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 家に帰ってから、エミリに電話をした。バイトの話や学校の話をした後、
「デートに誘うときって、どうした?」と聞いた。
「デート? やっぱり誘うつもりなんだ?」と聞かれて、
「うーん、迷ってる」と答えた。九条君から渡されたのは、試写会のチケットで、これを渡されても、彼と行く……という訳にはいかないよね。ということはやはり、向こうと行ったほうがいいのかもしれないけれど……、
「困っちゃった」
「何が」
「なんだかよく分からないから」
「なにが?」
「男性の気持ちが」
「それは向こうも同じみたいだよ。『女の子って分からない』って、何度も言われたしねえ」
「エミリも言われたの?」
「愛想のいい、明るいタイプは言ってこないよ。違う人。でも、愛想のいい奴も思っているとは思う。ただ、流しているだけで。そういうところは口に出しても、しょうがないから言わないみたいだね」
「え、どうして?」
「女の子を怒らすと面倒だから、ほっとくみたい。甲羅がそうでしょ」そういえば、面倒なことになると逃げるタイプだったなと思いだした。
「そうかもしれない」
「要領がいい人ってさあ、そこに触れると危ないなってところに近づかないところがあるからね。ただ、一緒にいて楽だけどさ。花咲君みたいに世話は焼いてくれないよ。冷たいところがあるし」
「え、そう?」
「甲羅やそのほかとデート中に相談するじゃない。適当にはぐらかされたことがあったよ。女の子の問題とか、バイトでのこととか。聞いても答えてくれなかった。楽しい話はいっぱいしてくれるけど、面倒なことからは逃げてた」
「なるほどね」九条君はそういえば、一緒に高校まで付いてきてくれたと思いだした。本当なら彼は付き合う必要はなかったのに、わざわざついてきてくれて、それなのに、私、そういう彼のことをよく分かってないかもしれないな。
「困った」
「何に?」
「いや、どうしていいかわからない」
「綸同君?」
「うーん、彼のこともよく分からないけれど」
「じゃあ、九条なんだ。やっぱり気になるんだね、そっちが。しょうがないか」
「え、どういう意味?」
「九条がたとえ優しくなくても、つい、そっちに目が行くってことでしょ。私も甲羅の実態を知ってはいても、好みだしね」
「えー、そうなの?」
「たとえ、軽いやつだと分かっていても、つい、目は行くね」
「なるほどね」
「でも、付き合うことだけはないよ。もう、懲りた。別の誠実で明るい人を探したい」
「エミリならいくらでも寄ってくるよ。明るいし、かわいいしね」
「そう? 合わない人は合わないよ。九条も合わなかった。由香はもう少し楽な相手と付き合った方がいいと思うけど。九条は憧れるだけにしておきなさい」デートをしたとは言いずらいな。
「よく分からなくなった」
「デートして、楽しかったんじゃないの?」と聞かれて、思わず九条君とのデートの方を思い出していたら、
「部活の時と違って、違う面が見えたでしょ」と言われて、そっちか……と思い、
「うーん」としか言えなかった。一緒にウィンドウショッピングをして、彼が立ち止まるところと私が気になるところが全然違った。彼は面白グッズや本、そういうものをじっと見ていたし、私は洋服やバックやアクセサリーを見て、彼は何も言わなくて、興味がなさそうなので、そこはさらっとしか見れなかった。
「会話がはずまなかったのが心配で」
「心配ね。次から、共通の話題をまた、探していけばいいよ。そのうち、お互いに興味があるものが見つかるかもよ」
「そう言われても」よく分からない。
「エミリは会話で困ったことは?」
「ないよ。お互いにいくらでも気になったこととか思いついて、話が途切れないもの。次から次へと話題が出るよ」甲羅やそれに近い人なら、そうなのかもしれないな。
「参考にならないね。サリとか美優ちゃんとかどういう人と付き合ったのかな。
「美優ちゃんはあるみたいだけど、サリは付き合ったことがないみたいだよ。そう聞いたし」
「そう」
「由香は悩みすぎだって。何度か会えば、大丈夫だって」と明るく言われてしまった。

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