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目をつぶって

 花咲君と二人だけになった時に、
「犬童と話し合ったよ」と言ったので、不思議に思って彼を見た。
「色々教えただけ。わがままの限度とか」
「わがままの限度?」
「そう。相手との関係性によって、どこまでわがままを言っても許されるかということ。まあ、相手の機嫌にもよるけど」
「それはあるね」
「愚痴を言い合いたいのなら、そういう相手を見つけたらいいと言っておいた。ただし、高校時代の近所に住んでいる彼女だけはやめたほうがいいとは教えておいた。それから、禁止事項も増やした」
「禁止事項?」
「前は提案しただけだった。それだと、彼女には難しいから、禁止項目を提案してあるよ。一つ、高校時代の女の子に対して、『牛美』と呼んではいけない」
「ああ、なるほど」
「ふたつ。グループ内の人の個人的なことにまで、あれこれ言わない。特に大橋に対して」
「無理じゃないの?」花咲君が笑った。そばに人がいなかったので、
「九条との仲を認められないらしい。だから、それを言ったら友達をやめると提案してある。喜んでいたけれど」
「え、なんで?」
「友達だと認めたからだよ。僕が」言っている意味を考えてしまった。
「ということは、花咲君は千花ちゃんのことを友達として認めてなかったってこと?」
「今まではね。相川と喧嘩をしたとき、映画の悪口を言ってはいけないと気づいたからね。スタッフや大橋、九条が一生懸命に作り上げたものに対して、批評ではなく、けなすことはしてはいけないってことを分かったみたいだから。一歩前進したからだよ。そうやって、誰かをけなしても、彼女にとっては良くないから。それが分かったから認めたってこと」
「なるほど」
「だから、喜んでいた。でも、いつでも、友達をやめることもあり得ると言っておいたから」
「脅し?」花咲君が笑った。
「笑い事じゃないよ?」
「それぐらいはっきり言っておかないと、分からないタイプだからね。ほかの人には使わないよ。できれば、自主性を持って、取り組んでほしかったけれど、彼女には『これをしたら、どういうものを失うのか』ということをはっきりわからせておいた方がいいと思ってね」
「意外とシビアだなあ」
「成長してもらうには、それぐらいの荒療治じゃないと無理だろうね。ほかの人とは違う。ぶつかりながらも成長していくタイプではあるけれど。ぶつかっても、気づかない、もしくは、ぶつかる対象のほうが悪いととらえるタイプだから。そこに戻ったらだめになる。今のうちの直しておかないと。もしも、また、同じようなことで躓いたら、また、大橋に八つ当たりをするだろうから」
「え、また、私なの?」
「大橋に対してのこだわりがあるからだよ。高校時代の近所のお友達と似てることと」と言ってから、笑っていて、
「なに?」
「僕とのことで誤解してるから」
「良く分からないなあ、その部分が」花咲君が笑っていた。
「千花ちゃんは花咲君が好きだからだろうね」
「いや、僕が彼女と合っていると誤解してる」
「え?」
「僕が合わせているけれど、分かってないから、誤解してる」
「ああ、そう言うことなんだ。え、気づいてなかったの?」花咲君が笑った。

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