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 高校時代に女性と付き合うことに興味がない。森園君にそう言った理由が分かった気がした。プラネタリウムを出たあとは、星の話を一通りしてから、話題がなくなった。隣接のガーデンがあり、テラスルームにカフェがあって、そこでお茶していた。プラネタリウム隣接のカフェの方が大画面のモニターに宇宙が映し出されて面白そうだったけれど、人が多くて、待ち時間があったため、こっちのカフェになった。
「できてそれほど経ってないから、人が多いね。友達が何人か来ているの」
「そう。こっちは行った人は少ないよ」
「忙しいからかな?」
「んー、どうだろ」と言った後、おいしそうにコーヒーを飲んでいた。
「コーヒーが好きなの?」と聞いてみた。
「んー、どうかな」としか言わなかった。森園君とはどうやって会話をしてるんだろ。ひーちゃんは森園君がいない場所で、綸同君とは話したことはないかもしれないなあ。部活の時も男子が固まって話してはいたけれど、綸同君は女子と話すようなことはしてなかった。森園とか男子の後輩は話しかけてきたけれど、そういうときにはいなかった。だから、どういう人か分かってなかった。その雰囲気がどことなく好きだった。先輩に目を付けられて、嫌味を言われたときに、森園君とか一部の女の子がかばってはくれたけれど、それに同調する男子もいた。「テニス部女子の同学年はかわいい子がいない」とか、「後輩の方が性格も見た目もかわいい」とか言い出して、変な雰囲気になったことがあった。そういうときも彼は淡々として、それには染まらず、女の子を区別することもなくて、そういう雰囲気が好きだったのかもしれない。相川や佐並君のような差別態度をする男子はどうも好きになれない。森園君はそういうところはなく、明るかったけれど、先輩がそういう人が混じっていたために、露骨な差別をされてしまったこともある。
「お前らは邪魔だから、あっちに行けよ」そういうことを言われて、問題になった。さすがに、そういう態度では困ると思った顧問が、注意をして、その先輩とか男子がぼやいていたけれど、後の人も困った顔をしていた。そのうち、その男子は来なくなり、先輩も部活を卒業したあとだったし、明るい雰囲気に戻った。そんなことをぼんやりと思いだしていたら、綸同君がこちらを見ていて恥ずかしくなった。
「ごめんなさい。ちょっと考え事を」
「ん、いいよ」と優しく言ってくれてほっとした。彼はそういう人なのかもしれない。どこか人と違う時間が流れているのかも。マイペースで淡々としていて。
「男子と女子のテニス部が仲が悪かった時をちょっと思い出していたの」
「え、そうだっけ?」忘れていそうだな。というか、そもそも気づかなかったのかも。
「先輩とね、一部の同学年の男子が後輩とばかり仲良くしていて、面白くなかったから、それで、もめたことがあったからね」
「え、そう言われても」と困っていた。
「食べ物の恨みは怖いからね」
「食べ物?」と不思議そうにしていた。そう、その先輩はこともあろうに、他の先輩から預かって渡すように言われたお土産のお菓子を人数分には足りないからと、自分が気に入っている後輩にあげてしまい、私たちには渡さなかった。言わなければバレないと思っていたらしい。ただ、そのことを先輩が「おいしかったか?」と友達に聞いてきたため、
「え、知らないけど、なんですか?」と確認して分かってしまった。お土産でもらったお菓子を、私たちの学年の子に渡すように頼まれて、先輩は私のことを気に入らなかったために、私と一部の気に入らないテニス部の女子には渡さなくて、あとで確認したら、
「その時にいなかったお前たちが悪いんだよ」と言ってごまかすようにしたらしい。でも、
「え、おかしいな。俺、お前たちに渡すように言ったはずだけど」先輩からそう聞いていた女の子が、さすがに怒り出して、
「ひどすぎます」と抗議した。その先輩も、さすがにそれでまずいと思ったのか、
「え、ああ、いや、聞き間違いで」とか言ってごまかそうとしていたけれど、
「うるさい女だな。お菓子ぐらいでガタガタ言うなよ。そういうところがかわいくないからだろ」とその先輩といつも一緒にいた男子も言い出して、そうしてしこりが残り、一時的に目もあわさない状態になってしまった。先輩は開き直るような態度で謝らなかったし、先輩と一緒にいた男子も引っ込みがつかなかったのか、まるで怒る私たちが悪いかのような態度で、「あーあ、うるさい」近くに寄れば、そんな口調で言われて、雰囲気が悪かった。森園君は、
「仲良くしよう」と何度も働きかけたけれど、
「先輩にたてつく女子が悪いんだろ」先輩が部活を卒業した後も、そういう態度だったために、女子はその男子とは口も聞かなくなり、彼のボールがこちらに来ても、投げ返すことさえしなくなった。男子と女子とはボールの印で分かるようになっていて、
「持って来いよ」と怒っていたけれど、森園君が代わりに拾っていたりして、結局、後輩たちもいたたまれず、彼らと話すのをやめていた。それで面白くなかったのか、彼らは部活に来なくなった。
「結局、女の子が目当てで来てたからね、あいつらは」みんなは呆れていたけれど、さすがに嫌だった……なんて思い出してしまい、そのことを説明した。
「んー」と困っていたので、
「ごめん、こんなつまらない話をして」
「あの先輩、そんなことはもう忘れているんだろうな。それに、黄和さんも」
「ごめん」と謝ってきたので驚いた。
「どうして、謝るの?」
「先輩の方は良く覚えてないけれど、黄和の方は、ちょっと困ったから」
「今も分からない。なんで、彼女は私だと誤解したんだろうね、自分の話なのに」
「聞いてみてもいいけれど」
「え?」さすがに驚いて、
「でも」と言ったら、
「何度か電話がかかってくるから」今もそうなのか。
「いいよ。どうせ、忘れていると思う。そういう人だと思うから」
「僕は大橋のことを迷惑だなんて、一度も思ったことがないのにね。どうして、そうなるのかな」不思議そうな顔で困っているのを見て、あの先輩の嫌なこともなんだかどうでもいいことのように思えて、
「いいよ、楽しい話をしようよ。綸同君は、どういうのが好きなの? 趣味は?」と聞いた。

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