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「どうした?」優しく聞かれて、花咲君を見た。
「いや、ちょっと疲れただけ」
「そう」彼は優しく笑ってくれる。つくづくいい人だ。
「そういう方がうれしいな。あまり怒られると疲れるね」
「映画かバイト?」と聞かれてうなずいた。
「なんだか緊張してきた」ほかには誰もいなかったので、ついそう言ってしまったら、笑ってくれて、
「花咲君は見ても笑わないでね。たとえ、変な演技でも」
「笑わないよ。一生懸命作ったものを笑うなんて、さすがにできないし」こういうところで気を使えるから、いいのかもしれないな。最近は千花ちゃん以外にも彼に気があるように見える女子学生がいる。美優ちゃんは他校に好きな人ができたらしく、必死になってデートに誘っているらしい。バイト先で知り合った人で、かなり熱心にメールをしているようだけど、10回に1回返事が返ってくればいい方で、ほとんど返ってこないらしい。その話をすると若干一名がうなだれるんだけど。
「段君が美優ちゃんを好きだなんて気づかなかった」と小声で言ったら、花咲君が笑った。
「言えるわけがないよ。あいつは気にはなっても、友達としても、まだ、それほど話してないし、様子を見ているようだからね。でも、彼女の変化には戸惑っていた」
「どうしてかな。そういうのはダメなのかな?」と小声で聞いた。ミイさんたちがいると困るからだ。
「違うよ。前のままでもかまわなかったんだよ。そのままの彼女で。素のままの彼女の良さが無くなってしまったのが寂しいらしいんだ」
「へえ、意外だ。てっきり、かわいくなったら、それでOKなんだと思ってた」
「うーん、やはり、気になるみたいだね。僕はその辺はその時によるかな」
「え、そうなの?」
「それで本人が満足して楽しそうなら、それでいいと思う。前と違うとかよりも、本人の気持ちがいい方に向いているのなら、それでいいじゃないかな」
「おおらかな。さすが」と言ったら笑いながら、
「大橋は?」と聞かれて、
「うーん、そういうのはよく分からないなあ。本人の問題だし。私はアリだと思うけど」
「そうだね」
「エミリみたいね。ハーフと言うかクォーター顔にはどうやっても無理だし。それで自分の顔を元から変えられたらいいのに、とつい思ってしまう心理も分かるしねえ。特にかわいい子が好きな男性がそばにいると。そういう話題をされると面白くないというか、相手にもされてないのは寂しいというか」花咲君がこちらを見て、
「大橋は気にしなくてもいいと思うけど」
「ありがと。でも、甲羅や相川は私なんて眼中にないしね。露骨と言うか、どうでもいい相手っていう感じで見てるから、ほかの男性もそうなんだろうなと、つい思って」
「その意見は賛成できないな。確かにそういう人もいるけど、違う人も多いと思うけど。というか、顔で選ぶ人って、相手も顔や条件で選びそうだけどね」
「え、どういう意味?」
「そのうちわかると思うよ」
「うーん、なんとなくしかわからない」と言ったら花咲君が笑っていて、やがて、
「何を話しているの?」とさえぎるような強い声がした。振り返ったら千花ちゃんが明らかに気に入らなさそうな顔をしながら、でも、私の方は見向きもしないで花咲君を見ていた。

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