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 そのあと、電話が掛かってきて、サリからで、美優ちゃんが親に話して、相手の男性に電話をしたと言う。そうしたら、しどろもどろになり、「親にまで言わなくても」とか、言い訳ばかり続ける態度を見て、気持ちが冷めたと言う。
「阿木君はさあ、美優からの時計を受け取っておきながら、まったく気がなかったみたい。お父さんと電話を代わってね、『うちの娘のことをどう思っているんだ』って。最後はどなってしまったらしいよ。そうしたら、何度も謝ってきて、『返しに行きます。すぐに』と泣きそうだったらしい」
「え、そうなの?」
「阿木君は美優ちゃんに明らかに気がなかったんだろうね。軽くあしらっておけば、なんとかなるさ……と思っていたみたい。今までも似たようなことをしてきたんじゃないのかなって。お父さんが根掘り葉掘り聞いて」
「え、美優ちゃんの家に行ったの?」
「当たり前でしょ。『嫁入り前の娘を傷つけるやつは許さん』って、かなり怒っていたみたい。それで、実際に来たら、お父さんは今度は何も言えなくなって、彼は土下座で謝ってきて、お母さんが『娘と付き合ってください』って言ったらしいの」
「無理でしょ。そんな男と」
「それがねえ、お母さんも面食いだから、顔を見たら許しちゃったらしいの。それで、時計を返さなくてもいいから、娘と少なくとも3か月は付き合うこと。この家に必ず送ってくること。家に上がってお茶を飲むことを提案して」
「それで?」
「『それは困ります』だって」とサリが笑った。うーん、あくまで付き合う気はなかったってことなんだろうな。
「そのあとから、もう逃げ腰で、必死になって、付き合えない言いわけを並べて、それが言いわけになってなかったらしいよ。お父さんはその態度を見て、『時計だけ置いていきなさい』って、それから、二度と娘に近づくなって。お母さんは反対に、付き合ったほうがいいと。時計は置いていきなさい。娘とデートを10回以上してから、許すかどうかを考えさせていただきますって」
「えー!!」九条君が変な顔をしてこちらを見た。
「呆れるでしょう? お父さんのほうが正しいと思うけれど、お母さん、ちゃっかりしてるよね。それで、阿木君ったら、逃げられないと思ったのか、渋々、首を縦に振ったらしいよ」
「呆れすぎて、何も言えない」
「そうだよね。阿木君もだけれど、お母さんには負けているね。時計はお父さんが預かって、売るつもりみたいだよ」
「そう」
「見ているだけで不愉快だって、時計も阿木君も」
「はあ」としか言えなかった。
「それで付き合うの?」
「美優ちゃんは複雑ではあるけれど、未練はあるみたいだから、付き合うかもよ」
「え、そこまでされて、まだ、付き合うの?」
「いいんじゃないの? 親の許しが出たんだから」
「お父さんが反対してるのに?」
「お母さんのほうが強いから、大丈夫だって。とりあえず、次のデートの約束も取り付けていたみたい。お母さんが」強い。

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