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 学園祭は終わり、学校で、
「良かったよ」
「え、知らなかった、教えてくれても」と何度も声を掛けられた。そのたびに、
「えへ、すごかったんだよ」とエミリが私の分まで返事をしていた。
「草刈は調子がいいなあ」と男子学生に言われてしまったけれど、
「いい気分」とうれしそうだった。
「やっと眠れた」
「なにが?」
「寝不足が解消できたから」
「そう? みんなと食事をしたし、親は喜んでくれて、今度は主演を狙うって言ってあるし」
「すごいね」
「売り込んでおかないと、今からね」
「がんばって」
「由香は? 2作目は出ないの?」
「もう無理。それに違う人が出た方がいいと思う。今度は違う学部の顔の広い人を配役したほうが集客力がアップすると思う」
「え、違うでしょ。今度こそ、大作を作らないと。喜んでいたみたいだよ。メールをもらったし」
「誰に?」
「監督」
「私のところにもシオンさんと、石渡君からは来てる。明神君はまだ納得してないみたい。再編集したバージョンを流すんだって、シオンさんのメールに書いてあった」
「あれ以上こだわるの。すごいね」
「そうだね」
「そう言えば、美優ちゃん、連絡取れないままだったんだってね」
「家に戻ってはいたみたいだけれど、出てくれなかったみたい。海里ちゃんから、そうメールが来てた」
「ああ、うちにも来てたけど、相当怒ってるんだろうね」
「どうなるのかな」
「相手にはっきり聞くしかないよ。好きなのかどうか」
「はぐらかしたら?」
「それでも、自分で納得しないとね」と言われてしまった。

 シオンさんに会って、友達の感想を教えた。高校、中学の時の友達も何人か来てくれて、森園君も何人かに教えたようで、テニス部の子も見に来た子がいて、メールが届いていた。恥ずかしかったけれど、それを伝えたら、
「そう、よかった。あちこちで感想のメールがもらえた。あれだけ苦労したけれど、そういうのは伝わってなかったから。甘かったかも」
「そう?」
「苦労したシーンも、映像だと一瞬だからかもね」
「そうかもしれない」
「明神君は納得してないし」
「がんばるんだね」
「ヤスも同じだし」
「そう。すごいね」
「あ、じゃあね」と言ってしまった。シオンさんが向かった先に九条君が見えた。
「どうだった?」とシオンさんに話しかけられて、
「知らないやつまで感想を言っていた。良かったらしい」と九条君がそっけなく答えた。
「他人事のような発言だね」
「疲れるよ。俺の映画じゃない。石渡やお前たちの映画だ」
「みんなの映画」とシオンさんが訂正した。

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