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「それはあれだろう。お前はおとなしいから、草刈のように目立つタイプではない」
「確かにエミリは目立つものね」
「でも、草刈とお前、セリフなしでどちらが映像映りがいいかというと、お前の方が上なんだってさ。だから、何度かテスト撮りして、女の子たちを映像で確認 しながら比較して、やはり、お前で行きたいと石渡が言った。もちろん、長船もその方がいいと思っていたらしい。明神以外のやつらも、映像を見て、納得した みたいだからな」
「そう」
「セリフがない。それがお前を配役した理由なんだろうな」
「そう。知らなかった」
「しゃべらせたら、草刈の方がにぎやかで目立つからな」
「確かにね。エミリはかわいいし」
「容姿だけじゃダメなんだな。映像として見る場合は、動くから。自然体に動くことができる人の方が見やすいな」
「え?」
「俺はそう思う。大げさな演技だとわざとらしく見えて、見ているこちらが恥ずかしくなる」
「え、そう? 演出によっては動作が大きめの方が」
「舞台なら、少し大げさなぐらいでないと後ろの座席の人まで分からないからな。でも、映像で見る場合は、そこは自然体の方が見やすい」
「そうなのかもしれないね」そう言っている間に、映像が終わった。次の上映になりそうだったので、席を立った。
「なんだか分からないものだね。撮っているときは必死だったから、シオンさんの意図している全体像とか分からなかったけれど、ああやって流れで見るといいものだね」
「流れね」
「良くなかった?」と聞いたら困った顔をして、
「当事者だと無理。あそこでお前が怒ったとか、すねたとか、そっちを思い出す」と言われて、
「はいはい」と言ったら、
「色々ありすぎたからな。なんとか上映で来て、良かったよ。お客さんが割と来ているのも驚いたしね」
「そうだね」
「最初の上映としては成功したのかもな」
「次も出るの?」
「無理。俺の映像を見ただろ。草刈との映像」
「ああ、あれね。編集が変わっていたね。どうしてだろう?」
「お前、気づかなかったのか? 俺と草刈、かみ合ってなかった。どうしても不自然になるから、別々に撮ったものをつなぎ合わせて形にしたんだよ。お前との演技の方が自然だったからな」
「はあ」
「だから、俺は合わせられないから、難しいだろうな」
「エミリがどうしても主役をやりたいって張り切ってた」
「そうだろうな。あいつ、出たがりだろうから」
「いいじゃない。あれだけ喜んでいて」
「次から候補が増えるぞ、きっと」
「え、どうして?」
「みんなが話題に出すだろうから。そうなると、『出てもいい』そういう発想になりそうだ。女の子って、注目されるのが好きだろうから」
「ああ、なるほどね」
「草刈も頑張らないと負けるかもよ」
「大丈夫でしょ、エミリなら」
「あいつ、強いからな」
「よほど、合わなかったんだね、あなたたち」
「俺と甲羅は違うからだろ」
「甲羅とも合わなかったみたいだよ」
「そうか? 甲羅が一人に絞ったら違うんじゃないか。でも、絞らないだろうけれど」
「どうして、ああも、女の子といっぱい付き合いたがるの?」
「その方が楽しいからだろ」
「そう言われても、女性の方が困るじゃない」
「そこまで考えてないよ、あいつは」
「そうかも」
「お前のお姉さん、お前のことを心配していたな」
「ごめん。変な質問して。私に聞けばいいのに」
「知りたかっただけだろ。俺がどういうやつかを」
「そうなのかな?」
「気にはなるんだろうな。妹の恋人なんだから」と言われて、
「え?」とうれしくて彼の顔を見た。
「一応ね」と言ったのでがっかりした。
「もう」

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