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 森園君に電話を掛けて、事情を説明した。
「だから、もう止めなくていいからね」
「そうか、なら、いいけど。でも、心配ならそばについていてやるよ」と言ってくれて、
「ああ、いいよ。悪いし」
「お詫びのつもりだよ。勝手にお膳立てしちゃったからな。あいつだと『デートにならないかもしれない』と常陸は心配してたからさ。それで悪いことをしたと思って」
「いいの。うれしかったから。彼に悪いことをしちゃったね」
「あいつは気にしないよ。何が来ても動じないし、不思議な奴なんだ。嫌がる顔を見たことがないし」
「え、でも、黄和さんは?」
「ああ、そういえば、あの女から電話があったって」
「え、そうなの?」
「例のことを確かめたら、『やだー』で笑って終わったらしい」そうだろうなあ。
「だから、気にするな。そういう子だよ。それに怒ってたみたいだし」
「なにを?」
「大橋とデートしたのか確かめたらしいぞ。自分とはデートしてくれなかったのにって」
「え、なんで?」
「まだ、気があるんだろ。と言っても、複数の男を誘っているという噂が流れているから、候補の一人にすぎないだろうけれど」
「気が多いんだね」
「だから、気にするなよ。お前と綸ちゃんのことを妨害したかったのかもな。常陸がそう言っていたし」
「え、そうなのかな?」
「そういうやつだから気にするな。大橋、彼氏ができなかったときは、綸同のこと、もう一度考えてやってくれよ。あいつ、いいやつだから」
「いや、その前に、彼に恋人ができる方が先でしょう」
「ないだろうな。あいつはきっと、卒業までに女性の影は見えないだろうな」
「え、そうなの?」
「あいつから声を掛けることはないぞ。会話は続かない。それだと難しいだろ」と聞かれて、笑うしかなかった。
「だから、よろしくな」
「はあ」としか言えなくて、
「常陸に男ができるほうが先かもな」
「え、いるでしょ。ひーちゃんなら」
「いや、男友達は山ほどできるだろうけどなあ。彼氏とは別物だろうな、あいつは」
「怒られるよ」
「俺はあいつが女に見えたことは一度もないんだ」と断言していて、苦笑するしかなかった。電話を切ったら、
「九条か?」と声がして振り向いたら、段君がいた。
「違うけど。えっと、違う大学の知り合いに頼みごとがあって」
「あ、そうか」ちょっと落ち込んでいたようだったので、
「あれ、どうした?」と聞いた。
「さっき、聞いたよ。相手の大学に乗り込んでいくんだってな」美優ちゃんのことを聞いたんだろうなと思い、
「違います。乗り込むんじゃなくて、待ち伏せ」と言いかけて、ここまで説明しないほうがいいなと思いやめた。大学に乗り込むかどうかはサリたちと話し合って、その先は聞いてなかった。
「まだ、好きなんだな。すごく好きなんだな、あいつ……」何も言えないな。
「そう言えば、あいつと話してたから」
「誰が?」
「犬童」
「誰と?」
「花咲とだよ。相川とケンカしたときに意外なことを言っていたから」その話はさっき聞いた。上久保君から聞いたようで、教えてくれた子がいた。
「犬童って、意地っ張りだな。素直じゃない」
「そうかもしれない」
「意外なことを言ってた。『認められないから、どうしても無理だ』とかなんとか」
「はあ」
「俺、あいつは理解できない。でも、頑張るって言ってた」
「なにを?」
「もう少し、自分を変えたいって。そう言ったから、驚いただけ。認められない部分を認めたいって。それをしてからじゃないと、あの映画のことを批評する権利はないって。相川にも自分にも」意外。
「俺も同じだな」
「どこが?」
「自分から動いてなかった。相手にされないってあきらめてた。それがちょっと恥ずかしくなった。見守るしかできないなんて言って、言葉にするのを、はっきり振られるのを怖がってたところがあるからさ」
「エミリが言ってた。同じ大学だと、気を使うから、告白できないって。花咲君に憧れている人たちが何人かいるって教えてもらった」
「ああ、仲島たちが噂してた。小坂だろ。何度もお前たちのことを確かめてたから分かったって」
「お前たちって?」
「お前と花咲」
「そう言われても困る」

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