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「期待されているってことだよ。猿林には最初からそれはない。ほかのやつもね。与田とか」
「え、なんで?」
「与田は友達候補タイプだってさ」
「そう」海里ちゃんはさらっとした性格で、男子学生のまとめ役にもなっている。確かに話しかけやすいけれど、恋愛に対しての割合は少なくて、恋人候補にはなりにくいのかもしれない。甲羅みたいな軽く遊びたいタイプには不似合いだろうなあ。
「だったら、千花ちゃんは?」
「無理だろ。そもそも、そばに寄りたくないぞ、俺たち」と言ったので、ため息をついた。
「だから、お前はがんばればいいさ」
「あのー、つくづく優しくない言葉なんだけれど。もっと、やる気になれるような言葉に変えてもらえないかな?」
「これだと駄目か?」
「さっき、弟さんやお兄さんに言われた」
「なにを?」
「これから、お互いに頑張っていかないと。まだまだね、お互いに」
「俺もなのか?」
「容姿以外は不合格」
「おい。それは人格否定だろ」
「違う。あなたも伸びしろはあると思うよ。私と同じ。私は見た目を、あなたは中身をがんばりましょう」
「どう考えても、俺の今までを否定された気がするけどな」
「だったら、これからを変えていけばいいでしょう。お互いにね」
「ふーん」
「人にはダメ出しをしておいて、自分がされると嫌がる部分を自覚してね」しばらくしてから、
「悪かったよ」と謝ってきた。
「つい、くせになってるんだろうな。男しかいないと会話はそういう感じで違和感がなかった。甲羅やそれ以外やつらの言葉はお前に言わせたら、無神経ってことになるんだろうな」
「本音と建前を使い分けたら?」
「無理だろ。俺はそういう偽善的なことは」
「偽善かなあ? 本当はね、目につくのは誰でも同じだと思うよ。気づかない人は別にしてね、ようは気にするかしないか、口にするかしないかの違い。大目に見られるエミリや花咲君がモテるのは、なぜだか分かってる?」
「え?」
「否定されるよりもね、肯定される方が嬉しいの。あなたはダメ出しをしていたけれど、それは相手を否定するように聞こえるの。言葉の使い方によってはね」しばらく黙った後、
「お前の言葉って、なんだか、どうしても無視できないんだよ」
「え、どうして?」
「そういう相手なんだろ。気になってしょうがないと言うか」
「それが好きだってことなの?」と聞いたら、渋々と言う感じでうなずいていた。
「先が思いやられそうだ」
「うるさい」
「もう、そうやって、言われたくないことだと、すぐに『うるさい』でごまかすんだから」
「しょうがないだろ、聞いていられないんだから」
「あなたや甲羅の言葉って聞いていられないことも多いと思うけれど。相川は特に。でも、女の子たち、誰も、『うるさい』なんて、その場では言わないよ」
「え?」
「そういうことも分かってね」と言ったら、かなり黙ってしまった。

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