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「お前は分かりやすいな。付き合って、すぐ恋人になれるような性格じゃない、俺は。お前も同じだと思うけど。あの男とダメだったんだから、分かるだろ」
「あの人と恋人になりたいなんて、一度も思ったことはないかもしれないな」
「その程度でデートするな」
「合コンしてデートしてきたあなたには言われたくないな」
「デートね。甲羅と一緒だったぞ」
「二人きりもあるでしょ」と聞いたら、嫌そうな顔になったので、
「ごめん」と謝った。
「いいさ。俺にとって、苦い思い出だったからな。だから、どこかで女は面倒なものだと決めつけていたから」
「そうなんだ」
「お前は分かりやすいし、裏がないからいいのかもな」
「え、単純ってこと?」
「その方が俺にとってはいい」と言った顔を見て、
「えっと」と困ってしまった。
「男としか付き合ってこなかったから、女の反応がいちいちわからないからな」
「どういう意味?」
「長船が言ってた。撮影現場では、女性としての意見は通りにくいと」
「え、そう言ってたんだ?」
「男が圧倒的に多い場所では、女性ならではの意見と言うのは理解してもらえないから、イライラするときもあったらしい」
「えー!!」と驚いた。私も何度か、そう思ったことはあった。ただ、意見を言えるような立場じゃないからと遠慮をしていた。シオンさんも同じように思っていたなんて。
「草刈みたいなやつなら、言いとおせるけれど、お前や長船は遠慮があって言えないってさ。ま、俺はそれさえもわかってなかった」
「何度かね、困った場面はあったよ。男性には言っても分かってもらえないと言うか、そういうことで抑えていた部分もあった」
「長船が同情してた。俺に同調する奴らが多くて、あれが、女性がもっと多ければ、俺たち全員が負けていただろうってさ」
「え?」と驚いた。前に花咲君に教えてもらった、同調してもらいやすい場所と言うのを思い出した。
「主流派かあ」
「主流派?」九条君が聞き返してきた。
「主流派っていうのがあるじゃない。場所によって意見が偏りやすいと、花咲君におしえてもらったことがあるの」九条君が少し嫌そうな顔になったけれど、続けた。
「主流派が正しいとは限らない。通りやすい意見があるって。そういうのも、あの撮影現場でもあったと思う。あなたのほうに同調する人が多くて、やりづらかったんだろうね」
「弟に言われたよ。女性ばかりだと、男のほうが肩身が狭くなって、面白くないときがあると、友達が言っていたって。俺がそれを違和感を感じなかったのは、 男子高出身だからだ。女は細かい気配りをするところがあるらしいが、男は適当に流す。潤滑油みたいな言葉を掛けないらしいから」
「あの、何、潤滑油って?」
「ありがとう、すみません、ごめんなさい。そういう言葉を男はいちいち言わない。女はそういう細かい部分で手を抜くと、気にする子もいるって。気づかない奴って思われるらしい」
「へえ、そうかなあ?」
「お前が気づかないのは、お前が共学で育ち、どちらかに偏った状態のグループに属した事がなく、問題が起きるようなことがなかったからかもな」
「はあ、なるほど。そう言われると、そうかもね。撮影隊では肩身は狭かった。わたしがわがままなのかなと思ったことも何度かあった。でも、女の子だったら、きっと、同調してくれたのかもしれない」
「お前に草刈と代われと言ったとき、撮影隊は止めなかった。でも、『あれが女性が多かったら、反対の意見になっていたかもね』と、長船が笑ってた」
「え、なんで?」
「『ひどい、そこまで言わなくても』そういう同情がお前に集まるってさ。『頑張ってるのに、そこまで言わなくてもいいじゃない』って」うーん、なんとなくわかるかもしれない。
「男はいちいちお礼を言わないと言うか、『言う必要はあるのか?』と言うやつもいたりするから、俺はそれが普通のことだと思って、今まで来た。でも、女性 はそういう部分を大事にするものなんだな。感謝の気持ちとか、謝罪の気持ちとか、いちいち表すのが面倒な時があるけれど、女はそういう部分で細かいってこ となんだろ」と言われて、この人は、こういう部分が分かってないのか、と見てしまった。
「なんだよ?」気に食わなさそうな顔をしていたけれど、ためいきをついた。
「言えよ、気になるだろう?」
「いや、なんだか、お互いに、話し合わないと難しいと思っただけなの。お互いの感覚の違いを埋めないとね」
「感覚の違いね」
「価値観って、埋められるかなあ」と心配だった。
「大丈夫だろ」この人は柔軟性はなさそうだなと思わず見てしまったら、
「言えよ、気になってしょうがないだろう」と言ったけれど、ため息しかつけなかった。



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