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 サリが、
「えーい、忌々しい」と怒っていた。結局、待ち伏せしてもいなかったらしい。
「今度こそ、捕まえてやる」
「バイト先は?」
「迷惑を掛けたくないって言ってるけれど、休日しかしてないだろうって、美優が言ってた」
「じゃあ、学校か家だね」
「家も分からないんだってば」
「卒アルは?」海里ちゃんが聞いていた。
「彼の母校が分からない」
「あら、残念」と言い合っていた。
「ねえ、どうしたらいいと思う?」と聞かれても、ぼんやりしていた。
「もう、自分がうまくいったからって、友達の一大事に考えてよ」と言われても、
「そう言われても」これ以上は森園君には頼めない。彼は悪いと思っているようで、頼めば調べてくれるだろう。それが却って巻き込めない理由だ。サリが怒って行っちゃった後、
「あの方が正解」と海里ちゃんが小声で言ってきた。
「なんで?」
「時間を置いた方がより冷静になって、行くのがばかばかしくなってるかもしれないでしょ」それはあるかもしれないな。一時の感情で怒ったとしても、相手を好きなんだから、そこまでの怒りは持続しないのかもしれないな。友達と何度かケンカした後のことを思い出していた。
「そうかも。でも、サリが冷静じゃない」
「怒りとうらやましいのと、由香ちゃんへの恨みが混じってるだけでしょう」
「え、なんで、私?」
「由香ちゃんにだけは先を越されたくなかったんだって」
「え、どうして?」
「彼氏ができなさそうに見えたみたいだよ」うなだれた。確かに、あのグループで彼氏ができる順番から言えば、美優ちゃん、エミリには確実に負けるだろう。 恋愛に積極的だからだ。海里ちゃんは意外と候補がいるようだし、男子学生たちも、合コンや誘いはあるみたいだし、そう言う浮いた話がなかったのは、私とサ リぐらいなものだったからなのかも。
「焦りなんだ。困った。それほど進展してないから、焦らなくても」海里ちゃんが笑った。
「笑い事じゃないよ」
「彼氏ができた。それがすでに差があるでしょうね。いいじゃないの、ほっとけば。焦っている人に合わせる必要はないわ。彼女にも」と遠くを歩いている、花咲君に必死になって話しかけている千花ちゃんを見た。落ち込んでいたのは一瞬だけで、今は元気だった。
「立ち直りが早い」
「だから、性格の問題点を直せなかったんでしょ、今まで」
「軽く言うね」
「ああいう人、高校時代にもいたからね」
「なるほど」
「無理だったな、その子も。怒られても、なじられても、流してた。そういう子には注意してもね……」
「そうかも」
「どうしたの?」ちょっと落ち込んでいたので聞かれてしまい、
「いえ、なんだか、こう、映画が終わって、ぽっかりと空いたスペースに新たな問題が」
「え、なに?」
「映画の後ってどうなるんだろうね。男女がくっついて終わるハッピーエンドのラブストーリーの続きが知りたい。そういう映画ってない?」
「ないでしょ。限が無くなるよ、それだと」
「そうだね。困った。二人の仲を深めるという展開が分からない」
「手探りでいいんじゃないの? 二人で探っていく形。ケンカをしながらね」
「え、それだと疲れる」
「大丈夫。それでも二人が一緒に居たいのなら、本物の仲だから。ちゃんと仲直りはできるものよ」
「え、じゃあ、うまくいかないのなら?」
「合わないんだろうから、難しいかもね」
「簡単に言わないでよ」
「がんばって」
「他人事だなあ」
「他人事だもの」
「うらやましい、余裕」
「恋愛にそこまで力を入れてないから」
「え、そうなの?」
「向こうも同じなんだよね。彼氏として盛り上がらない人なの。お互いに居心地は良いよ」
「はあ、うらやましい」
「そう? 恋愛として盛り上がっても楽しいじゃない。いっぱい喧嘩したら」
「それは嫌だ」と言ったら笑われてしまった。


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