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エミリに改めてお礼を言った。
「なんで?」と不思議がられてしまった。
「エミリと出会えたおかげで、色々勉強になりました。それから、映画にも出られました。ありがとう」
「やだなあ。改めて言うことじゃないって」と明るく笑ってくれた。
「でも、エミリに出会わなければ、経験できなかったことが多い気がするの。花咲君たちとも仲良く話せなかったかも」
「そう? だって、花咲君は由香が最初に話してなかったっけ?」
「エミリと話して、一緒に服やお化粧や、そういうことを勉強してね、少しは自信がついてきた気がするからね。そのおかげ」
「私も由香に出会ってから、いいことづくめ。男と一杯デートできた」
「それはエミリがもともとかわいかったからだよ。エミリの良さを生かしたからこそ、魅力が増長されて、男性がいっぱい寄ってくる」
「あるねえ。モテ期ってあると思う。高校時代はさあ、制服だからって言うことで、おじさんにジロジロ見られたことはあるけどさ。同じ年ぐらいの人にはほとんど声を掛けられなかったな」
「私は今も声を掛けられないけど」
「そう? これからじゃないの? 由香のもて期はこれからだと思う」
「無理じゃない? サリと私は恋に縁遠い気がするんだよね。あのグループでは特に」
「サリは手近に目を向けないと駄目だと思うよ」
「なんで?」と言ったら、掲示板に目を向けた。新聞の切り抜きが貼られていた。学校の紹介記事で、男子学生の写真があった。
「だれ、これ?」
「サリの」とそれ以上言わなかった。記事を見たら、どこかの陸上の大会で好成績をおさめたとかで、
「でも、ハードルが高くない?」と驚いてしまった。
「そうだよね。この人に憧れて、遊びに行ったらしいよ」
「この人、忙しいんじゃないの?」
「そうだろうね。でも、サリは高望みしすぎなんだよ。ワイルド系スポーツマンがいいって」
「なるほど」としか言えなかった。
「こういう人ってさあ。時間がなさそうだから、無理だと、みんなが言ってた。でも、もろ好みだって」
「うまくいきそうなのかな?」
「無理じゃないの? 相川も悪くないとか言うんだもの。顔だけね」同調できない。相川はワイルドと言うより、柄が悪そうにも思えるんだけど。服装の趣味がついていけないし。
「でも、良かった。とりあえず、由香は見つけたから、私もがんばるぞ」
「エミリはいくらでも選べるじゃない」
「それがねえ。どうにも駄目なんだよね。なんだか、合わない」
「どういう人がいいの?」
「甲羅を誠実にした感じ」笑うしかできなくて、
「笑わないでよ」
「いや、かなり無理だと思う。誠実だったら甲羅にならない」
「そうかもねえ。ああいう明るくて話しやすくて、かるーい感じの人で誠実な人が」
「無理だと思うなあ。ウサギとカメの競争で、ウサギにスタートからずっとまじめに走り続けろって感じだよ。走り続けないでしょ。手を抜くタイプは」
「そう言われるとそうなんだけれど」
「難しいものなんだね」
「分かってるけどさあ。つい、探しちゃうんだって、そういうタイプを」見つかりそうもないかもしれないなあ。
「由香は九条で物足りない部分とかはないの?」
「うーん、最初から合ってない部分だらけで、話し合わないと難しい相性だから、物足りない以前の問題で」
「そうだったね。くっつくとは思わなかった。九条だと苦労するよ」
「苦労したほうがいいのかも。最初だから特にね」
「慣れないかもよ。男女の関係は難しいって、教えてもらった。恋愛の達人に」
「それで?」
「その子はうまくやってた。今は8人ぐらい候補がいるんじゃないかな」
「はあ、すごい情熱だね」
「一度には付き合わないよ。さすがにね。もめるのは嫌なんだって。告白された数は半端ないんだよね。うらやましいぐらいだった。かわいくて、愛想が良くてさあ。明るいし。男はいくらでも寄ってくる子。私も負けられない」
「うらやましいね。そういう人って」
「いいんじゃないの? 由香も花咲君がいるじゃない」
「そういう言い方は失礼だよ。それに、彼は今は千花ちゃんと」
「恋愛はしないだろうね。あそこは。どう考えても、お守りしてるからね」
「本人には言わないでね」
「分かってるよ。私は近づかない。大変そうだもの」と言われてしまった。千花ちゃんが丸くなる日は遠いかもしれないなあ。
「でも、ちょっと様子は変だったみたいだけれどね」
「え?」
「花咲君に対して、なんだか様子がおかしかったみたいだよ」ひょっとして、注意を受けたことを気にしているのかな。それとも、友達だと認めてもらえたのがうれしかったのかも。
「でも、無理。花咲君のほうは気づいていても気づかない振りしてるみたいだからね」
「え、なんのこと?」
「花咲君のほうは、犬童さんの行動や表情から、何を考えているかわかっているし、それを適当に合わせている。でも、犬童さんのほうは恋愛感情があって、そばを離れない」
「あ、そういうことか」
「と、海里ちゃんが言ってたからね」鋭いかもしれないなあ。
「鼻であしらわれても気づかないかもね。かなり鈍いからね」
「言いすぎだよ」
「面白くないの。あの子のあの視線、態度、由香に対して失礼すぎる」
「ありがと。エミリ」
「お礼は言わなくていいよ。面白くない、友達を目の敵にして、なんなんだろ、あの態度」エミリが怒ってくれたのがうれしかった。

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