「そういうことだから」電話を切った後、
「なんだって?」と九条君に聞かれて、
「美優ちゃんも大変そう」
「ふーん、相手の男に逃げられたのか?」
「いや、捕まったのは阿木君のほうだろうね」
「捕まった?」
「カモにしたつもりで、カモにされそうだなあ」
「なんだよ、それ?」
「女の人を敵に回したら怖いってこと」
「それはあるかもな。相川も甲羅もこれからは、ひそひそ言われる側に回りそうだ」
「え?」
「あの学校も大変そうだ、これからも」
「楽しそうでいいじゃない」
「あいつらなら、何かと話題を提供してくれるかもな。女が多いと噂話が多くなりそうだ」
「いいんじゃないの? すぐに違う話題に移るだろうから。そうして、すぐに忘れる」
「女が多い環境に戸惑っているよ。なんだか異次元の世界だ」
「そうかなあ? そうでもないと思うけどなあ」
「男のほうが気楽だ」
「そう? 女が多くても、それなりに楽しめるでしょ。席替えの楽しさを味わえるよ」
「想像していたころが懐かしいよ。想像の産物だったときのほうが良かった。身近だと別のことが見える。見えすぎて怖いこともある」
「なるほどねえ。私はそうでもないんだけれどねえ」
「そう思っている奴らも多いかもな。高校の時と話題はそうは変わらないが、俺たちの評価が全然違ってしまっているからなあ」花咲君が言った、主流派、多数派って、こういうことなのかもしれないなと思えた。 |