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「でも、そう言われても、うれしくないよ。面と向かって『好きです』と言われた感じじゃないから。『ごめんなさい』とは言わないで、『謝っておくよ』と言う言い方で謝罪していた高校時代の男を思い出す」
「なんだよ、それ?」
「ほら、いるじゃない。素直に謝れないタイプの男性。『ごめんなさい』だけでいいのに、理由と講釈を述べてから、『だから、謝っておくよ』と付け足していう男。『謝りたくないんでしょ』と言いたくなる、言いわけが延々と続いて、ほとんど『ごめんなさい』とは言わない形で謝罪するタイプ」
「犬童みたいだな」
「ああ、確かに。千花ちゃんも、『かもしれないわね』とか、『だから、悪かったわね』と、やたらともって回った言い方はするね」
「照れくさいんだよ。口に出して改めて言うのは」
「でも、言ってもらわなければ、わからないよ。あなたの場合は分かりにくいから」
「お前だって、俺に言ってないだろ」
「ごめん、それは前に説明したとおり、先輩に」言いかけたら、
「それは昔の話だろ。あのあと、少しは成長してきてるだろ。だったら、お前から言えよ」
「女の方から言うの?」
「言えばいいだろ」
「は、恥ずかしいんだけど」
「俺のだけ聞きたがるな」
「そう言われてもね」
「夢の中で俺と映画を観るな。俺と直接観たいと言えよ」
「言ったじゃない」
「分かりにくいんだよ。素直に言ってくれたら、考えてやるのに」
「ほら、上から目線だ」
「お前が悪いんだろ」どこかから笑い声がした。お兄さんが少し離れたところにいて、隣に恋人がいて、
「笑うな」と九条君が怒っていた。
「不器用な奴だな。それに、女の子に言わせたら駄目だろう? その場合はお前から言えば、彼女の方も素直に応えることができる。余裕がないと彼女が困るだろう?」と言ってくれて、九条君が面白くなさそうだった。
「ごめんね、素直じゃないやつで。君からリードしないと難しいかもしれないから、うまく合わせてやってくれ」
「うるさい」と言い合っていた。

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