4

ノート

 男子も女子もうるさかった。なにしろ、一之瀬さんは結城君とやりあっていて、あちこちで、話をしていて、困っている人もいて、男子は明らかに、
「俺が勝ったんだぞ」「まぐれだ」「次は絶対勝つ」とやりあっていて、
「なんだか子供の喧嘩に近いよね」と後輩が呆れていた。確かにそのレベルかもねえ。お互いに切磋琢磨と言う理想には程遠いなあ。「道は遠くて長い」と思いながら聞いていていた。
「先輩が僕に勝てるのは、その口ぐらいですね」と結城君が言っているのが聞こえて、
「はいはい、その辺にして」と小平さんが呆れていた。
「とりあえず、午前中は基本練習の後、グループに分かれてください。それから、前園さん、小山内さんと室根さん、菅原さんは後輩の面倒を引き続き見てください」と小平さんが言って、渋々前園さんが動いていた。なんだか、あれじゃあ難しいかもねと見ていて、
「試合はいつするの?」と一之瀬さんが結城君を見ながら言いだして、
「ああ、男子も午後からだそうだから、その時にお願いしてあるわ」と答えていた。
 
 午後になる前に、小平さんのほうへ行き、
「前園さんのほうは、担当を決めたほうがいいと思うよ」
「担当?」
「そう、グループに分かれてもらってね。と言っても、全員、後衛だったね。仕方ない。とにかく、前衛候補と後衛候補に分かれて基本練習の徹底をしたほうがいいと思う」
「そういうなら言ってみるけれど」
「確かにあれじゃあ、目に余ったよ」と美鈴ちゃんが呆れていた。
「一之瀬さんのところが話し合っていないらしいの」と湯島さんが心配していた。
「結城君の試合の後に様子を見たほうがいいかも。それから、対戦成績はノートに残して、部室に成績表を張っておいたほうがいいかもね」
「そこまでするの?」
「そうしないと難しそうだよ。そういうのは後輩に頼んでもいいしね」
「そうね。そのほうが分かりやすいわね」と小平さんが言いだして、後輩に何か頼みにいった。
「なんだか、変わってきていないかな?」と美鈴ちゃんに言われて、
「仕方ないよ。強くないから一之瀬さん達から文句が出るって指摘された。その通りだから、とりあえずレベルを上げよう」
「レベルってね。そんな簡単に」
「手っ取り早くあげるには、他に方法がないからしょうがないよ」と言って水を飲みに行った。
「詩織ちゃんがどんどん言うようになったね。拓海君の影響かなあ? 楢節先輩のほうかなあ?」と美鈴ちゃんが見ていて、
「どちらにしても驚くよ。次から次へとね。なんだか、急激に変化して戸惑うのだけれど」と湯島さんが言ったら、
「むしろ、今まで言わなかっただけで、思ってたんじゃないのかな。私も同じだしね」と千沙ちゃんが見ていた。

 午後からの試合は大荒れだった。何しろ、男子は喧嘩しだすし、一之瀬さんはこてんぱんにやられてしまい、ふてくされて相良さんのせいにするし、湯島さんたちも男子には歯が立たず、私と百井さんの所だけがマイペースで、後は話し合いもできていないらしかった。
「あちこち問題があるよ」
「自信がなくなったかも、勝てるのかな?」
「接戦の所はいいよね」と言い合っていて、男子のほうがうるさかったので、
「そこまで言うなら、紙に書いてデータに出せばいいじゃない」とつい、横から言ってしまった。「自分のほうがサーブが入っていた」とうるさかったからだ。
「試合運びだってすごいんだぞ。俺は自分のペースにもっていき」
「途中で崩れたくせに」と言ったので、
「客観的にデータに残るように後輩に頼んだら」とうつむいた。休憩時間なのにうるさいぞ。英語で頭がいっぱいで夢にまで英会話になってパンクしそうだ。
「どうやって?」と男子に聞かれて、
「試合のデータを選手ごとにつけてもらえばいいじゃない。後輩に頼んで、試合の内容と感想を添えてね。それで十分だよ。できる男子もいると思うよ。学級委員とかいないの?」と聞いたら、一人いたので、
「もう一人、そういう経験者に頼めば? その代わり、何を書かれてもお互いに絶対に文句は言わないと誓ってからね」
「それはあるな」と掛布君が考えていた。
「詩織ちゃんがいらついていない?」
「眠いから、眠らせて」と言ったら、みんなが笑っていた。

 帰るときは男子がうるさかった。
「ノートを各自持って来いよ」と言い合っていて、
「俺ってそう見えるんだ?」とショックを受けている男子もいた。
「なるほどね、いい手かも。女子もやろうよ」と緑ちゃんが言いだして、
「客観的につけられる人でないと無理じゃないかな。しこりが残るよ。それにその段階じゃないなあ。ペアの意思の疎通から始めないと」
「そういう詩織ちゃんの所はできてるの?」と緑ちゃんにからかわれて、
「あら、これでもお互いに長所も短所も、それぞれの目標も分かっているわよ。直してほしい点などを試合ごとに話し合っているからね」と百井さんが素っ気無く言って、帰って行った。
「なるほど、意外だね」
「とにかく、ノートは各自やりたい人がやってもらう事にするわ。一年生も協力してね」と小平さんが頼んでいた。拓海君に今日の報告をしたら、
「それで、うるさいんだな」と言ったので、
「言ったとおりにしたよ。あれで大丈夫かなあ?」
「バスケ部はあれで黙ったヤツが多い」と言ったので、なるほどなあと思いながら聞いていた。シュートの外した数とか細かくノートにつけているらしい。バスケ部って色々やってるよね。それに比べたらテニス部はまだまだなんだなと考えていた。

 次の日からも、あちこちで言い合いをしていた。特に男子が。
「うるさい、今日は絶対に勝つ」と言い合っていて、なんだか、やっぱりまだまだだよねと見ていた。
「掛布先輩に勝たないとどうしようもないよな」と結城君が言いだしていて、木下君がなんだか蚊帳≪かや≫の外になっていた。
「お前ら、少しは聞けよ」と怒鳴っても、知らん顔で男子が言い合っていて、
「あれで上手く行くんですか?」と後輩が心配していた。
「ほっとこう。その段階になるまでね」
「段階って?」と後輩が聞いてきて、
「聞く耳を持つかどうか」と言ったら、なぜか一之瀬さんがじっと見ていた。そう言えば、あれから、意見を言わなくなったなと思った。前と違って黙って見ている気がする。時々睨んでいるのは小平さんの方が多くなり、私の方はじっと見ているのだ。不気味だなあと思いながら、みんながやりあうのと聞いていた。

 ノートを見ながら、あちこちで談義しているのを聞きながらぼんやりしていた。英語で目が回る。英会話と英語の授業となんだかこんがらがりそうだよね。英語の授業で話せるようにならないのはどうしてだろう? 会話って聞き取りもできないといけないのに、テープで聞いてもちんぷんかんぷんだった。あれでも初心者用のテープのはずなのに。高校留学予定者用のテープってないかな……と考えていて、
「だから、どう思う?」と聞かれていたのに気づかなかった。
「ストップ、眠たい」とうつむいた。
「ただいまスランプ中って感じだね」と千沙ちゃんに言われた。
「眠いから寝させて」
「何でそこまで眠いんだ? 夜にデートしているのか?」とそばにいた男子が聞いてきて、
「やだー!」と緑ちゃんが男子を叩いていた。
「デートも何も家事があるから無理だよ。その後、勉強」
「え?」と一之瀬さんが驚いていた。
「家事やってたんだっけ? お母さんいないと大変だね」
「あの派手は母親だろう? でも、いいよな。あの車は」
「ああ、あれは会社の車で、もう返したんだって」
「会社?」と一之瀬さんが驚いていた。
「仕事の都合でこっちに戻ってきただけ、今は他府県に帰ってしまったからね」
「他府県ってどこだよ?」海外とは言いづらいな。
「遠く」
「へえ、北海道ぐらいか?」
「さあ、それぐらいなのかなあ?」もっと遠いけれどね。
「沖縄とか?」「派手だったよな」「借りものの自動車なのか、うらやましい」
「慌しかったけれどね。いいから寝させて。父親が遅く帰ってくるから夕食の後片付けが遅くなって眠いんだよね。あの人は洗濯もカゴに入れてくれないし」
「カゴ?」
「洗濯って、そう言われたら、全部やってるのか?」と男子に聞かれて、
「そう言われるとそうなるよね。大変だ。勉強する時間って遅くなっちゃうね」と美鈴ちゃんに聞かれて、
「眠い」と言ったら、みんなが笑っていた。

 お弁当を食べたあと、拓海君に呼び止められて、一之瀬さんは振り向いて、
「なに?」と素っ気無く言った。
「なにじゃない。課題はどうした?」
「課題って何よ」
「相良さんと話し合いはしたのか? 合わせてやっていないように見えるのはどういうことだ?」と聞かれて、思い出したようにハッ……となっていた。
「お前って、つくづく前のことを覚えていないタイプだな。学習しないのか?」
「そんなこと言われても、忘れちゃうもの」
「だから、散々ひどいことをしても忘れられるってことか? でも、自分がされたことはしっかり覚えていそうだよな」と言われて一之瀬さんは嫌そうな顔をしていた。
「もう、いいでしょう? どうせ、私のことなんて興味がないなんて、はっきり言ってくれて。嫌なら話しかけなければいいでしょう」と拗ねるように言った。
「お前ってつくづく強気で素直さが足りないよな。そこも短所だよ。気づけ」
「短所って」
「短所が見えていないとカバーのしようがない。長所を伸ばすにしても聞く耳を持ってくれないとどうしようもないんだしね」
「あの人も同じことを言ってたわ」
「詩織か?」と聞かれて嫌な顔をしていた。
「どうして、そこまで嫌な顔をする」
「あの子を選んだ理由が納得できないからよ」
「納得ね」
「どうして私じゃいけないの。私にそれだけアドバイスしてくれて、あなたはそれだけ私のことを」
「お前、何か勘違いしていないか?」
「勘違い?」
「お前をアドバイスする理由だよ」
「だって、それは気になってるからでしょう? 私のことを思ってくれて」と言われて、拓海君は頭を抱えていた。
「お前を心配しているわけじゃないさ。しいて言うならテニス部全体。むしろ、詩織のためかもな。これ以上、あいつに何か起こったら、あの先輩にどやされる」
「え?」
「約束したんだよ。絶対に守れってね。俺の責任だと言われたぞ。お前のことはね」
「どの先輩よ?」
「変態元会長」
「だって、あの人は、元恋人なんて嘘を言っていて、どうせ、あなたに振られたから腹いせに付き合いだして」
「お前、つくづく自分本位だな。そんな理由であいつがあの先輩と付き合うかよ。あの先輩も同じだ。ああ見えて、心配していたのは本当だ。何しろ、俺に全教科で100点取れなんて注文をつけてきた。それぐらい努力してあいつの事も守れってね」
「どうして守る必要があるのよ」
「そういう約束をしたんだ。昔ね」
「昔って?」
「お前には関係ないさ。とにかく、お前も探せよ。誰か本当にお前だけを見てくれる男をね」
「あなたはどうして、してくれないのよ。あっちばかり見て」
「お前、つくづく呆れるな。どうしてそこまで俺にこだわる」
「褒めてくれたじゃない。認めてくれる事も言ってくれたじゃない。才能があるって、だから、私は。そういう人は今は誰もいないもの。だからこそ、私にはあなたが必要で」
「お前に必要なら俺はお前の事を好きにならないといけないのか?」
「え?」
「お前、反対にお前が必要だから、『絶対好きになれ』と好きになれそうもない男に言われて、できるのか?」
「それは……」
「そうだな、あの辺の男子に言われて、好きになれるのか?」とテニス部を指差していた。ロザリーが囲まれて笑っていて、それを見て苦い顔をしながら、
「できないわよ。タイプじゃないし、合っていないし、レベルが違う」
「お前はつくづく強気だな。お前、あの辺りを100として、お前はどれぐらいだよ」
「300はあるわ」
「すごい強気。俺は?」
「そうね、もう少し上、320」
「お前ってつくづく自己評価が高いな。俺から見たら、あいつらの方が上だ。お前はロザリーと同じぐらいだよ」
「どこがなのよ」
「才能だけじゃ駄目だ。あっちはやる気と強気さと前向きさが他のヤツらより抜きん出ている。最も波が激しくて、男子と話している時間も多すぎるけれどね。じゃあ、聞いてやるよ。お前が100だとして、テニス部女子のランクをつけろよ」
「そうね。小平さんがせいぜい80で、あとは50いけばいいところ」
「つくづく強気。判断基準の物差しが運動能力だけならそうなるだろうな。でも、総合ではお前は50以下だ。小平が100だとしたら、湯島さんと相良さんと百井さん、詩織が80、残りは70以下だ。でも、お前は50がせいぜいだ」
「何よそれ。納得できないわ」
「掛布に聞いてみろ。もしくは小平さんか結城に聞けば大体同じことを言うさ。総合って意味が分かっているか? 体力のほかにも、分析力、冷静な判断力などの精神面も含まれるんだよ。今のお前はそこが30も行けばいいほうだ。よく考えろよ。あきれるやつ。課題を忘れるなよ。合わせるんだ。あとは全員の性格と長所短所を見極めろ」と言って、行ってしまったため、気に入らなさそうに見ていた。

「男子って、すごいね」とノートを覗き込んだ緑ちゃんが言い出した。
「総合評価はしていないね。ABCによるランクを増やしたほうがいいよ。それにつけるなら、前衛、後衛で分けたほうが」と一年生に言った。
「え、そうなんですか?」と聞かれて、
「そのほうがありがたいかもな」と掛布君が寄って来た。どこまで細かくするかを話し合っていて、
「あまり細かくしすぎても戸惑わないかな?」と言ったら、
「それはあるな。後衛、前衛で内容を変えよう」と掛布君が戻って行った。
「こうやって見ると一目瞭然だよな。サーブとレシーブの入る率が人によって、かなり違う」
「俺、もっと練習しよう」と言いだして、
「データって大事ですよ」と結城君も見に来た。
「一人で見切れませんよ」とその男子が言いだして、
「このノートを参考に一年生や手の空いている人で手分けしたほうが良さそうだよ」と言ったら、何人かが手伝っていた。
「すっかり、詩織ちゃんのペースだね」
「つくづく、思い知らされるなあ」と後輩の声がして、
「なにが?」と振り向いたら、前園さんが睨んでいて、でも、一之瀬さんは何か考え込んでいて、小平さんたちは自分たちのノートを見ながら湯島さんや千沙ちゃんと話し合っていた。

「前園さんが睨むのはなぜだと思う?」と拓海君に聞いたら、笑い出した。
「あの子の基準って多分、勉強だぞ」
「え?」
「だと思う。そうなると学年一番のあの変態会長なら十分だろう?」
「基準って人それぞれあるのかな? 好きになる部分って人それぞれだよね。顔とか、良く分からないな」
「ああ、それね。俺も女の子は良く分からないよ。だって、コロコロ変わるだろう? アイドルの名前も次から次へと変わって、下敷きだってシールだって変わっていたりする。俺はさすがにそれは理解できないからね」
「そう言えば、一之瀬さんもそうだったかも。今は知らないなあ。前まで気が多くて、あちこちのカッコいい男子の名前を上げてたよ」
「ああ、それね。実はバスケ部の女子に聞いてみたんだよ。『どうして、あそこまで俺にこだわるのかが良く分からない』と言ったら、教えてくれた子がいたよ」
「なにを?」
「『彼女に取って、今まではただ騒いでいただけで、そこまで本気じゃなかったのかも』とね。もちろん、自分から積極的に話すタイプだけれども、相手がその気になったことは一度もないそうだ。やはり、少し困っていたらしい」
「どうして?」
「『勝気で強気なところが好きだ』と言える男子は意外と少ないぞ。俺はそれだけならミコと同じで悪くはないとは思うが、あいつは意地も悪く性格も悪いぞ。変な噂は流す、嫌味は言う。そういうのは男子は見て見ぬ振りをしながら、でも、好きにはならないからね。さすがにね」
「そう言われるとそうだよね。ミコちゃんはさっぱりしているからね」
「前までは猫をかぶっていたらしいが、お前に色々嫌がらせした噂が一気に流れて知らないヤツのほうが少ないんじゃないかって話だ。あの本宮でさえ敬遠していたらしいぞ」
「へえ、意外だね」
「そうだよな。あいつが断ったなんて聞いたことがないからね。あちこち、それなりに対応していてね。でも、さすがにあそこまでいっぱい出てきて、男子も逃げてる態度が出てきて、焦ってるのかもな」
「何に?」
「自分でも、もてあましているのかもね。でも、どうしていいのかわかっていないんだよ。『本気で誰かに認めてもらいたいと思い始めているから俺にはこだわっている』と言っていた子もいたし、『お前に負けたくないっていう、負けず嫌いから来ている』と言う子もいた。ただ、一人、別のことを指摘していたよ」
「なに?」
「『認めてほしいレベルの相手だからじゃないかな』と言っていたよ。小学生の同じクラスの子でクラスの先生によく話しかけて、褒められていたらしいよ。そうなるとあいつはかなり満足していて、よりそばに寄って行っていたらしいぞ。部活の顧問も女の先生で同じように褒められたくてそばに寄っていき、中心選手になるために努力していたと言っていた。もっとも、努力の方向は『練習を真面目にやる事よりも、キャプテンと先生と先輩にゴマすりに忙しかった』と言う意見もあったけれど」
「女の子ってすごく見てるんだね?」
「お前はつくづく疎いなあ。口に出さないだけでしっかり観察型は意外と多いぞ。お前も同じだろう」そう言われるとそうかもしれないなあ。昔はあまり見ていなかったけれど、拓海君やあの先輩の影響で、へえ、そういう考え方もあるんだ……と思ったから、最近は見ているのかもしれないな。
「恋愛というより、褒めてくれる相手、認めてくれる相手が必要なんだろうな。本来、親や先生や友達に求めないといけない部分が全部俺に来てるのかも。だから、お前は気に入らないし、認められないだろうって結論付けた」
「なるほどね。なんだか、困っちゃうね。永峯君じゃ駄目なの?」
「あいつはその部分では弱い。結論を出すのが遅い上、総合的にしかもあいつが言ってほしくないことまで直球で言われてみろ。それが言ってほしいことじゃないんだから、無理だよ。言ってほしいことは、褒めてくれるところと直すべき部分だ。あの男にそれができるとは思えないよな」
「言われてみるとそうだね。困ったね」
「誰か好きになればいいんだ」
「でも、そんな都合のいい相手」
「馬鹿、そういう部分も全部超越≪ちょうえつ≫するぐらい好きになれる相手なら関係なくなるさ。条件で選んでいるうちは無理だ」
「条件ってやっぱりカッコいい人の方がいいのはちょっとわかるなあ」
「お前もなのか?」
「え、やっぱり自分に足りない部分は憧れるよ。スポーツでがんばっていたり、勉強もできたり、人望があったり、私はその部分が弱いからなあ」
「お前はそういうところが困るよな。自分で身につけろ。憧れてるだけじゃ駄目だぞ」
「現在、改造中って言ってるでしょう」
「いつまで掛かるやら」
「がんばります」と言ったら、また笑っていた。

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