Top Page About My Shop Catalog Buy Now Contact Us

Catalog
リストマーク  前へ 次へ

「喧嘩しないから、嫌なことを言わないから、憧れていたのかもね。先輩に嫌味を言われた話ってしたっけ?」
「ああ、ちょっとだけ聞いた。部活の先輩だっけ?」
「そう、その人。彼は先輩とのやり取りでぎくしゃくして萎縮していた私に、普通に笑いかけてくれる人だったと思い出したの」
「ギクシャクって?」と言われてため息をつきながら、説明したら途中でエミリが怒り出した。
「横暴だ、その先輩。自分のお土産なら分かるけど。他人のお土産で後輩に取り入るな」
「そうなんだけどね。その後輩とその仲間が4人いたの。それでその子達の分もあると勘違いして渡してしまい、私と良く話していた子たちの分が無くなって、足りなかったという感じで説明したの。でも裏で『内緒にしろよ』とか、ほかの子に口止めしていたのを後から聞いて」
「やりすぎでしょ。自分が買ったものなら、まだ、分かるよ。ほかの人のお土産を自分がお気に入りの子に渡したいために、由香たちには内緒にするなんて、ちょっと変だ、その先輩、私だったらみんなの前で白黒つけてるな」とエミリが怒り出した。
「今ならね、そういうことも言えるけど、当時は先輩のことだし、それに食べ物で怒るのも、ということもあって、私もそれからほかの子も言いづらかったの。でも、食べ物関係の恨みは怖いというか、そういう部分で納得しない子がいたの。それで、先輩とはいえ、かなり怒ったら、開き直ってね。そういう態度から、同学年の二人の男子も『その程度で怒る私たちが悪い』そういう形にしたかったらしくて、そういう態度だった。こっちは穏便にしたかったけれど、男子二人は先輩が付いているから強気な姿勢を崩さなかった。でも、先生まで間に入り、『それはお前たちが悪いな。謝りなさい。女子も食べ物ぐらいで怒るな』と言ってね、それで、結局、その男子は渋々謝り、でも、部活の雰囲気が悪くなって、ひいきされていた後輩もさすがにおおっぴらに話すのを遠慮をしたために、面白くなかったらしくて、二人は部活に顔を出さなくなったりして」
「そう。それって、相手が悪いじゃない。感じが悪いよ」
「無理だよ。あくまで、怒る私たちが悪い。そういうことをずっと言っていたからね」
「それで、後輩はどうなった?」
「後輩?」
「だって、先輩が食べるものを内緒で食べてしまえる子なんて、かなりしたたかというか、ずうずうしくない?」
「『かわいい子だったから。ひいきされるのに慣れているんじゃないの?』と周りは言ってたけど。そういえば、そのあと、いつの間にか、その子ともう一人の仲のいい子が来なくなってたかも」
「由香にとっては後輩はどうでも良かったんだね。先輩の方にこだわりがあるんだ。同級生は?」
「そう言われても。目の敵にされたのは先輩だけ。同級生の方はね、私とはあまり」
「ってことは、あれだ。食べ物の恨みを怒った子と何かあったんだ?」
「さあ、仲は良くなかったみたいだけどね」
「その先輩、今も似たようなことをしていそうだね。佐並みたいになるよ、いつか」
「え?」
「そうだと思うけど。佐並もしつこいよ。デートしてやってもいいってさ」と小声で教えてくれた。
「上から目線だね」
「でしょ。いやでしょうがないけど、軽く聞いておしまいにしてるのに、しつこいね。でも、みんなのいる前だとそっけない」
「え、そうなの?」
「見栄があるんでしょ」
「そうなのかもね。よく分からない」
「食べ物の恨みか。なめたらいけないよね、その先輩。内緒にしたらわからないって言う、その根性がねじ曲がってる」
「ああ、安易には考えていたみたい。そういうので言わなければ分からないと思ってたみたいだけど、実際はね、怒っていた友達はね、お土産をくれた先輩と仲良くしてたの。それなのにもらえなかったから怒ってしまったという訳」
「詰めが甘い先輩だね。そういう関係を分からずに内緒にできると思うなんて。かなりいい加減だね。現在も似たようなトラブルで怒られているだろうね、それだと」
「え、でも」
「そういう人って、何度も同じことを繰り返すじゃない。しかも、懲りない。怒る方が悪いって、今も言いそうだね。今度会ったら、私がガーンと言ってあげるからね」
「会わないでしょ。二度と。確か、えっと、恒栄、久我山、うーん、その辺にに行ってたかもしれない」
「あっそ。でも、だったら、恩湯の彼なら勝てるよ」
「そういう問題?」とあきれたら、エミリが、
「え、そういうのもあるって。面白くない。私だったらその先輩の学校に行って、見返してやりたいね」
「いいよ、考えたくもない。顔も見たくない」
「ああ、そう思ってると、会うよ」
「脅かさないでよ」と言ったら、エミリが明るく笑いながら、
「その時は絶対に言い返してあげるからね。待ってなさい」とこぶしを握りしめていた。

 前へ 次へ

ライン

inserted by FC2 system