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「映画で降板した後に寂しそうにしてたと聞いた。どうして?」
「お前に会うのが当然だと思ってたのに、居なくなると寂しくなっただけだろ」
「それだけ?」
「分からない。戸惑ってるから」
「私と同じなんだね。花咲君と一緒にいるとドキドキしないと言ったじゃない。彼に会えなくなっても、元気でやっているんだろうなと思える。あなただと、今頃何をしているだろうと考えちゃうな」
「え?」
「それが恋なのかなあ。良く分からない」
「なんで? 今までだって好きな奴ぐらいはいただろう?」
「いたよ。憧れはいくらでもあった。勝手に思い込みから好きになり幻滅して……の繰り返しがあって、そのあとに、綸同君を見るようになった。見ているだけで癒される存在だったから。でも、付き合いたいと思ったことさえなかったな」
「そういうものか?」
「彼のことを見ていることが好きだっただけ。現実的な恋愛対象ではないと思うから。彼と話すようになって、それがはっきりとわかった。あなただと一緒にいたくなる。たとえ、冷たい言葉を言われ続けてもね」
「え?」
「不思議だね」と言ったら、九条君がいきなり、抱きしめてきて、
「えーと」としか言えなくて、
「お前って、不思議だ。俺にとって、お前ってなんだろうな?」
「それを聞かれても困るよ」
「自分の感情をコントロールできない」
「それは難しいでしょう。お互いに意外と怒りっぽいことが判明したし」
「そうか?」
「エミリのように相手にはぶつけられないだけ。言いたいことは山ほどあった。今までも。初めてぶつけた男性があなただったと思う」
「え?」彼が抱きしめながら私を見ていて、
「不思議だね。あなただとどうしても口に出してしまう。ケンカしたくないのに」
「それは俺も同じだ」と見つめられて、恥ずかしくなった。
「ケンカしたくない。そうやって、うつむいてほしくない」
「え?」そう言ったら、彼の顔が近づいてきて、慌てて目をつぶった。

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