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 トイレから千花ちゃんが戻ってきて、
「泣いてないんだからね。ちょっと、言いたいことを我慢していたら、なんだか、涙が出ただけなんだからね」と言いながら、席に座った。花咲君が笑い、
「笑い事じゃないわよ。本当に、もう、失礼なんだから」
「理解はできないかもしれないけれど、今なら、少しは聞いてもらえると思って、教えた。あとは君の問題」
「そうやって突き放す。わたしのことをもっと大事にしてよ」
「わがままな欲求だ」
「当たり前でしょ。大橋さんばかり甘やかして。段君にもそんな強い口調で注意しないのに、どうして、私だけ」
「相手に合わせているだけだよ」
「合わせてないじゃない」
「相手に合わせて注意の仕方を変える。優しく言っても聞いてもらえる段や大橋と違う。君はかなり強く、しかもはっきりと理論立てて言わないと、逃げるからね」
「逃げるって。逃げないわよ」
「考えることからも反省することからも逃げる。だから、強く言わせてもらった。それで傷ついたのなら謝るよ。ただ、僕はグループのため、君のために言わせてもらった」
「自分のためじゃないの?」
「どうして? 今の君のままでも、僕はかまわない。君に合わせて会話をするだけだ。ただ、高校時代の男友達も、牛木さんも、そうして、今の大学のグループの人も君の高飛車な言い方は好きじゃないだろう。強く言い張られても戸惑うばかりだし、感情を全て態度に出すのも好きじゃない人も多いと思う」
「え?」
「露骨な不快感を出されると、嫌だと思うよ。君は好きじゃない相手の話になると露骨だからね。君が誰かのことを悪く言って、それを同調してもらいたいって気持ちがあったりすると、不愉快に感じる人が多いんだ。大橋のことを悪く言われても、僕は同意しない。九条との仲も君は、何かの間違いだと認めないしね」
「だって、おかしいじゃない。あなたと仲良くしておきながら、向こうとも」
「大橋は友達だ。グループ内の人の悪口や良くない話をされても、会話していても楽しくないんだ」
「ふーん、そうなんだ」と面白くなさそうで、
「見守って、そっとしておくべきだと思う。だから、その話題はしないこと。もしも、約束を破ったら、友達をやめるからね」
「え?」千花ちゃんが嬉しそうな顔をした。花咲君がそれを見て笑って、
「笑い事じゃないわよ」
「今、友達をやめるからと言ったのに、うれしそうだからね」
「あら、だって」と言いながら、うれしそうで、
「とにかく、今、注意したことを良く考えて」と花咲君が言っているのに、
「友達、……友達なのね。そう、……友達よ」と嬉しそうにしていて、
「そこの部分ばかり考えないで、さっきの話を。やはり、君には、……難しそうだね」と花咲君が笑っていた。
「話を戻すけれど」いつまで経っても、「友達」と言う言葉に浸りきっている千花ちゃんを止めるように、花咲君が言った。
「あ、え、何か言った?」まだ、うれしそうで、
「君がなぜ、その欠点を残したまま、ここまできたのか、よくわかったよ」
「あら、なに?」と分かってなくて、
「気になることがあると、注意がそらされると、ほかのことが見えなくなるんだな。しかも、面白くないことが続くと、それ以外のことを考えたがる」
「あら、なに?」と全然わかっていなくて、
「さっきの注意、聞いてなかった?」
「注意って?」
「グループの悪口を言わないことと、君の考え方の良くない癖の話」さすがに現実に戻されて、
「ああ、あったわね」忘れたかのようだった。

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