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「それにさ、これは言う必要がないかと思って教えなかったけれど、例のあの男、骨折したらしいぞ」
「骨折って、誰が?」
「お前を襲った男。バイト先の男だったっけ?」
「え、あの先輩が? どうして?」
「お前以外にも被害者が出たそうだ。しかも、お前の後から入った女の子に手を出して、女の子は男を叩いて車から逃げて」
「え、また、やったの? 同じことを」
「どうも、そうらしい。しかも、相手の女性をしつこく追いかけて、相手の女性ともみ合っているうちに、橋から転落して骨折」
「橋から? すごいね」
「相手の男は、けがをした慰謝料を請求。被害者の女性は怒ったみたいだ。払いたくないと。あの男は、お前の時と同じように嘘を流して、ところが今度は泣き寝入りしなくて、目撃者も探しだし、訴えるとまで言い出し、相手の男性は『慰謝料は我慢する』とか言い出して、なんとかなだめようとしたらしいけれど、もう遅くて、大学にばれて、退学になるかもしれないからと慌てていたそうだ。弟が知り合いから聞いてきた話。ただ、お前には教えないほうがいいだろうと弟に注意されて、今まで教えなかったから」
「そう」颯司君なら、優しいから内緒にしてくれたのかもしれない。思い出すといけないからと。
「お前の時で懲りておいたら、良かったのにな」
「そうだね。すごいね。ちょっと驚く。謝ってくれなかったけれど、嘘も流されてしまったけれど、親には報告してない。口にするのもおぞましくて。学校の友達にまで嘘をつかれて、嫌だった」
「あの嘘の噂を流したのも、自分のしたことをごまかしたかったんだろうな。でも、今度のことで、お前とのこともすべて嘘だとばれてしまった。これからは信じてもらえなくなるだろうな。いくら、うまくごまかそうとしてもね」
「そうだろうね。ごまかすのが上手な人だったのかもしれないね」
「もう、忘れろよ。お前は片思いが実ったんだから」
「あのー、それは私が勝手にあなたを好きになって、告白して実ったかのように聞こえるけれど」
「そうだろ」
「違うでしょ、微妙に何かが違う。片思いはそうだったと思う。でも、途中で幻滅したしねえ」
「うるさい。良いだろ、そうしておけば、綺麗にまとまる」
「あなたはどう思ってたの?」
「なにが?」
「私の第一印象」
「さあな。教えない」
「教えてよ、けち」
「減らず口を減らしてからね」
「えー、あなただとどうしても言ってしまうの」
「さっきのしおらしい態度のほうがかわいかったな」恥ずかしくなって横を向いた。
「時々、ああいう顔をするから、また、いいのかもな」と彼が笑っていて、
「あなたの別の顔が見てみたいな」
「ま、いくらでも見られるんじゃないか? お前が俺を見続ければね」と笑っていて、まだまだ振り回されそうだなと彼を見て、うれしくなって、窓の外を見ながら、
「これが映画みたいな恋……なのかな」と言ってみたら、
「そうかもな」と彼が笑ってくれた。

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