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「ああやってみてるとカップルに見えるな」と仲島君たちは後ろから好き勝手言い合っていた。
「ありえないだろ。花咲と付き合うと見せかけて、何で九条とくっついてるんだ?」
「そうか? お似合いだと思うけど」花咲君が笑いながら言ったために、
「お前が止めたら、止められたぞ。今からでも遅くない。お前もデートに誘え」と言われていたけれど、
「認めない。絶対に認めない。あれは嘘だ。絶対に何かの間違いだ」とまじないか呪文のように唱えるサリを見ながら、
「怖い。猿林が壊れた」「やめろ。お前、すごい顔をしてるぞ」とみんなに言われていて、
「あきらめなよ。どう見ても、由香ちゃんは九条君が好きだって、だれもが分かってたでしょ」と海里ちゃんが呆れていた。
「え、それは」「そうだけどさ」「でも、花咲とくっつけたかったんだよ」とみんなが言い合っていて、
「あれを見ても、そういうの?」と海里ちゃんに聞かれて、だれも何も言えなくなっていた。

「後ろがやっと静かになったと思ったのに、草刈がうるさい」と言ったので振り返った。エミリはまだ、高校時代の友達と話していて、そのうち、
「エミリ」と呼ばれていて、アリエルさんとお母さんが見えたので、
「ごめん、ちょっと行ってくる」と席を立った。サリたちが座っているところのそばを通り過ぎたら、全員がこっちを見ていたけれど、エミリのそばに行き、
「いっぱい人が来ているね」とアリエルさんに声を掛けられた。
「はい、でも、緊張して」と言ったら、優しく笑ってくれて、
「大丈夫だよ。いい出来だったよ」と言ってくれて、
「ありがとうございます」と頭を下げた。

「あれが草刈の家族か?」「お兄さんかな、かっこよすぎない」「すごい、素敵。付き合いたい」最後にサリちゃんがそう言ったら、
「お前、焦りすぎだよ」と段君たちに言われていた。
「でも、優しそうな家族だね。エミリって顔が広いね」と海里ちゃんが見まわした。何人かが席に座りだして、
「お母さん、あっちに」とエミリが誘導していて、
「じゃあ」と頭を下げて席に戻った。
 席に座ってから、
「草刈を入れて正解だな。知り合いがいっぱい来てるみたいだぞ」と九条君に言われて見まわした。座席数はそれほど多くはない場所だったけれど、
「本当だね、すごいね」
「お前の友達は?」
「高校の子には一応連絡した程度。あまり知られたくなかったし」
「なんで?」
「うーん、本島朝日が来ると嫌だから」
「誰だよ、それ」
「今度教える。あと一人、耳に入れたくない人がいたしね」
「あの先輩か?」
「それに相川たちが見たら、ちょっと嫌だな。また、何か言われそうだ」
「ほっとけ。どうせ、何かにつけて馬鹿にすることで自分のプライドを満足させているようなやつだぞ。そういうゆがんだ考え方しかできない奴を気にしてどうするんだよ」と小声で言われて、
「そうだけどね」と言ったら、
「えー、マイク、テスト」とシオンさんがマイクをテストしていた。
「大丈夫だよ。監督、あいさつ」と呼んでいた。石渡君がマイクを受け取って、
「えー、本日、お集まりくださいまして、誠にありがとうございます。正直、こんなに来てくれると思ってなかったので、えっと、スタッフ一同、とてもおどろているとともに、緊張して」
「あいつ、いつもより声が上ずってる」と九条君が小声で言った。そうかもしれないな。
「まだまだ未熟なところがあるかと思いますが、スタッフで話し合い、できた作品です。みんなで頑張って撮影に臨み、もめごと、その他山積み状態で進んでいきましたが、とても順調とはいえない状態でしたが、できた作品は今の私たちの力で出せる精一杯のものだと思っています。未熟なところも目立つとは思いますが、どうか、最後まで席を立たずにご鑑賞ください。お願いします」と言ったら、拍手が起こっていた。監督が嬉しそうにしていて、
「高校の時と違うから、うれしそうだな、あいつ」と九条君が言った。
「高校の時もあいさつしたの?」
「誰もいないのに、しないだろ」と小声で言われて、そうだったのかと思っていたら、始まった。

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