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人のことは
 エミリが友達が何人か来てくれそうだから、そのまま沢登にいたいし、久しぶりに会った友達を案内したいと言うので、そこで別れた。九条君がそばにいて、
「俺たちも見学するか?」と聞かれた。
「友達のところに顔を出すの?」と聞いたら、
「いや、だれがどこに所属してるか知らない」と言ったので、
「そうだろうね。適当に回ろうか」と言った。
 二人で歩き出したら、
「あいつらに聞かれて、答えておいたよ」
「なにを?」
「さっきのやつら。恋人なのかと聞かれてね」
「え、なんて答えたの?」
「その一歩手前と言っていた」
「なるほど」その方がいいかも。
「だから、ほかのやつに聞かれても、お前も同じように答えておけよ」
「そうだね、それが事実だものね」
「それにしても草刈はうるさかったよな」
「そう?」
「あいつは知り合いが多いから、午後からも見に来る人が多くなりそうだ」
「あなたの友達や家族は?」
「ああ、見に来るって。美弥も来るなんて言ってたけれど」
「え、来るんだ?」
「家族も来るってさ。弟は友達と、兄貴は恋人と、母親は父親と一緒に来るって」
「え、全員?」
「お前のところは?」
「さあ、姉は『顔を出してやってもいい』とは言っていたけれど、お母さんは『緊張しすぎるから行けないわ』って」
「過保護だな、お前の母親」
「父親もDVDを見られないって言ってたみたい。怖いんだって」
「なんで?」
「とちりそうだからとか、男と一緒に出ているのは許さんとか、わけのわからないことを言っていたみたい」
「草刈のところとは大違いだな。あそこは家族仲良く来ていたな」
「エミリのところは家族の仲がいいみたい。うらやましい」
「そうか? お前のところも聞いていたら、いいと思えるけれど」
「だったら、あなたのところもそうなんじゃないの? お兄さんも見に来てくれるんだから」
「俺はダメだけどな」
「え、なにが?」
「これが逆だったら、無理だ。あの人が輝いている姿なんて見られないよ、きっと」
「どういう意味?」
「悔しいからだよ。負けたくないからな。一度も勝てたことがない」
「いくつ違い?」
「4歳」
「うちは3歳だからね。そうか、それだと勝つのは難しいよね。絶えず、相手が先に経験するだろうから」
「分かってるけど、悔しいんだよ」
「そう?」
「親父には自慢の息子だから。反対に弟は母親がかわいがっている。真ん中は損だ」
「そう? そうは見えなかったけれど。とても優しそうな弟さんとお母さんだし、お兄さんは知らないけれど」
「兄は知らないよ。俺のこういう気持ちは」
「え、そうなの?」
「兄にとっては俺は眼中にない」と言ったので、しばらく黙ってから、
「私ね、あなたのことを知らないことがいっぱいあると思うの」
「そうかもな」
「それを会話をしたり、一緒に何かを経験していくことで埋めていきたいと思ってる」と言ったら、彼がこっちを見てきた。
「だから、お兄さんの本音を聞いたら、きっと違ってきそうな気がするけどな」
「よけいなお世話」
「だって、姉が、そうだったから。私が思っていたのと反応が違った。あのDVDを見たら、怒っていたの。妹に手を出す奴は許せないって」
「俺のことか?」
「撮影中とか、あなたと仲良くなるのが難しくて姉に何度か相談していたの。だから、あなたと私のことも知っているの。いくつかね」
「ふーん」
「だから、怒ってた」
「付き合ってすぐから、もう反対なのか?」
「『穂壁の男を紹介してやるから、やめておけ』とまで言われて」
「おい」と九条君がこっちを見てきて、
「なに?」と聞いた。

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