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「分かってないんだよ。彼女は自分が振り回していると言うことに自覚がない。しかも、自分は出来る女性だと誤解していた。安修の中では上だと勘違いしてる」
「あ、でも、しっかりしてるから」
「意見としては確かにそれなりのものは持っているかもしれない。ただし、それを伝える能力は下手だ」うーん。
「返事がしづらい」花咲君が笑った。
「そういうことで誤解してる。きっと、高校時代も同じような話し方で嫌がられていたんだろう。だから、女性より男性の方と気が合った」
「え、どういうこと?」
「男は面と向かって嫌だとは伝えづらい。女の子は嫌だと顔に出てしまう。鈍感な彼女でも気づくぐらい」
「結構すごいことを言ってるね」花咲君が笑った。
「だから、僕とも合っていると誤解している。彼女と付き合うこともないだろうし」はっきり言ったので驚いた。
「どうして?」
「彼女はグループに溶け込むのはまだ時間がかかりそうだし、僕は彼女と恋愛することが想像すらできないし」
「なるほど」としか言えなかった。
「でも、よく、聞いてくれたね?」花咲君が笑った。
「なに?」
「聞く態度ではなかったよ」そうだろうな。
「それでも、注意してあげたんだ?」
「グループのためだよ」
「はあ、なるほど」
「彼女があのままでも僕は構わないけれど、グループの連中は、もう距離ができている。違うな、最初から合っていないないんだ」そうだろうな。
「だから、今なら少しは聞く耳を持っているかもしれないと思い、話をしてみただけ」
「それでも怒り出しそう」つい、声が小さくなってしまった。
「だから、途中で何度も立ってしまった」
「は?」言っている意味が分からなくて、思わず花咲君を見てしまった。花咲君が笑った。
「え、なんで笑っているの?」
「彼女は、苦言なんて聞かないよ。注意だってそうだ。グループのため、彼女のために言っているのに、彼女は気づいていない。聞きたくない話は、さえぎるタイプだ。だけれど、もうさすがにそのままにしておけない状態だから、あえて言わせてもらった。それで、彼女が怒ったら帰ると宣言してから、話をさせてもらった」うーん。
「え、ということは、立ったということは」
「そう、何度も立ちあがり、話をやめる。それを繰り返した」
「何度もなの?」花咲君が笑った。
「彼女はさえぎるばかりで認めないし、怒らないでほしいと注意したって、それすら忘れて、怒りだしてしまうよ。そう言う性格だ。抑えておけないんだ。だから、それぐらいはっきりとわかりやすいリアクションでないと」
「すごいね」
「はっきりと嫌だと言われないと気づけないんだ。違う。認められないんだ。嫌だと言われてもね。本人が認めなければ、注意すらわからない。受け入れられない。そう言う状態を彼女に分かってもらいたくて、あえて、何度も立ったんだけれど、でも」と言ったので、
「なに?」と聞いた。
「難しいね、彼女は」そうだろうな。
「あれでどれぐらい効き目があるかは分からない。多分、話のほとんどを覚えていないかもしれない」
「え、なんで?」
「彼女の中では納得できないことは流してしまうから。僕が『友達』と言ったために、その言葉に浮かれていたから。最後の方は」
「はあ」としか言えない。
「だから、彼女は友達に嫌がられても、あの状態を続けてしまったんだろうね」
「なるほどね」としか言えない。千花ちゃんのようなタイプの女の子は、時々いる。ただ、仲が良かったりしたわけじゃない。話で聞いた程度、顔見知り程度で、評判は決してよくはない。そして、友達に嫌がられていても、本人は気にしていなかったりしたのを思い出した。
「直りそうも……ないんだね」としか言えなかった。

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