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 やがて、彼と二人きりになっているシーンになり、その後、ちょっとだけ回想シーンが流れて、例のシーンとなったために、
「あ」「お」「すご」「え、なんで」「本当にしているように見えるぞ」という声がした。
「恥ずかしい」思わず言ったら、
「そういう顔をしてるとバレるから普通にしてろ」と九条君に言われたけれど、
「だって、見ていられないよ。ここ」
「お前の夢だったんだろ。いい記念だ」
「そういう問題?」と言い合っていたら、エンドロールが流れていた。
 話の内容としては、よくある学生の恋愛と言う感じだった。大学生の男女が仲良くなっていき、恋敵が出てきたりして、そういう感じで、ところどころわかりづらい映像もあったけれど、よくできていたと思う。前に見せてもらったものとは少しずつ変更があったけれど、内容としては、
「盛り上がりには欠ける」とエミリが言っていたけれど、ドラマチックなものではなくて、風景がとてもきれいな、静かな感じのラブストーリーだった。シオンさんのイメージとは違うようなので、多分、石渡君の好みなんだろう。字幕はところどころに出ていて、風景を見せる場面も多くて、その辺は明神君の好みなのかもしれない。
「へえ、映画みたいだな」という声がしたけれど、やがて拍手が聞こえてきて、
「良かったぞ」
「ちゃんとしてたぞ」と声が飛んでいた。男子学生もいつの間にか増えていて、明神君の知り合いなのか、後ろに男子学生グループの一団がいて、
「明神先生、万歳、万歳」と手を挙げていた。
「お祭り好きだな、あいつの友達は」と九条君が言ったけれど、
「ありがとうございました。以上で終わりです。脚本担当の長船です。感想などございましたら、後ろにある紙に書いて、箱に入れてくださるとうれしいです。よろしくお願いします」とシオンさんが頼んでいて、
「女の子に言われたら、入れちゃうな、俺」と男子学生が言っていた。
「お前、日ごろ出会いがないからって」とその一団が言い合っていて、
「にぎやかなやつらだな」と九条君が言った。
「でも、沢登って、雰囲気が違うね」
「ほとんど男だから、当然だろ。ただ、こっちに校舎を増やして鹿飲を移転するって話もあるにはあるらしいぞ。どうせ、俺たちが卒業してからだろうけれど」そうだろうなあ。
「九条君はこっちにも知り合いはいるんでしょ」
「ああ、何人かはね」
「あいさつしなくていいの?」と言い合っていたら、
「なんだ、こんなところにいたんだ。甲羅から教えてもらって、あわてて駆け付けた」と九条君の知り合いらしい人が寄ってきたので、頭を下げて花咲君たちの方に行ったら、
「良かったな」と言ってくれたので、
「ありがと」とお礼を言った。
「俺、見るまで不安だったけどさ、でも、納得した」と言われて、
「なにが?」と聞いた。
「大橋が魅力的に映っていた」と意外なことを言われて驚いた。
「え、そう?」
「草刈よりもかわいく見えたな」
「俺もそう思った」と言われて、恥ずかしかった。
「嘘よ。あれはカメラの加減よ、絶対よ」とサリが気に入らなさそうで、
「お前、やめろよ。やっかんで」と仲島君が呆れていた。
「抜け駆けするのが悪いのよ」子供みたいにすねたサリちゃんを横目に見ながら、
「大橋を起用した理由が分かったよ」と花咲君が笑いながら言った。
「え?」と驚いたら、
「ええ、そうね。由香ちゃん、画面だと大きく見えるわ」と海里ちゃんに言われて、
「大きく?」意味が分からなくて首をひねっていたら、
「大橋は分かりやすいんだよ」と花咲君が教えてくれて、
「笑ってる、元気がない、すねているとか、たとえセリフがなくても分かりやすいし、何より表情が豊かだね」と説明してくれて、
「そう言えば、監督やシオンさんが、えっと、脚本担当の女の子がそういうようなことを言ってた」と教えたら、みんながうなずいた。
「女優みたいだったぞ」と上久保君がからかうように言ってきて、
「え、そう?」とちょっと照れてしまった。
「私も出る」とサリが言い出して、
「頼む。猿林。そろそろ、そういう態度をやめてくれ。ここにいない誰かを思い出してしまうだろう」と言われて、
「そう言えば、来てないな。八束も犬童も」と言われて、海里ちゃんの方を見たら、首を振っていた。
「何かあったのか?」と段君に聞かれて、困ってどう言おうか迷っていた。
「あのね、サリと喧嘩しちゃって」と海里ちゃんが困りながらも説明していた。
「それで、これか」とみんながサリを見た。
「何よ、私が悪いっていうの」とサリがまだすねていた。
「仲直りしろよ。原因は?」と仲島君が聞いてきたけれど、海里ちゃんと困って顔を見合わせたら、
「あの男のことよ。絶対にうまくいきっこないんだから。そうよ。由香ちゃんも、絶対に嘘よね」とサリに聞かれて、
「えっと」と困っていたら、
「おい、大橋、電話で確認しておけよ」と九条君に声を掛けられて、
「美優ちゃん、電話に出てくれないから、メールしかできなくて。また、送っておいた方がいいかな?」と海里ちゃんを見た。
「私も送ってはあるわ。でも、彼女は今は冷静じゃないから、きっと見てもいないわよ」と言われてしまった。
「あの男、学校にいないのか?」と九条君に聞かれて、
「さあ」とサリの方を見た。
「バイトじゃないの。洋服代とか稼がないといけないみたいだから」
「それを早く言えよ。バイト先は?」と九条君が聞いたら、サリが嫌そうな顔をした後、
「まだ、例のお店でやってると思うけど」
「どこだよ」と九条君が聞き返した。

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