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 一緒に待ち合わせてから、話すことと言ったら、人が多いというぐらいしかしてなかった。綸同君は、私に会っても、
「ああ、おはよ」としか言わなかった。先が思いやられる。
「来たことがあるの?」と聞いてみたら、
「ないよ。誘われたことはあるけれど」と言ったので驚いた。
「だれに?」
「んー、学部の連中」
「恩湯の人って、女性と出会いがないって、本当?」
「んー、そうかな」とのんびりと言われてしまった。
「森園君がそう言っていたみたいだから」
「んー、あいつは、合コンをしたと聞いたけど」とゆっくり言われて、
「え、そうなの?」と驚いた。森園君もやることをやってるなあ。
「彼って、久我山だったよね」
「んー、そうみたいだけど」
「久我山の噂って知ってる?」
「いや」で終わってしまった。
「そう」としか言えなかった。久我山に通っているのを忘れて、美優ちゃんの相手の話を聞くのを忘れていた。
「あのね、森園君って、顔が広いかな?」
「んー、どうだろう」とのんびり言われて、聞くのも変かと思い、やめておいた。
「恩湯ってどう?」
「どうって言われても、そちらと変わらないと思うけど」
「いや、違うでしょ。雰囲気が違った」
「雰囲気?」と驚かれて、大学祭の企画委員の人に会った時のことを教えた。
「んー、男性ばかりだから、珍しかったのかもしれないなあ」
「付属の人が多いの?」
「いや、そうでもないよ。付属の人はいるけど」
「綸同君はサークルは?」
「入ってないよ」と言われて、そのあと、話が続かなかった。うーん、困った。大学の話と言っても、お互いにキャンパスが違うと共通の話がないかも。
「大学生活はどうなの?」と言っているときに、
「あっちじゃないかな」ガラス張りの建物を指差した。
「ああ、あそこだね」とそちらに向かった。
「プラネタリウムなのに、ガラス張りの外観って、おしゃれだね」と言ったけれど、
「んー」としか答えてくれなかった。困った。興味がないのかも。
「プラネタリウムは好きなの?」と聞いてみた。
「星は好きだよ」と言ったので、
「星? じゃあ、望遠鏡とか持っているの?」
「あったよ。ただ、今は部屋には見当たらない。どこかに片付けてしまったと思う」
「誰が?」
「母親が」
「お母さん?」と驚いた。

「片づけるのが好きな人だから。年に2回大掃除があるから」
「2回もするんだ」と驚いた。学期末にその年のものを片付けさせられるけれど、さすがに2回だと大変そうだった。
「綸同君は兄弟は?」と聞いてみた。
「兄が一人」そうか、女性の兄弟がいないのか、この人も。だから、会話が続かないのかも。
「森園君とはどんな話をするの?」
「え?」と戸惑った後、
「さあ、どうだろうなあ。あいつが良く話すから、それを聞いて返事をすることが多いかも」のんびりとそう言ったので、森園が心配していた理由が分かってしまった。こういうところが分かっているから、お膳立てしたのかもしれない。
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