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 沢登に着いてから、
「美優ちゃんが捕まらない」と海里ちゃんに言われて、
「え?」と驚いた。
「何度電話をしても出ないよ。ひょっとして、相手の男性のところに行ってないかな?」と聞かれてエミリを見たら、
「それは無理だよ。家に電話をしても、どうやって止める?」と聞かれて、困っていたら、
「あー、裏切者がいる」とサリの声がした。一応、この時間に来ると言ってあったけれど、何人来るか知らなかった。
「ねえ、彼氏なの。それで、九条君はどこ?」とサリがにらんできた。
「怖いよ」と海里ちゃんが注意していたけれど、
「教えなさい」とにらまれて、
「え、ごめん。えっと」としか言えなかった。
「いつから付き合っているのよ。電話でもはぐらかすし」
「ごめん、えっと、それはちょっとね」
「ちょっとね、じゃない」サリはすごい剣幕で睨んでいた。どうしようか迷っていたら、
「ああ、いたいた。こっちにいたんだな」と段君の声がした。花咲君もいたけれど、
「ちょっと聞いてよ。由香ったらね、よりによって九条君と」とサリが言いかけたら、
「ねえ、始まっちゃうよ」と海里ちゃんに促されて歩かされていた。海里ちゃんは慣れているのか、軽くあしらっていて、前を歩いていたけれど、
「嫌だー、はっきり聞くんだ」と海里ちゃんに連れられながらもサリが何度も振り返ってきて、
「おい、なんだ?」と段君が不思議そうだった。

 上映する教室に行ったら、何人か座っていた。今日は何度か映像を流すらしい。監督と明神君がいたので、あいさつに行った。
「九条はまだ来てないみたいだな」と言っていた。
「さっき、何度かテスト上映したよ」と言ったのでうなずいた。
「明神がどうしても入れたいってうるさいシーンがあったから、また、変更になってる」と言われて、
「熱心だね」と言ったら、
「うるさい。俺はあの方が絶対にいい」と明神君が言って、
「分かったよ。今回は俺が折れる」
「そういう言い方はするなよ。絶対にあれのほうが」と言い合っていた。
「分かったから。ほら」とシオンさんが寄ってきた。忙しそうだったので、エミリとみんなのところに行こうとしたら、サリちゃん以外もジーと見ていて、
「あの」と言ったら、
「どういうことなんだ?」と段君に聞かれて、
「え、本当なの?」と聞かれて困ってしまった。
「エミリー、来たわよ」とエミリの友達がやってきて、
「やだー、来てくれたんだ」と行ってしまった。仕方なく、花咲君の隣に座ったら、
「お前は九条の隣の方がいいんじゃないのか」とからかわれた。
「いえ、別に、あの、えっと」どうやって言おうか迷っていたら、
「あ、九条」という声がして、みんなが一斉に振り返っていた。九条君はそばに寄ってきて、
「お前ら、デートしたのは本当か?」と仲島君が聞いていて、九条君はそれに答えなくて、
「いつからだよ」「そうだ、そうだ。教えろー」サリがわめいたために九条君が耳をふさいでいた。

「うるさいやつら」と九条君が嫌そうだった。あまりにからかったりうるさかったので、九条君に促されて、監督やスタッフの近くの席に二人で移動した。
「でも、ごめん。ばれちゃったね」
「もう、いいだろ。どうせ、時間の問題だ。俺の方は構わない。そういうのは言われても聞き流す主義」
「うらやましい」
「お前も聞き流せよ。何も言う必要は無し」
「そうだね。そう思った」
「それで、八束は?」
「来てないよ」
「あいつのところに行ってるかもよ」
「そうかな?」
「あとで電話で確認しておけよ」
「そうだね」
「違う。お前が情報を仕入れた相手の方だ」
「え、森園君に?」
「ああ、その男から聞いたのか」
「そう」
「あっそう、そういうことか」と言われて、
「なに?」と聞き返した。
「デートをセッティング途中に聞いたとか言うなよ」
「はい、その通りです」
「まったく。呆れるやつだな」
「ごめん、心配だったから。ちょうど彼が久我山だと聞いて」
「ふーん、ま、いいけどな。相手の学校に女の子が来るかもしれないって言っておけよ。止めてもらえ。それしかない」
「え、でも、悪いよ」
「でも、相手の学校に乗り込んで行ったら怖いぞ」
「やめてよ。恐れていることを」
「教えないほうが良かったかもしれないけどな」
「でもね。騙されていたとしたら、また、何か買ってしまうよ」
「それはあいつの責任だろうに」
「でも、心配だしね」
「八束がどうするかは八束に決めさせろよ」
「分かってるけど」としか言えなかった。

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