Top Page About My Shop Catalog Buy Now Contact Us

Catalog
リストマーク  前へ 次へ

「そういう嫌な部分をお互いに注意しあうことは友達ならあると思う。恋人はそこよりも違う部分で一緒にいたいと思うだろうから」千花ちゃんが黙っていた。
「当たってるだろ?」と聞かれて仕方なさそうに、
「そうね。でも」と言い返そうとしていたけれど、
「でも、というのは無し。君はすぐ反論したがる。反論する前に自分の中でいったん貯めるように教えておいたはずだけど」
「無理よ」
「やってもいないのにあきらめるの?」
「だって」
「口答えするのは構わない。君の問題だから。ただね、そういうことを続けていけば高校時代のように」
「分かってるわよ」遮るように千花ちゃんがあわてて言った。
「分かってないと思うけれど。君は認めたくないから強く強く言い張るときがあまりに多い。そういうことを積み重ねていくとどうなるか、今ならわかるだろう?」ゆっくり聞かれて悔しそうにしていた。
「周りを馬鹿にするような態度もやめること。何度も注意をしているだろう? 大橋のことを特に目の敵にする態度は目にあまるよ」
「し、してないわよ。馬鹿になんてしてないのに、勝手にそう見えるだけよ」花咲君が、ちらっと見てから、
「見えるだけではないと思う。そうとらえている人が多いと言うのに、君だけは認めてないだけで」
「回りくどいわね、分かりやすく言えないの?」
「ほら、注意したそばから、それだ。見下すような目線で見ていたって、何も残らないよ」ゆっくり言われて、千花ちゃんがハッとなっていた。
「周りを気にするのもやめるんだ。君のことをできる女だとみている人はだれもいないよ」
「失礼な」花咲君が笑った。
「君はできる女じゃない。そこをまず自覚してほしいと前にも注意してあるはずだけれど、覚えてないみたいだね」
「そ、そんなこと、いちいち」と言いかけてやめた。
「覚えてないってことか。君はプライドを守りたい気持ちが強すぎるようだ。それで、周りを無意識なのか馬鹿にしてしまう。そうして、周りに嫌がられている。できる女の態度からは程遠いと思うけれど」
「嫌なところを指摘するわね」
「直してほしいと言ったのは、君だけれど」千花ちゃんが黙った。
「周りを馬鹿にしても、人目を気にしても、意味はないよ。君はプライドを守ろうとして逆効果になっているのにきづいていない」
「え?」
「君が馬鹿にすれば、周りは面白くないために、君をできる女と位置づけすることは無くなっていくよ。できる女になりたければ、周りに認めてほしければ、別の形で何かを表さないと」
「別の形?」
「たとえば、映画をみんなで作るとか」花咲君が笑いながら言った。
「えー、どうせ、素人演劇に、素人の撮影で、見るに堪えないような作品で」
「君は自分で何かを作ったことがある?」
「え、何かって?」
「一生懸命打ち込んで作った作品があるかどうかを聞いているんだよ」
「え、そんなことをいきなり言われても」
「想像してみてくれないか? 自分が一生懸命作ったものを、出来はプロ級とは言えないレベルだとしても、よくわからない第三者に、作った過程すら見てもいない、そんな人間に、そうやって馬鹿にされたら、面白くないと思わないか?」
「え、そう言われた、そうだけれど」
「一つでも人に自慢できることのものはある?」
「あるわよ」すかさず言ったので、花咲君が笑った。
「その自慢できるものを人に馬鹿にされたら、耐えられる?」
「嫌に決まってるでしょ。よく知りもしない、そんなやつら……」と言いかけてやめた。
「そういうことだよ。僕は作品の出来よりも、大橋たちが一生懸命作っていた、その姿勢はいいなと思った。学生のうちしかできないことだと思う。たとえ、出来上がった作品が、好みのものでも、納得できるものでもなくてもね、彼女たちの努力の跡を見てみたいと思うよ」と言われて、千花ちゃんが黙った。
「やってみてから、そういうものを作ってから、言ってみてほしいと思う。それから聞くよ」と言われて、千花ちゃんはなにも言えなくなっていた。

 前へ 次へ

ライン

inserted by FC2 system