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 朝から、彼のところに行こうか迷っていた。時間がない。もしも彼がだめだと言ったら、行くのはあきらめようと思っていた。こんな気持ちでエミリと行っても、この間と同じになる。映画に集中なんてできないだろう。でも、レポートをまとめるように言われて、そちらに時間もかかって、彼のところに行っている余裕がなかった。
 お昼は、美優ちゃんのことを止めた方がいいかどうかで話し合いがあり、結局、帰る前にサリが注意してくれることになった。

 サリが美優ちゃんと話してくれると言ったので、それを見送った後、彼を探した。そうしたら、彼がいて、どうしていいか分からなかったけれど、彼はそっけない態度ではあったけれど、何か言いたそうで、
「あの」と言っていたら、エミリが寄ってきて、
「ちょっと大変だから」と呼ばれて、
「もう、困っちゃった」と言ったので、
「なにが?」と聞いた。
「サリちゃんと美優ちゃんが喧嘩した」
「え、どうして?」
「貢いで捨てられても知らないって、怒り出しちゃって」うーん、逆効果だったのか。
「止めたんだけど、聞く耳を持たないの。だから、由香、あの男の実態を話してやってよ」
「無理だよ。裏で調べたなんて、彼女には言えないよ」
「だから、その辺は噂を聞いたとでも」
「無理。それにね」花咲君と話したことを思い出していた。ホストに入れ込んでお金をつぎ込む女性の心理を。
「とにかく、来てよ」と言われて、美優ちゃんのところに向かった。関係者以外は誰もいない教室にいたけれど、二人はもめていた。
「絶対に嘘よ。彼はそんな人じゃないよ。確かに冷たいところもあるけれど、ちゃんとデートもしたもの。車だって、乗せてくれたわよ」
「『やっと乗せてもらった』と言ってたじゃない。あれだけ高価な時計を送れば、それは義理で乗せるでしょうよ」とサリと言い合っていたので、困ってしまった。
「違うわよ。彼は優しいもの」
「どういうところが?」と言い合って、
「ちょっと声が大きいよ」と海里ちゃんが呆れながら止めて、私たちに気づいて寄ってきた。
「注意したんだけどね。途中から怒鳴りだして」と教えてくれて、
「どうする?」と聞かれても、困ってしまい、
「由香ちゃんが聞いちゃったんだからね。ちゃんと調べてもらったんだもの。相手の男は浮気者。貢いでも美優なんて相手にもしてないって」サリが興奮してそう言ってしまったために、困ったなと思ったら、
「え、ちょっといやだ、裏で何をしてるのよ。本当なの?」と美優ちゃんがすごい剣幕で聞いてきた。しかたなく、
「ごめんなさい」と頭を下げた。
「ひどいよ、本当にひどい」
「美優が貢ぐからしょうがないでしょ」とサリが言ってしまったために、また、興奮したのか、
「貢いでないわよ。彼が喜ぶ顔が見たかっただけ」
「へー、でも、友達から借りてまですること?」とサリが呆れていた。
「ちょっとしか借りてないでしょ。すぐに返すわよ」
「男に捨てられたら戻ってこないわよ。知らないわよ」
「大丈夫よ」
「そうは思えない。浮かれすぎているもの」
「違うわよ。サリに言われたくない。彼氏もできないじゃない」
「いいじゃない、それぐらい。今はいないだけよ」二人とも売り言葉に買い言葉で言い合ってしまって、冷静じゃなかった。
「サリは高望みしすぎるの。学部の男なんて目じゃないとか言いながら、全然声を掛けられないでしょ」
「あら、あるわよ」
「誰によ。エミリと違って、掛けられたのを見たことなんてないわよ」と言い合って、
「ちょっとちょっと」とエミリがあわてて止めた。サリの近くに行き、
「落ち着いて、あのね、まわ」エミリが言いかけたら、
「私だってあるわよ。そういう美優こそ、無理して顔を作っちゃってさ」
「な、言っていいことと悪いことがあるわ」
「お互い様よ」と興奮しているのか、エミリが止めても駄目で、
「由香ちゃんにも負けてるくせに」と美優ちゃんが言い出して、
「えー、九条君に振られたから、一緒じゃない。それに調べたのは由香ちゃんよ」とサリが言い出して、
「あ、えっと」と困っていたら、
「どうして調べるのよ」とにらまれた。
「調べたくなるじゃない。美優は騙されているのもわかってないからね」とサリが言ってしまい、
「騙されてなんて、だまされてなんてないわ」と美優ちゃんがどなった。その言い方は、焦りがあるように見えた。様子がおかしかった。

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