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「グループに混じるのを嫌がるようになってきたんだよ。『彼らのところに行かなくてもいいじゃない』とか、『私たちだけで行きましょうよ』とかね」
「小学生の時に、そういう女がいた」と段君が嫌そうだった。私もそういう女の子がいたのを思い出した。誰かを仲間外れにしたり、友達を自分で独り占めしたくて、そういうことをする子がいたけれど、逆らうと怖いからとみんな嫌そうではあったけれど、反対するわけにもいかない、そんな感じだったのを思い出した。
「そういうところはつくづく子供っぽいよな。高校の同級生が逃げるわけだ」と段君が言ったので驚いた。
「教えたの?」と花咲君に聞いたらうなずいて、
「段が心配してくれたから、事情を教えてある。信用できる人には少し説明してあるよ」と花咲君が言ったので、驚いた。
「知らなかったと思ってた」
「いや、事情はあるんだろうなと思ってたし、俺たちは大橋のためにしてると思ってたから」と段君に言われて、
「え、私のため?」と聞き返した。
「どうして?」
「大橋に嫌がらせをし続けたら、困るからだろう?」段君が花咲君に聞いていて、彼は笑っているだけだった。
「ほらな。だから、あの女のために一緒にいたわけじゃないのに、あいつ、勘違いしてるよ、絶対。友達を独り占めしたいっていう行動がちょっと子供っぽいよ。俺は勘弁してほしい。みんなと仲良くやりたい」
「そうだね」
「それをあいつだけ分かってない」
「困ったね」
「大橋も気をつけろよ。あれだと、全然直ってないぞ。無理やり割り込もうとするのは見苦しかった。女のああいうのは見ていると不愉快になるな」そうかもしれないな。
「どうしたらいいんだろうね」
「しばらくは大橋とも彼女とも話して、自然にしていよう。彼女とだけ話すつもりがないことをゆっくりと教えていくよ」
「無理だろ。あいつ、一人だけ分かってない。お前の善意の行動を誤解している。自分に気があるからだとね」段君がそう言ったけれど、花咲君は笑っていて、
「笑い事じゃないって。無駄だぞ、あれだと」
「気長にやるしかないタイプなんだと思う。調教のしがいがあるよ」
「つくづく猛獣使いだな、お前。意外と淡々として距離を置いてさ。優しそうに見えて、誠実そうに見えて、実はシビアなところがあるよな。俺にはできない」と段君が言ったので、そうかもしれないなと思えた。
「あいつの場合は俺は気づかないまま行くと予想できるけど」
「きっかけがほしいんだよ。変われるタイミング。脱皮する感じかな」
「脱皮ねえ。蛹から蝶じゃなくて蛾になりそう」と段君が言ったために笑いそうになったけれど、
「言いすぎだよ」と止めた。
「ごめん、俺も余裕がないときに、色々と言われて、怒れるけれど、みんなの前でそれをしたら悪いから我慢するしかなくてさ」そうかもしれないな。彼女の言葉はよけいなひと言が付け加えられることが多い。
「段は聞き流したらいいんだよ。気にしなくてもいい」と花咲君が優しく言ったけれど、
「うん、わかってる。八束のことも最初から無理だってわかってた。でもさ、どうしても心配になるんだ。俺だとダメだと分かっていても、でも、彼女が不幸になっていくのは心配で、心配で」と言ったので驚いた。
「付き合いたいと思っていたんじゃないの?」
「無理だよ。俺、背は低いし、これと言って取柄はない。九条のように車があるわけでも金持ちの家の出でもない。甲羅のように女の子と楽しく会話する技術もないし、花咲のように優しく相談に乗れるキャラでもない。でも、そういう俺でも見守るぐらいならできるからさ。たとえ相手にされなくても」
「美優ちゃんの相手ね、かなり心配な噂があるの」
「そうなのか?」
「久我山の人に聞いたの」
「久我山なのか、それは教えてもらっていなかった」彼の耳には入らないようにみんなも気を付けていたのかもしれないな。
「ちょっと心配だけれど、サリが注意はしてくれたんだけどね。聞いてくれないから」
「そうなのか、大丈夫なのか?」と段君に言われて、花咲君の方を見た。
「今は様子を見た方がいいかもしれない。相手の人の性格も噂だけでは本当の良い部分は分からないしね。八束が好きだと思っている部分は俺たちが思っているのとは違うかもしれないから」と花咲君に言われたけれど、心配だった。

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