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「いや、何をしたら嫌がられるとか分かってないみたいだから。ほら、共学ならあるじゃない。そういうことで。女子に『えー!』と何度か言われたり、言われている人を目撃したりして、覚えていくものだから。それが一切ない環境と言うのが恐ろしくなった」
「勉学には励みやすくなるだろう」
「そう? 関係なさそうだよ。綸同君は女子が隣にいても気づかないぐらいの人だったし」
「かなり鈍い男だな」
「違う。集中すると周りが見えなくなるぐらいの人なの。図書館で勉強している時に、友達に話しかけられても返事をしないぐらいだったから」
「ふーん、よく見てるんだな」
「それぐらいしかできないでしょ。クラスは離れているし、話しかけることもできないしね」
「でも、あいつはお前に興味があったと思う」
「え、なんで?」
「お前の学校に、高校に一緒に行ったとき、一人だけ何度も俺とお前を見てたやつがいた。多分、あれは綸同だ」
「え?」と驚いた。
「お前が帰る姿を何度も見てたし、俺のほうも何度か見てた。顔がはっきりとはわからなかったが、恩湯キャンパスで見たとき、一目でわかった」
「えー!!」と驚いた。顔が判別できるほどの距離じゃなかったからだ。
「驚くなよ。さすがに分かる。立ち姿も同じだったし。ちょっと、猫背で、体型も同じだった」
「はあ」さすがにびっくりした。わたしにはできない芸当だ。
「え、あれ、でも、なんで?」と驚いた。なんで、私を見てたんだろう? 不思議に思っていたら、
「あいつはお前に気があったのかもな。昔からね。だから、お前の高校の同級生たちがくっつけたがったんだろ」
「まさか」と笑った。九条君は気に入らなさそうだったけれど、
「そう言えば、あの女とはどうなったんだ?」と、聞かれた。
「どの女?」
「その男に嘘を教えた女」と言いながら、促されて、置いてあったソファーのほうに移動した。
「ああ、あれね。黄和さんは半作為的だっただろうって。ひーちゃんが言ってた」
「なんだよ、それ」
「そういうタイプだって。人騒がせで、分かって無くて害があるタイプ。自分のことを迷惑だと思われていると気づかないで親切で言っているつもりだけれど、でも、悪意も交じってるかもしれないって」
「俺には悪意があるとしか思えないな」
「そうなのかもね。でも、あのおおらかな綸同君でさえ付き合えないと言うのだから、そういうことなんだと思うしね」
「気づかないまま行くと、嫌がられていても分からないまま、付き合える男がいなくなってくるってことか?」
「まあ、そうなのかと」
「だったら、犬童と同じじゃないか」
「返事がしづらい」と言いながらソファに座った。

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