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 姉が行ってしまった後、エミリが寄ってきた。
「あ、ごめん。紹介したほうが良かったかな。さっきのが姉の」とエミリに行ったら、
「デート相手の確認で忙しそうだったから、遠慮したの」とエミリに言われて、
「そう。でも、さっきはごめんね。あの先輩が失礼なことを」と言ったら、
「由香が謝らなくてもいいって」
「でも、エミリ。ずっと、ここにいたの?」と聞いた。
「一通り回ってから戻ってきただけ。友達が来るかもしれないから」
「なるほど」
「あの先輩、途中から入ってきて、うるさかったよ。生意気な女がどうとか言い出して、みんなに『シー』って怒られていた。そうしたら、それが気に入らなかったのか、途中で、映画にいちゃもんをつけていた。うるさい人だね。由香じゃなくても嫌うよ、あれは」
「お姉ちゃんがいてくれて助かった」
「そうだね。あれであの先輩、回りづらくなるだろうね」
「なんで?」
「だって、久我山だと肩身が狭いだろうって、そばの男の人たちが言ってた」
「なんで?」
「恒栄だろ」とそばにいた九条君が訂正していて、
「恒栄とか久我山って、うちの恩湯キャンパスを落ちた人が行ってるからだって」
「はあ、でも、それがなんで?」と聞いたら、九条君が呆れた顔をして、
「プライドの問題」と教えてくれて、
「だから、佐並と同じだって。あのとき、高校の友達を呼べなかったのと同じ理由」とエミリが言った。そう言われたら、その話を男性たちがいていたのを思い出した。恩湯キャンパスは工学部がある。恒栄も久我山も同じ理系で安修の工学部のほうがランクが上だと聞いていた。
「え、だったらなんで、沢登に来てるんだろうね」
「冷やかしじゃないの。由香の映画の話を誰かに聞いたか、知り合いがいたかもね。女の人なんていないのだから、それが目的じゃないでしょ。鹿飲なら分かるけど」そう言われたら、そうか。沢登は男子学生が圧倒的に多かった。法学部と経済学部だから、仕方ないけれど。
「でも、やはり嫌な奴だったね。全然成長してないじゃない」とエミリが怒っていたけれど、
「気にしなくてもいいよ、あんなやつ。きっと、二度と来ないって」とエミリが言ってくれてうなずいた。
「おい、そろそろ、中に入ろうぜ」と九条君に言われて、
「え、なんで?」とエミリに聞かれて、
「メイキング映像」と九条君が答えていて、
「ああ、あれね。もう、何度も見たから、私」と笑っていた。

「うーん」メイキング映像を流していたけれど、明神君がテスト撮りしたものを編集したもののようで、
「へえ、オーディションしたんだな」と言っている声が聞こえた。正確には途中でしたものだけれど、観客は最初にオーディションをしたと思っているようだった。
「へえ、かわいい子もいたんだな」と失礼な声が聞こえてきたけれど、
「顔じゃなくて、画面映りで選んでいるんじゃないの」とそばの子が言っていた。
「そうだろうな」と九条君が小さく、私にだけ聞こえるように言ってきた。
「どういう意味?」私も小声で聞いたら、
「派手な子もいるだろ。でも、画面を通してみると違う」と小声で言われて、
「え、そう?」と驚いた。
「そう言えば、さっき、花咲君たちに言われたの。そういうようなことを」
「そうだろうな。明神が言ってたからな」
「なにを?」
「監督が連れてきたとき、正直、心配だったらしい。でも、カメラを通して見ると違ったってさ」
「え、そう?」
「竜仙湖でカメラテストしたら、違ったらしいぞ。それで、明神は撮ることを許可したらしい。何人か候補はいたようだけれど、カメラテストをしても、誰もお前のようには見えなかったようだからな。それで不思議がってた」
「どうして?」

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