達として付き合うこともあるわけだから、そういうのを壊したくないのかもしれないよ。こじれると困るじゃない」
「そうだけど」
「でも、それも分かってないんだろうね。犬童だけはね。だから、だれも強く言えないだけなのに。分かってないんだから」
「そうなのかな。割としっかりしてると思ってたんだけど」
「ああいう子、昔いたよ。中学の時だったかな。本人はね、仕切り上手で人気者だと勘違いしてた。でも、周りの女の子は遠慮して注意しないだけだった。でもねえ、その子も先輩にやられていたからね。高校で」
「女子高なのに?」
「あるよ。女子高でもそういうのはあるよ。先輩に怒られていたからね、その子。勝気だったから、言いかえしていたようだけど」
「千花ちゃんも同じことをしそうだ」
「強気すぎてわからないんじゃないの。相手が嫌がっていることが」と言われて驚いた。
「どうかした?」と聞かれて、エミリに内緒にするのもおかしいかと思い、黄和さんのことを教えた。
「ああ、そういう人って、分かってないんじゃないの。犬童と同じだよ、きっと。もう、相手のことしか見えてないから、由香が邪魔だったんだろうね。だから、相手の会話を聞いて、由香のことだと思い込んだだけじゃないの」
「よく分からない。経緯を知らないから」
「でも、男子には嫌われていたかもよ。その女の子」
「そうかもしれない。『迷惑ちゃん』なんて、テニス部の部長にまで言われているのは驚いたから。部長をしていた男子はそういうことを言いそうもない、面倒見のいい人なんだよね。それに綸同君も口には出さなかったけれど、かなり困った顔をしていたから、好きじゃなかったんだと思う」
「当り前だよ。勉強に専念したいときにまとわりつかれたら嫌じゃないの? そういう空気も読めないような子を好きにはならないと思うけどな。でも、犬童を見てても分かると思うけど、強気に押せば絶対に自分に振り向いてくれると思い込んでいるから、注意しても分からないんじゃないの?」
「そうなのかな。ひーちゃんに聞いておけばよかった。ああ、ひーちゃんは綸同君のデートを勧めた高校時代の友達ね」
「その子に確かめたらわかるんじゃないの? その時の経緯が」
「そうかもね。聞いてみるよ。デート前に心配だから」

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