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「なに?」
「俺と同じ感想を持っただろ?」
「いや、だいたい、あなたがどう思ったかが分からないし」
「どこがいいんだろうな?」
「そう?」と言っていたら、演奏してくれることになり、美弥さんがバイオリンを菅原さんがチェロを弾きだした。みんなが座りだし、私たちも座ることにした。あちこちに席が作られていて、
「いいね、こういうのは」と言い合っていた。 
 演奏の途中で何度か、
「いいなあ、習いたい」と言ってしまったら、
「やればいいだろ」と九条君に言われてしまった。
「あのね、バイオリンを習うのに、お金がかかる。今すぐは無理だよ。ほかにもほしいものがいくらでもある」
「親に出してもらえないのか?」こいつは……とにらみたくなった。

 演奏が途切れた後にバルコニーに移動した。
「こういうのって、素敵」
「そうか?」と九条君はそっけなかった。
「だって、個人の家での演奏会と言うのが想像できなかったけれど、素敵な家だねえ。映画みたい」
「お前は何かというと、すぐそれだ。映画のようじゃないと、ダメなのか?」
「違う。非日常って感じが素敵」
「ふーん」と九条君はそっけなかった。
「個人の家のバルコニーを想像してたけれど、違っちゃった」
「なにが?」
「前にあなたが美弥さんと話したバルコニーの話」
「そういうことは忘れろ」
「ロミジュリが出て来そうなバルコニーだね」豪邸のバルコニーだから、かなりの広さがあった。
「ベンチがあるね」誰か別の年配の女性二人が座っていて、行ってしまった。
「普段は花も置いてある。移動させたみたいだな。バラだと棘があるしね」
「そう」
「酔っぱらうと危ないからだろうな。前にけがをした人もいたし」
「あのー、もう少しロマンチックな話題にして」
「注文の多い奴」
「月夜に見てみたいな。二人で」
「何の話だ?」
「美弥さんとここで何を話したの?」
「なにも」仏頂面だった。
「ごめん、なんだか気になって」
「お前の話をしたよ」
「私?」
「お前を思い出したから、それを美弥に話した。美弥はお前と仲良くなれとか言うし、訳が分からない」
「その時の状況が気になる。どうして、ここに来たの?」
「美弥と話したかったから。それで家に行った。ここで話をして、美弥は綺麗だったからな。でも、キスしたいとさえ思えなかった。不思議だったよ」
「どうしてだろうね」
「お前の存在が大きいって、美弥が教えてくれた」
「え?」

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