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「女のああいうのは怖いな」
「ごめんなさい」
「お前はすぐに謝るくせに、肝心な時に謝ってこないよな」
「ごめん」
「言えよ。言いたいことがあるんだろ。聞いてやるよ」
「上から目線だ」
「お前が悪いんだろ。あいつの誘いをノコノコ付いていき」
「ああ、言ってなかったっけ? 彼が誘ってくれたわけじゃないの。間を取り持ってくれた人が約二名」
「よけいなことを」
「違う。してもらって良かったんだと思う。私がもう一度考えないといけなかったことを思い出したからね」
「なにを?」
「彼を見ていた理由。彼と付き合いたかったわけじゃなかったの、私」
「え?」と九条君が見てきた。
「私ね、彼とデートをしてはっきり気づいたの。あの人は違うって」
「前もそう言っていたな」
「あの人には憧れていたの。というか、癒してもらっていたの」
「いやし……?」
「ヒーリング。彼を見ていたかっただけ。付き合いたかったわけじゃなったの」
「意味が分からないんだが」
「ごめん。なんだか疲れた。ちょっと休ませて」と言って目を閉じた。
「あれは疲れるよな。俺は巻き込まれたくなかったというのに、何で巻き込まれているんだろうな」
「ごめん」
「謝るな。疲れているんだろ、寝てろ」
「眠れなかったの。あなたと映画を見たかったから、夢の中で見た」と目をつぶりながら言ったら、
「お前」という声がした。

 試写会まで時間があったので、一緒にご飯を食べていた。あとで電話をしようとは思っていたけれど、九条君がいたのと眠たかったのもあったので、
「あとで一度連絡しておけよ」と九条君に言われてしまい、
「はい」とだけ言った。
「あいつらは時と場所と場合を選べ」
「ごめん。巻き込んで」と謝った。
「あれはお前が謝らなくてもいい」
「でも、名前が出ちゃっていたから」
「俺に振られたって噂が流れたらしいから、それで誤解してたんだろ」
「振られた? いつ?」
「夏休みの後。テストの間ぐらいだったと思うぞ。甲羅がそう聞いてきたし」
「そう、ごめん」
「いや、俺は返事しなかったからな」
「ごめん」
「違う」と言ったので彼の顔を見た。

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