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「でも、ああやって形になるといいものだな」
「そう? ヤスへの感想メールがあまりに短くて怒ってたよ」
「俺にはあれ以上は無理だ」
「どうして?」
「どうしてって、良かった……としか」
「それだけじゃないでしょ?」
「どういう意味だ?」
「由香さんと仲直りできてよかったね」
「別に」とそっけなかった。
「九条君が気に入らなさそうな顔になるのは由香さんが気になっているからだろうね」
「え?」
「ずっと、そう思ってた。撮影中はそれを教えなかったのは、ぎくしゃくすると困るからね。でも、九条君は由香さんが好きでしょ?」そう聞かれて、九条君が黙った。
「そう思ってたから。由香さんはわかりやすかったけれど、九条君は面白くなさそうにしてた。ある人が来てからは特に」
「ある人って?」
「花咲君」
「関係ないだろ」
「そう? 何度も何度も由香さんのほうを見ていたから、わかったよ。花咲君が遊びに来ていたとき、そのあとから、九条君は気に入らなさそうだった。由香さんが撮影途中で帰ってしまって、草刈さんが入ることになった、あの喧嘩も、花咲君の存在があったからだと思ってた」
「どういう意味だ?」
「由香さんに、『俺のことが好きか?』と確認してたでしょ」
「え?」
「それでわかった。気になってるんだなって」
「どういう意味だよ?」
「普通はね、聞かないよ。つまり、それを聞きたいってことなんだもの。相手の気持ちを確かめたいってこと」九条君が黙ってしまった。
「きっとね、その部分を減らしたら、二人はうまくいくだろうなと思った」
「どういう意味だ?」
「説明しても怒らない?」とシオンさんが笑った。
「してもらわないと納得しない」と九条君が言ったので、
「あのね」と説明し始めた。

 美優ちゃんと会ったとき、謝ろうと思ったら、意外にも、
「ごめん」と謝ってきて、
「え、でも、私が勝手なことをしちゃったから」
「違う。それは私が心配だったからでしょ」と聞かれてうなずいた。
「海里ちゃんから聞いた。心配じゃなかったら、野次馬気分だったらほっとくだろうって、教えてもらったから。ごめん」と謝ってきて、
「わたしこそ、ごめんね」と謝った。
「私ね、こわかったから」と意外なことを言ったので驚いた。
「あとで話す」と言ったのでうなずいた。

 昼食時にみんなを交えて、美優ちゃんが謝っていた。サリは渋々参加すると言う形で座っていたけれど、あとの子は、
「そういうときもあるよ」と慰めていた。美優ちゃんは、
「怖かったの」と言い出した。相手の男性は、どちら付かずの態度で、でも、美優ちゃんは彼にあこがれていたから、いつかデートしたいという希望を持って接 していた。彼は夏ごろ、別の女性と別れたばかりという話をしていたという。ライバルの女性もそれを聞いて、相手を誘っていたという。ただ、相手の女性は見 た目はともかく、お金では勝てなかったという。お金持ちの家の子で、お小遣いがたっぷりだったため、相手の男性の分まで支払いをしていたらしい。そんなと き、彼の好きな女優の名前を聞いたという。その人の名前を出して、
「私に似てると思った。ただ、目の大きさが向こうの方が大きいからね。私も整形したら、同じようになれると思ったの。彼の好みになれるし、就職の時までに直したかったからちょうどいいかなと思って、それで親に相談して、かえたの。そうしたら、相手はほめてくれた」
「そうなんだ、良かったじゃない」という子もいたけれど、
「それでよけいにうれしくなった。彼は、ライバルの女のことは、正直、無理して付き合ってる、そういう感じのことを言っていた。だから、私と付き合ってほ しいって提案してね。でも、それでも、相手は、『彼女に悪いし……』とか何とか言っていて、そんな時に時計を欲しがっていると聞いて、相手の女はさすがに 『高くて買えない』って言っていたから、差をつけるいいチャンスだと思って」
「え、でもさあ」
「いいチャンスじゃない」と言い合っていた。私は、チャンスとは思えなかった。そんな高価なものを片思いの段階で贈ったとしても、うまくいかない可能性もあるし……、
「それで無理をしちゃったの。どうしても欲しくて、お店の人になんとかお願いして、取り置きして、でも、バイト代がどうしても足りなくて、親にもこれ以上ねだれなくて、友達に借りて」
「そうよ、返してよ」とサリがすかさず言ったけれど、
「ごめん、もう少し待って。父親に言うから」と言ったので驚いた。
「え、どうして?」とみんなが聞いた。
「高校時代の子にね、全てを聞いてもらったの。お金を借りていた子。事情は話してはあったけれど、友達と喧嘩したことを教えたら、怒られちゃった。それで、ちゃんと事情を説明したほうがいいし、謝った方がいいって。それから、親にも」
「うーん、言いづらいよね、それって」
「あ、でもさ、男に貢いで戻ってこないとなると、親も心配するかもよ」と言い合っていた。
「時計は返してもらった方がいいかもしれないって言ってた。相手の態度によってはね」
「その方がいいかもしれない」と海里ちゃんが言い出した。
「友達に話を全部聞いてもらって、そうしたら、私、いけないことをしたんじゃないかなって思ったの。由香ちゃんに怒鳴ったり、サリにも」と言いづらそうに最後は小さな声だった。少しうつむいていて、
「もう、いいよ」とサリが言った。
「もう、いい。それなら。いい社会勉強になったじゃない。でも、一つ条件があるからね」とサリが言い出して、
「え、なに?」とみんなが聞いた。
「相手の男のところに乗り込む時に、一緒に行く」
「え、ちょっと、それはやめておいた方が」
「いや、やめた方がいいよ」とみんなが止めた。
「だって、相手がどれだけいい男なのか確かめておきたいじゃない。それに、ほかにも素敵な人がいるかもしれないから」とサリが言ったため、みんなが顔を見合わせた後、笑いだした。
「やだなあ」「転んでもただでは起きないね」とみんなに言われていた。

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