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 彼が公園に連れてきて、
「なんで、ここ?」と聞いた。
「凱歌スクエアは行きたくないし、クレナデは遠いだろ。だから」と言いながら歩き出した。
「あのー、なんで、ここなのかを教えてよ」と言ってから、少し歩いたら眺めがいいところに出て、
「人が少ないから。話しやすいかと思ってね」
「話すことなんてないよ?」
「二人で話したかったから。それで、ここ」と言われて、周りを見た。人がいない。穴場スポットとでも言うべきなのかもしれない。
「お前とさ、映画を撮れてよかったよ」と、突然言われて、
「え?」
「お前と出会って、俺は戸惑うことばかりだ」と言ったので彼を見た。
「わけの分からない感情、『うるさい』と言っても流してくれない相手、どうしても目を追ってしまう。そういう自分に戸惑ってるよ」と言ったので驚いた。
「お前の何気ない言葉をつい気にしてる。ほかの相手だったら流せるのに、不思議だよな」
「私も同じだった。入学した時から、あなたをつい目が追ってしまっていたの」
「え?」九条君が私を見た。
「そうしたら、いきなりああいう幻滅することを言われて、かなりショックだったな」
「ごめん」九条君が珍しくすぐに謝ってくれた。
「甲羅や佐並君とか、そういう人たちには言われ慣れているの。ほら、高校でも先輩でいたからね。でも、あこがれている人に否定されるって言うのは、すごくショックだった。綸同君に言われた時よりもはるかにショックで。でも、どうしても、目があなたを追ってしまう。どうしてなんだろうね。不思議だ」
「俺の顔が好きだったとか?」
「前だったら、たとえ容姿が良くてもね、そういう言葉を言われただけで冷めてしまう。相手のことをそれ以上好きにはなれないから。でも、あなただけ違ったな。いくら言われても、どうしても気になって、どうしてもあなたから目が離せなくて」九条君がしばらく黙ってしまい、
「ごめん、変なことを言って」
「違う。俺も同じだったから、驚いただけ」九条君の方を見た。
「俺も同じだ。お前のことをどうしても無視できない。お前の姿を見かけると、つい見てしまう。それが初めての経験だったから」
「え、だって、美弥さんは?」
「美弥は親族が集まると、あいつにみんながちやほやするから、違和感はないだろう」
「なるほど」
「お前の場合はどうしても見てしまう。甲羅やほかのやつらはそうじゃないから、俺だけの感情なんだろうとは思ってた。お前に会っていると、イライラして、でも、会わないともっとイライラしてた」

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