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 海里ちゃんがお店の番号を調べている間に、私は念のために森園君に電話をしたら、
「ああ、今、恩湯キャンパスに来てる」と言われて驚いた。
「久我山じゃないんだ?」
「だって、今日、学祭だろ。お前の映画が上演されるって聞いたぞ」
「誰に?」
「常陸」ひーちゃんにか。そういえば教えてあった。
「恩湯で上演されたの?」
「悪い。会場が分からないから」
「イベント会場で行われるけれど、イベントの間に流す程度だから、メインは沢登キャンパスでやっているの」
「え、そっちなのか。そうか、移動したほうがいいかもな」
「いいよ、見なくても、それよりね」と電話で美優ちゃんのことをそれとなく頼んだら、
「月曜日以降は、それらしい女の子を見かけたら、止めるかもしれないけれど、あいつと同じ講義はそれほど多くないから、難しいぞ」
「そう……だよね」
「今、綸ちゃんと一緒にいるからさ。イベント会場に移動するよ」
「え、ちょっと、やめてよ。それは困る」
「なんで?」
「は、恥ずかしいでしょ」
「いや、俺も見たいからね。じゃあ、あとで電話するよ」
「ねえ、ちょっと」と止めようとしたけれど切れていた。
「相手の男はなんだって?」終わったのを見計らって九条君が寄ってきた。
「だめ。森園君、今、恩湯に来てるって」
「ああ、あの男と一緒なのか?」と聞かれてうなずいた。
「止めるにしても難しいかもしれないって言ってた」
「そうだろうな。あとはほっとけ」
「そういう訳にはいかないよ」
「でも、それは八束の問題だぞ。彼女がどうするかを決めるべきだろう」
「だって、今は頭に血が上っている状態だよ。それで、彼のところに押し掛けたら」
「だとしても自分の問題だ。お前たちがオロオロしたところで変わらないだろうな。家に行ったとしても、あの権幕では喧嘩になるだけだ。いっそのこと、相手に気持ちをぶつけてしまった方が、現実が分かっていい」
「ちょっとひどいよ」
「だとしても、慰めてやるしか無理だろ。お前たちのできることはその程度だ。今の段階だと」
「相変わらずだね。そうやって、どこか冷めていて」
「おーい、大橋、喧嘩しないでくれ。段が落ち込んでいるから」とそばにいた仲島君に止められて、そちらを見たら、段君が困った顔をして座っていた。見るからに元気がない。どうやら、サリが事情を話してしまったようだ。

 上映会場は次の回があるからとそこから移動したけれど、エミリは友達ともう一度見たいからと戻っていた。サリはすねていて、誰も近寄らないようにしていたけれど、
「分かったよ」と海里ちゃんに呼ばれて、そちらに寄って行った。海里ちゃんが電話を掛けていて、
「お仕事中にすみません、そちらでバイトをしている方と至急連絡を取りたくて電話をさせてもらったのですが」海里ちゃんが話している間に、段君の方を見て、花咲君がいたのでそちらに寄って行った。
「海里ちゃんにも、メールの返事が来ないよ」
「そうか」
「困ったね」
「でも、さっきの九条の言う通りかもしれないよ。彼女の目を覚ましてもらうためにも、相手とぶつかった方がいいかもね。荒療治でないと効かないかもしれないよ」
「え、そこまで?」
「派手に学校で喧嘩をしてしまうということは、かなり冷静じゃないと思えるし」
「そうだね」
「鹿飲に移動するよ。ここにいてもしょうがないし」
「え?」
「こっちはもう見学をしたんだよ。知り合いのところに顔を出したから。鹿飲の方も顔を出さないと」
「そう」
「大橋は? 草刈と一緒に行動するのか?」と聞かれて、九条君の方を見た。
「そうか」と言われて花咲君を見たら、
「良かったな」と笑ってくれて、
「ありがと」とうなずいた。
「ずっと好きだったんだからね。それでいいと思う。誰が何と言おうと」と言ってくれてほっとした。
「サリがああなっちゃったから、エミリぐらいしか言ってくれなくて」
「違うよ。まだ、ほかのやつらは彼女がいないからだ。他の子ができてきたら違ってくるよ」
「え、でも、エミリも」
「そうだけどね。大橋に先を越された、そう思っているだけだから、気にしなくてもいいよ」
「花咲君はどうするの? 彼女」
「そう言えば、すねているのか、こっちに来てないな。でも、絶対に見ると思うから、どこかで会うさ」
「え、そう? だって、きっと」面白くないと思うけどなあ。彼女は特に。
「ああ見えてね、きっと、気になってしょうがないと思う。素直じゃないだけだからね」
「そう」
「じゃあ、おい、段、行こう」と花咲君に促されていた。段君は元気がなさそうだった。


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