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 しばらくしてから、森園君から電話があった。
「悪い、携帯の番号、教えてもらったけど、良かったか?」と聞かれて、
「ああ、大丈夫」
「それで、阿木とか言う男のことだけど、そいつ、俺、知ってるぞ。というか、ひそかに有名」
「そうなんだ。どういう人?」
「良い評判を聞かないんだよな」と言って、軽くその評判を教えてくれたあと、
「詳しく知りたいなら、知り合いに聞いておいてやるよ」
「本人の耳に入らないようにしてくれると助かる」
「分かってるよ。じゃあな、綸ちゃんもよろしくな」と言われて、
「え、よろしくと言われても」
「あいつ、黄和にいまだにしつこくされているみたいだしさあ、こうでもしないと誰とも付き合わずに行くぞ。そのまま卒業してしまうかもしれない。そういうやつなんだよ」
「はあ」それはなんとなくわかるかも。
「だから、大橋とは是が非でもくっつけたいから。がんばってくれ」
「頑張ってくれと言われてもね。あの、でも」
「嫌なのか?」
「あ、そうじゃなくて。あれで楽しかったのかどうかが不安で」
「いや、楽しかったと言っていた。あいつ、そういうやつなんだ。不思議に思えるかもしれないが、大概のことは流してくれるおおらかな奴だから、大丈夫だ。大橋が適当に会話をしてくれたら、あいつは聞いてくれるはず。俺の時も同じだから」
「え、彼が何か話すことはないの?」
「俺が聞いたことを答える程度。あいつからそういえば、話かけてくることは少ないかもな」いつもあれなのか。心配して損した。
「分かった」
「大橋とうまくいけば、黄和も追い払えるし」
「無理でしょ」
「大変だったからなあ。あいつ、よく怒らないなといつも思ってたぐらいだし」森園君に言われるなんて、相当かも。
「じゃあな、よろしくな。何かあったら常陸に言ってくれ。あいつは世話好きだからな」
「もう。人のことより、森園君もね」
「俺はそれより部活の行く末が心配だよ」
「卒業してまで心配しなくても」
「だって、せっかく女も男も強くなりつつあるんだぞ。頑張ってもらいたいんだ」
「はいはい」
「大橋、綸ちゃんをよろしく頼む。これを逃したら、あいつには恋愛期は二度と訪れないと思う」
「大げさな」
「そういうやつなんだよ。のんびりしすぎてるんだ。勉強以外は」うーん。
「頼むぞ」と言われて、ちょっと笑ってしまった。

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