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「あのね、家族に愛されているなって、ことを知っただけ」
「俺が?」と意外そうに答えた。それで笑ったら、
「笑うなよ」と怒っていて、
「きっとね、お父さんもお母さんも見ててくれていると思うよ」
「ああ、無理。親父はともかく、母親にその余裕はないよ。自分のことも危なっかしい人でね」
「自分の親だと言うのに」
「お前、自分の親を素直に褒められるか?」そう聞かれて戸惑った。そう考えたこともなかったから……、
「無理……かも」
「そうだろ」
「お互いにまだまだあるね」
「そうかもな。女帝ならいいだろ。あれだけ機転が利く姉なら、いいんじゃないか?」
「そう? 一生頭が上がらないままで行くんだよ?」
「お前は甘やかされているからな。うらやましいよ」
「どこが?」
「フォローされやすい性格だってことだ」
「え、そう?」
「花咲も同じなんだろ。俺もどうもつい、助けている気がするし」
「なるほど」
「ま、犬童には負けないように、がんばれよ」
「勝ちたいとも思ってないのに」
「無理だろ。向こうだけは、なぜかお前をターゲットにし続ける。勝っても負けてもだ。こだわってるんだろうな、向こうだけ」
「困る」
「相川のところも同じだろ。相川の彼女、男女の関係はあるけれど、心は草刈のほうに向いている」
「え?」ちょっと恥ずかしくなってうつむいた。
「あの女が暴露してたようだ。『離れられない関係になっておきながら冷たい』ってさ。甲羅が誰かから聞いてきて、話していたから」
「はあ、呆れるんだけれど。エミリが好きなら、そんな関係にならなければ」
「無理だろ。好きだけれど、男としての部分で、そっちとも……ってことだろうから」と言われて恥ずかしくて、
「やだな。相川って、分からないよ」
「草刈のことも勝手に『エミリ』と呼び捨てにしてたみたいだぞ。『付き合うのも時間の問題だ』と豪語してるらしい。草刈はあいつとだけは付き合わないのは誰もが分かっているのにな」
「え、どこから、そんな都合のいい話に変わるの?」
「相川はそういうやつだろ。犬童とはだから喧嘩する」
「え、なんで?」
「二人とも周りが思っていることと自分が思っていることにあまりにも隔たりがある。自己評価が高いんだろ。しかも、周りが自分をどう見ているかがまるで分かってない。だからこそ、犬童は花咲と、相川は草刈と付き合えると思い込んでいる。実際は無理だからなあ」
「そう? 花咲君ならだれとでも合わせられるだろうから、千花ちゃんでも」
「そうか? 友達として渋々合わせているだけだろう。俺には多分……」と言って黙ってしまった。

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