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「なんだよ?」
「いいよ、もう」しばらく黙ってから、
「ごめん」と謝ってきた。
「なに?」
「お前が花咲の名前を出すとどうも駄目なんだろうな、俺は」
「なるほど」そっちだったのか。
「言っておくけれどね。彼は友達だからね、これからも」
「分からないだろう、それは」
「ないと思うなあ。えっとね、こう、なんていうのか、ドキドキ感がないの」
「なんだよ、それ?」思いっきりあきれた声を出されて、続きを言いたくなくなり黙っていたら、
「言えよ。やめるなよ。何か言いたそうだ」
「あのね、その、時々、馬鹿にするような言い方を控えてもらえるとうれしい」
「そうか?」
「似てるの、あの先輩に」彼がしばらく黙った後、
「ごめん」と謝ってくれた。
「つくづくトラウマになってるね。ごめん、私が未熟なのがいけないんだろうね。でも、そういう言葉で言われると、こっちも不機嫌になる。もう少し優しくと言うかソフトにと言うか、そんな感じでお願いします」
「難しいんだな」
「面倒だな、女は……と思ったでしょ」
「思ってないよ。変えていかないといけないんだろ。俺がそれをしないと、不愉快だと思って離れていく女は増えていくだけってことなんだろ。リトマス試験紙なんだから」
「さあねえ。気にしない女性もいると思うよ」
「そういう女性だと俺が嫌かもな」
「なんで?」
「犬童みたいな女なんだろ。ちょっと無神経と言うか」
「あのー、それはどっちに転んでも返事がしづらい」
「ああ、そうだったな。悪い。あの女は俺たちの間では評判が悪いから」
「なんで?」
「『邪魔だから、どけ』と言われたやつがいる。女からそれを言われると面白くないからだろ」
「そうか、私以外も言われてたんだ」
「呆れた奴だな。お前にも言ったのか?」
「『あなたは向こうに行ったら?』そう言われてしまった。花咲君の隣に座りたかったみたい」
「なんだ、同じ目にあっただけか。俺の友達も似たような状況にあったらしい。甲羅はそれ以来、犬童を見かけると、勝手に実況を始めるからな。でも、甲羅は分かってなかった」
「なにを?」
「花咲が意外と女子学生に人気があることを」
「ふーん」
「意外でもないと思うけどな。花咲、彼女がいたことがあったみたいだし」
「知ってるの?」
「同じクラスになったこともあるからね」
「へえ、それは聞いてなかった」
「あいつは言わないんだな、そういうことを」
「知らない。高校時代の話って、そう言えば聞いてないなあ。うちは寄せ集めのグループだから、出身高校がバラバラだよ」
「そうだったな」
「花咲君と話したことはあるの?」
「いや」
「そう。どういう性格なのかとかは?」
「興味がないだろう。お互いに」
「その程度なんだ」
「席替えしたって、男しかいないクラスなんだぞ。同じクラスの男子生徒を興味津々で見ないだろう」
「はあ、そう言われても、どうなんだろうね」
「お前は同じクラスの女生徒の性格まで把握してるのか?」
「漠然と」
「同じじゃないか」
「そう言われると、そうだね、ごめん」
「あいつとドキドキしないって、どういうことだ?」と聞かれて、九条君を見た。

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