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「素敵な家だね。リビングが広すぎる」と見回した。ピアノが置いてあり、その周りにソファと机がいくつか置いてある。白を基調とした豪華な部屋で、広さもかなりあった。
「あいつのおばさんの趣味。俺の家と似てるだろ。同じ人が作ったみたいだからな」
「へえ、お金持ちってうらやまし」
「お金持ちじゃない」
「お金持ちだと思うよ。あなたの家もね」
「安修では俺はお金持ちの部類には入らないだろ」
「なるほど。持ってくる基準によって違うってことなんだ。あなたは安修カラーを取り除いたほうがいいよ」
「なんだよ、それ?」
「一般的な価値観も知っておいた方がいいってこと。視野が狭くなると困るでしょ、これから」
「キョロキョロするな」と止められた。つい、珍しくてあちこち見てしまった。
「だって、うらやましいからね。エミリの家も大きかったけれど、やはり違うものだね。私立の子って」
「そうか?」
「違うと思う。明神君のおばあちゃんの家も驚いたもの。庭も広くて。作りは古くなっているけれど、別荘まであると言うのが驚きなの。共学だとそういうのは、あまり」
「ふーん、そんなものか?」
「あなたと一緒にいると価値観が変わってくる」
「それは俺も同じだよ」と言われて彼を見たら、
「兄さん」と声がした。颯司君が寄ってきたので、頭を下げた。
「ああ、一緒に来たんだ。兄のこと、よろしくお願いしますね。ちょっと気づかないところがあるけれど、いくらでも指摘してかまいませんから。それから、変なことを言っても、気にしないでやってください」と明るく爽やかに言われてしまった。言っている内容は結構すごいことだけれど、彼の明るく爽やかな笑顔で帳消しになっていた。
「お前、年下のくせに、生意気だ」と九条君が嫌そうだった。
「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「兄さんが女性と一緒に来るのは、進歩したってことなんだね」
「違う。美弥の命令でしかたなく」
「ほらね、すみません。気が利かない兄ですが、どうぞよろしく」と言って、頭を下げて行ってしまった。
「完全に負けてるね」
「うるさい」
「優しくて、いい弟さんじゃない。完全にあなたのほうが子供っぽい」
「うるさいなあ」
「ほらね、その態度。もう少し謙虚に言えないの? 弟さんや美弥さんに心配されているのも、そこの部分だと思う」
「お前の減らず口はここでは減らせ」
「はいはい」
「はいは一つでいい」
「はーい」
「伸ばすな」と言い合っていた。

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