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「でも、ほっとしました。兄はあなたと知り合ってから、なんだか変わってきましたから」
「え、そう?」
「ええ。兄は前は面倒なことから逃げる人でした。でも、あなたと映画をやるようになってから、かなり変わりました。母に対しても、自ら手伝うようになってきましたし。ただ、兄は気配りができるほうではないので、教えてやれば大丈夫ですから」
「颯司君は共学だっけ?」
「ええ、はい」
「共学と男子校って、そこまで違いが出るものなの?」
「違いですか?」
「気配りの差が大きい気がして」
「ああ、いえ。性格もあると思いますよ。僕はどちらかというと家族のまとめ役のようになってますから。それで。もっと上の兄は、ああ、あちらにいますが」と颯司君が見たので私もつられて見た。
「あの兄は忙しすぎて、僕たちの面倒はそれなりは見てくれましたが、年も離れていますからね。僕と隆兄さんの方がいつも一緒にいました。兄は言えば面倒を見てくれるタイプですので」言わないと駄目なのか。
「嫌がっているようですが、それも、表面だけなので。だから、気にしないでやってくださいね」と優しく爽やかな笑顔で言われて、これはモテるわ。つくづくそう思った。花咲君よりもさらにソフトで、さらに優しくて面倒見がいいタイプ。女の子も相談したくなるだろうな。この子だと。
「兄は、女性に対して、どう接していいのかが分かっていないだけなので。慣れてくれば大丈夫だと思いますよ。兄のそういう部分を知っている人だと大丈夫なのですが」九条君が親せきのおばさんらしき人に頭を下げているのが見えた。
「兄はこういう集まりにはほとんど参加しなくなったんです」
「そう」と言いながら、兄の紘司さんを見た。あの人に対する、親せきの評価は高そうだ。『それに比べて』と言われやすそうだ。それに、彼は過敏に反応してしまった年頃だったんだろうな。かなりの苦痛を感じていたのかもしれない。初めて食事に行った時も、それで不機嫌だったと教えてくれたし、
「どうしたらいいのかなあ?」
「ああ、大丈夫だと思いますよ」颯司君がさわやかに笑っていて、不思議だったので見てしまったら、
「あなたと付き合っていけば、きっと、変わってくると思う。そういう相手なんでしょうね、きっと」
「え、でも、今までも彼女がいたはずだし」
「兄が話したんですか?」と聞かれてうなずいた。
「驚いたな。兄がそこまで話すなんて。聞かれても、『ああ』だけなんです」そうだろうな。
「きっと、あなたには話しやすいのでしょうね」
「そうですか? 美弥さんのような人がタイプだと聞いていたので」颯司君が笑った。
「美弥さんは、みんなの憧れなんです。親戚一同の宝物と言うか、そんな感じです。紘司兄さんも幼いころに、『結婚しよう』なんて提案してましたし。ませてますよね」うーん。
「とにかく、素直じゃないし分かりにくいかもしれませんが、大目に見てやってください。あ、じゃあ」知り合いを見つけたようで行ってしまった。

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