Top Page About My Shop Catalog Buy Now Contact Us

Catalog
リストマーク  前へ 次へ

 昼に電話が掛かってきて、森園君からで、
「あれ、どうした?」と聞いたら、小声で、
「昨日、目撃したよ。止めるに止められなくて、様子を見てたけれど」
「それで?」
「途中からだったし、最後の方だったみたいで、あいつは逃げた。それで、女の子たちは渋々帰っていくところが見えた程度で、ごめん」
「いいよ、それは、ごめんね、変なことを頼んで」
「いや、それはお互い様だからさ。ただ、もう、あきらめた方がいいぞ」
「え、どうして?」
「さっき、あいつらがそばにいて、変なことを言ってた」
「なにを?」
「ほかのやつらに昨日のことを聞かれて、『恋人じゃない』って否定していた。『うるさくされて困ってる』って」
「え、ひどい」
「時計ってなんだよ?」
「え?」
「時計のことを聞かれていて、『なんでもない、自分で買ったんだ』とか、そういうことを言ってたけれど」
「え、ひどい」
「訳ありみたいだな」自分で買ったと嘘までつくってことは……、
「困ったなあ。とても、本当のことは言えない」
「あいつは本気じゃないと思うから、難しいと思う」
「時計を贈ってしまったんだけれど、取り返したほうがいいのかな?」
「贈ったのか? それだと返さないかもよ。ごまかすような態度に見えて、ちょっと不安になったから、こうやって電話をしてるんだ」
「困ったね」
「とにかくさ。あきらめたほうが良さそうだぞ」
「ごめんね、ありがと」と言ってから電話を切った。そばにいた海里ちゃんが、
「どうかした?」と聞いてきて、報告したら、
「そう、やはりね」と言ってから、考えていて、
「親に言った方がいいわ」
「え?」
「そのほうがいいと思う。相手は返さないと思う。悪いとさえ思ってないと思う。親が出てきたら、相手の男性は渋々だけれど返してくるわ。それに、親の手前、謝ってはくれるでしょうね」
「でも、そんなことをしたら二度と会えなくなるよ」
「未練が残っていると、忘れにくいから、そこまではっきりとしておいた方がすっきりするわよ」と言われて、あぜんとした。

 エミリと相談して、美優ちゃんに、相手の男性は脈がなさそうだからあきらめたほうがいいと提案した。とても、本当のことは言えなかった。
「何か聞いたんだ?」そばにいた子たちに聞かれて、うなずいた。
「久我山の知り合いに頼んであったの。もしも、美優ちゃんたちが大変になりそうだったら、止めてほしいと」
「そう」と美優ちゃんがうなだれていた。
「それで?」サリが寄ってきて睨んでいたけれど、とても、本当のことは言えなくて、
「親に正直に話したら」とエミリが提案した。
「でも」
「親に相談した方がいいよ。お金も絡んでいるし。相手の男が返さないにしても、報告ぐらいはしておかないとね。心配するだろうから」とエミリに言われてうなずいていた。

 前へ 次へ

ライン

inserted by FC2 system