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 花咲君が隣に座ってきた。
「あれ、彼女は?」
「置いてきた」と言ったので驚いた。
「どこに?」
「学食」
「え、なんで?」
「いつも一緒にいるのも困るかと思ってね。そろそろ独り立ちさせないと」
「独り立ち?」
「僕以外の人とも仲良くしてもらわないと、これから困るから」
「無理じゃないの? それに、他の子も、そういうところはあるし」仲がいい子以外とはそれほど話さないこともある。
「いや、ほかの子はそれなりに接することができるし、彼女とは事情が違う。彼女は高校時代の人たちにちゃんと向き合えるようにしておいた方がいいと思うからね。だから、その前に、自分がどう思われているかを分かっておかないと」分からないと思うけどなあ。
「だから、遠慮しなくてもいいから」
「え、それは」
「してたんだろ。そばに寄るのを控えていたように見えた」と指摘されて、
「え、だって」と苦笑いをするしかなかった。
「遠慮しなくてもいいと思うけど。これが草刈だったら、向きになって僕と話すだろうね」
「エミリは戦う女って感じだね」
「大橋はそこで遠慮するだろう? だから、それもやめた方がいいと思うよ」と優しく言ってくれて、
「そうかもしれない」
「彼女が何か言ってきても聞き流せばいいさ」
「そうだね。できたらいいけどね」
「ということで、彼女がやってきても、席を変わったり、そばを離れたりしないようにしてほしい」
「え、どうして?」
「僕のそばにいることを大橋に遠慮してもらうために、ああいう行動をわざと取っている。それで、大橋がいなくなった。『わたしの勝ちね』そう思ったら、また、前と同じことを繰り返すよ。彼女は」
「私の勝ち?」花咲君が笑った。
「そういうところがあるよ。負けず嫌いなんだよ。変なところでね。と言うか、向かっていく方法と方向が間違っていることが多いけれど」首をかしげてしまった。方法と方向ね。
「だから、僕に合わせてくれたらいい。大橋は何があっても気にしなければ、それでいいから」と言われて、わけが分からなくて、
「はあ」としか言えなかった。

 割り込もうとしていた。無理やりにでも割り込もうとしていた千花ちゃんを見て、みんなが嫌そうな顔になっていたけれど、彼女は必死すぎて、そういう空気は読めていなかった。私をどかそう、そういう魂胆が丸見えだった。みんなと立っているときに、彼女は無理やり私と花咲君の間に入ろうとしていたけれど、それに気づいていないかのように、さりげなく彼が立ち位置を変えて、千花ちゃんが嬉しそうに彼のそばに行ったら、花咲君はそこから移動していた。そうして段君の近くに行き、私に話しかけてきて、千花ちゃんが思いっきり気に入らなさそうにしているのが見えた。困ったなあ。彼はそれに気づかないような顔はしていたけれど、促されて歩き出した。それに合わせて私と段君も歩き出して、
「ちょっと待ってよ」と千花ちゃんが言ったけれど、しばらくしてから振り向いて、
「悪い、彼らと話があるからね」と花咲君が言って、
「ちょっと、いいじゃない。私がいてもいいでしょ」という声が聞こえた。でも、花咲君はそれには返事をしてなかった。
「あとで怖いぞ」千花ちゃんと離れてから段君が言った。
「今日、何度かあいつと近寄らないようにしてなかったか?」と段君に聞かれて花咲君が笑った。
「笑い事じゃないぞ」と困っていたけれど、千花ちゃんが追ってこなかったのを確認してから、
「ちょっと困ったことを言いだしてきたからね。それで」と花咲君が言ったために、
「なにをだ?」と段君が嫌そうな顔をしていた。
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