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家族の思い

 お酒が配られ始め、あちこちで挨拶の嵐になっていた。
「久しぶり」そう言い合っていても、私は知らないし、隣にいる九条君は無愛想で、話しかける人もほとんどいなかった。その中で一人、さわやかな外見ながらも、肩幅が少し広めの男性がいた。運動を何かやっていただろうな、という感じで、目立つ。多くの年輩の親戚たちにそつなく挨拶を交わし、それが板についている。しかも、
「なんだよ?」九条君を見た。私がもう一度、その人物を見たら、
「兄の紘司」とそっけなく教えてくれた。二人は体形は違うけれど、顔立ちが何となく似ていた。
「なるほど、なんだか分かる気がする」
「なにが?」
「嫉妬したくなる気持ち。あれは出来るわ」
「初対面で判断するな」
「いや、だって」挨拶の仕方も上手で、年配相手にもうまく話をしていて、あれだと確かに年上の人たちにかわいがられるだろう。それに比べてと、また、九条君を見てしまった。
「だから、なんだよ?」と九条君は仏頂面で、
「世渡り上手なお兄さんを持っていると大変だね」そばに人がいなかったために、小声で言ったら、
「ふん、お前のところだって、女帝だろうが」
「そう言われるとそうなんだけれど」
「4つも年上だからだろ」
「いや、あれは年齢は関係ないかと。性格の問題じゃない?」
「うるさい」と言い合っていたら、
「兄さん、料理を取ってあげないと。よろしかったら、どうぞ」颯司君がお皿を渡してくれて、
「ああ、すみません、ありがとうございます」と受け取った。フォークで食べていたら、
「分かったよ。待ってろ」と九条君が立ち上がって行ってしまった。
「すみません。兄は性格は悪くないのですが、言わないと気づかない人なので、遠慮なく教えてやってください」
「え、でも、それをしたら気に入らなさそうな顔をするし」
「大丈夫です。知らないだけなので、表面は怒っているように見えますが、反省はしますから。ただ、素直じゃないだけです」弟さんにも明らかに負けている。
「そうなんですか」
「映画見ましたよ。素敵でした」
「はは、スタッフに教えておきます」
「正直、兄がああいうものに参加するのは驚きでした。面倒なことを嫌う性質で、頼まれたから渋々だと言ってけれど、そうは見えなかった。兄は兄なりにやっていたんでしょう?」
「どうだろう?」と首をかしげていたら笑われてしまった。

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