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女子更衣室の血

 拓海君の嫌な予感の方が当たってしまった。先生ももてあましている態度に見えてしまった。生徒のほうも、あちこちでひそひそ言われていて、処分が決まっていないため、中途半端な状態のままほっておいてしまったせいで、よけいな噂がどんどん流れ出した。そうなると止めるのも難しくなり、内藤さんの噂とともに悪行の数々がいっぱい出てきてしまい、廊下を歩いていても、目線が凄かったようで、それを面白おかしく三井さんが言いふらしていて、人の不幸が面白いんだろうか?……とちょっと呆れてしまった。
「でもさあ、自業自得じゃん」
「テニス部は気の毒だよね。下手したら、試合だってね」とそばで言われて、何も言えずに聞いていた。顧問はあまり顔を出していないし、こういう時に意見をはっきり言うロザリーもあまり出てこなくなり、緑ちゃんの独壇場≪どくだんじょう≫になっていて、田中君と面白おかしく言い合い、小平さんがたしなめるというのを繰り返していた。
「俺たちはそれどころじゃないのに」と勉強をしている男子もいて、模試もあるし、試合もあるしと考えていたら、
「ほっとけばいいんだ」と言う人も多くなっていった。

 保護者会が行われる前は、どこか騒然としていた。先生たちは慌しくて落ち着きがなく、生徒にもその雰囲気が伝わって、どことなく居心地が悪い状態で授業を受けていた。
「佐倉」と当てられてしまい、英語を読み始めて、
「上手だな」と言われてしまい、少しは練習の成果が出ているのかもしれないなと思った。
「詩織ちゃんは英語は上手に読めてうらやましいですわ。私はどうも苦手ですの」と碧子さんが言ったので、
「そう言われてもね」と笑っていた。
「遠足って、春から秋に変更なんだろう? それより、修学旅行の班決めをそろそろ考えておけよ」と本郷君が命令するように言って、離れたあと、
「あの人の言い方は嫌いだなあ」と一人の子がつぶやいて、そう思ってるんだなと聞いていた。
 保護者会が行われている間も、緑ちゃんがあれこれ想像でものを言って、みんなが眉をしかめていても、田中君と2人でふざけていて、さすがに湯島さんまでが、
「そういうことを言っていると、本当に出場停止になるよ」と言ったため、慌てて口をつぐんでいて、でも、誰も笑う人もいなかった。
 帰る時に拓海君に相談したけれど、
「一応、戸狩とミコの親にそれとなく事情は話してあるけれど、無理だろうな」
「どうして?」
「あれ以外にも尾ひれが付きすぎて、収拾が付かないらしいぞ。身から出たさびだから、仕方ないかもしれないけれどね」
「廊下を歩いている時にじろじろ見られていて、睨んでいたよ」
「もう、無理だぞ。しばらくはそうなる。行事になればそれどころじゃなくなるさ」
「行事って、テストとか模試?」
「ああ、そうだな。それより、お前、英語の勉強しているのか?」
「ああ、それね。親との約束なの。テストでどれくらいの点数取るのかも決められちゃった」
「お互いに約束したんだな」
「まさかと思うけれど、全教科100点取る気じゃないでしょうね?」
「そこまではね。でも、がんばるつもりだよ」
「無理しないでね」
「無理はそのうちしないとね」
「なんだか、せわしいよね。3年生って大変だ」
「でも、仕方ないさ。学校ってそういうところだ」
「でもなあ。なんだか、それだけじゃ味気ない」
「だから、こうやって一緒に帰ってるんだろう?」と言われてしまい、恥かしくなった。
「そう言えば、クラスにいる時になんだか変な顔で見る人がいるよね」
「ああ、あれはバスケ部だよ。お前と付き合ってるのかどうか聞かれてね」
「どう答えたの?」
「付き合ってると言っておいたよ」
「なんだか困るなあ」
「しょうがないさ。バレバレなのに隠すのか?」
「バレバレなんだ?」
「それはそうだな。ミコが幼馴染なのに付き合えないってはっきり言ったら、そばにいたらしくて、怒られてね、それから話がそっちに流れた」
「ミコちゃんのどこが駄目なのよ。あれだけ綺麗ではっきりものを言って」
「お前なあ。普通の男子はあそこまでできがいいと敬遠するんだ。あいつに勝てると思うか?」
「勝たないといけないの?」
「それはあるぞ。男子のほうが少しは上でいたいんだよ。面子《めんつ》だね」
「変なの。でも、私たちみたいに差がありすぎるのも問題だよね」
「お前は卑屈になるな。一之瀬とつくづく逆だな。テストの点数や運動神経だけでその人の個性を計るのは先生だけにしてくれよ。そんなのより大事なものがあるというのに」
「なに?」
「自分で考えろよ。その部分でほとんどが惹かれるんだよ。弘通にしろ、あの先輩にしろ、あいつにしろ」
「あいつ?」
「そっちはいいよ」
「それにそこに先輩はいれないでよ。あれは契約だし」
「契約ね。お前、本当にそれだけであの先輩が付き合ったと思うのか?」
「それは違うだろうけれどね。相性も大事だったらしいよ。『うるさいことは言わない、あれこれ指図しないタイプの方が好都合。後は自分に絶対ほれたりしない』と言い切っていた。そこはしっかりうなずいたら、なぜか叩かれた」と言ったら、笑っていた。
「それはあるぞ。自分で言うならまだしも相手にはっきり、『好きにならないと思う』と言われたら面白くないのは確かだね」
「あの言葉が強烈過ぎて好きになれないなあ。一生かかっても、あの先輩を男として見られる日が来るとは思えない」
「そういうものなのか?」
「だと思う。だって、その前まで小学生だったんだよ? 中学生のなりたてに聞くとショックが大きすぎてね」
「それはあるかもな。免疫がない時にそういうことを言われると、トラウマになるかもね」
「だから、あの先輩だけは好きになることはないな。いくら生徒会長になろうが、いくら大臣になろうとも」
「大臣?」
「本人がそう言ってたよ。目指せ大臣計画、その2って言ってたけれど、よく分からない」
「あの人らしいよな」と拓海君が笑っていた。

 次の日、ミコちゃんと話していて、
「さすがに大激論になったんだって」と言ったので、やっぱりなあと聞いていた。
「それで、もめにもめて、あそこの親が反論しまくったため、却って反感を買って、よけいにひどくなり、処分は改めて発表と言ってはいたらしいけれど、出校停止処分は決定らしいよ。ただ、内藤さんと一緒にするか別にするかでもめてるって」
「どうして?」
「女子更衣室の血の話はどこまで聞いた?」
「女子更衣室の壁に血が付いていて、その血は当時の一年生のかわいい子のもので……と言うところが本当みたいだけれど、後は色々な説に分かれてたよ」
「なるほどね。実はその続きの説明がちょっと腑に落ちない部分が多いらしいよ。一応、親に聞いたところによると、その一年生を呼び出して、言い合いになり、もみあううちに相手の頭が女子更衣室の壁に当たり、あそこに血が付いたと言っているらしいの。それで、その場にいたのが、落合さん、山田さん、内藤さん、大串さん、一之瀬の5人。最初はもっといたらしいの。でも、把握できていないらしいよ。逃げた人もいて、関係者なのか良く分からないらしい。それで、相手が嫌がっているのに色々言いがかりをつけていて、そういうことになったんだって。但し、認めたのが内藤だけ。大串さんと一之瀬はその場にはいなかったと言い張り、落合さんと山田さんはもっと人数がいたし、顔をぶつけたのは内藤さんで止める間もなくてとか言ったらしくてね」落合さんも山田さんも先生に反抗的な態度のグループにいる女の先輩として有名で、佐分利君たちとよく集まっていると言う噂は聞いていた。
「だって、落合さんと山田さんは卒業してしまったんじゃないの?」
「そうだけれどね。これからの進路で困るからね」
「そうなんだ?」
「それに私立も落ちたぐらいだからひねくれてるかもね」
「落ちた?」
「茶色のパーマを当てたあの髪で受験する訳に行かなくて急遽直したらしいけれど、同じ学校に行かせたくなかった親からばれたんじゃないかって噂」
「公立にいったんだ?」
「いけると思う?」と聞かれて、
「え?」とびっくりした。
「受かる学校がないって話だよ。義務教育じゃないんだからね」そう言われるとそうか。
「じゃあ、今は?」
「専門学校に入るために勉強中って聞いたけれど、無理だよ。真面目に行くとは思えないけれどね」と言ったので、色々あるなあと聞いていた。
「とにかく、三者三様のことを言っていて、とてもじゃないけれど、誰が本当なのかはわからなかったけれど、目撃者が出てね。狙われた女の子の証言と合わせると、卒業生2人と内藤さんと大串さんと一之瀬はその場にいて、一方的に言いがかりをつけて、嫌がっているのに、手で顔を女子更衣室の壁に押し付けて怪我をさせたという話になるらしいよ」
「目撃者はどうやって見たの? だって、あそこの女子更衣室は覘けるような窓なんて」
「だから、声を聞いたんだって。悲鳴とか向こうの声をね。そして逃げる人数と顔ぶれを覚えていたらしいよ」
「それがその5人だったんだね」
「でも、大串さんは途中で止めたと言い張って、一之瀬にいたってはその場にいなかったと言い張った。でも、それが今頃出てきちゃったらしい」
「どうして?」
「内藤さんがちょっとね」
「まだあるの?」
「いっぱいあるよ。あの子ね。ある男子と付き合っていて、その男子がちょっかい出す相手に色々嫌がらせしてばかりいるの。それが、この間、また出てきて、それで、そっちの話も流れちゃったの。一之瀬の方もテニス部での悪行が流れているからね。それがテニス部の後輩の親の耳に届き、PTAの方で問題にされてしまいという次第」
「そうだったんだ? 困ったね」
「退部になるかもね」
「え、でも」
「知らないの? その後輩の親がさすがに『どう処分するんですか?』と、柳沢にかけあったらしいよ。もう、かばえるような状態じゃない」
「じゃあ、辞めさせるの?」
「当然だよ。人には散々追い出すようなことをしておいて、自分だけ残るのはね。それに残れたとして、後輩の親が納得すると思う?」
「困っちゃったね」と考えていた。

 教室の中も騒然としていて、一之瀬さんがどうなるかを勝手に予想していた。
「無理だよ。出校停止処分、テニス部は追放」と言っている子もいて、大方の予想はそうなっていた。
 昼休みまでに、そういう話がどんどん流れて、内藤さんの数々に事件が流れ出し、落合さんたちのしてきたことまで一気に流れていた。「裏では密かに流れていた話を堂々とするようになっただけだよね」と言っている子もいた。
 昼休みに湯島さんと小平さんが私の教室にやってきて、テニス部で話し合いをしようと言われてうなずいた。小平さんは千沙ちゃんの教室に行くと言ったので、一緒に付いて行った。
「そうだね。そのほうがいいね。このままじゃ」と千沙ちゃんが心配そうで、美鈴ちゃんも隣の教室からやってきて、
「なんだか騒然としていて、何度も聞かれたけれど、困るよね」と言ったので、やはりそうなんだなと黙って聞いていた。
「覚悟を決めないといけないのかもしれない」と小平さんが言ったので、
「それはどういう?」と聞き返したけれど、苦い顔をしていて、でも、誰も何も言わなかった。後輩とも話し合おうという結論で教室に戻る事になった。戻るとき、
「ああ、あなた」と明るく声をかけられた。例の美人、芥川さんがニコニコしながら見ていた。これだけ、浮き足立っている雰囲気に合わないぐらい、まったく意に介していないようで、うらやましいなと見てしまった。
「顔を明るくしないとさ」と言ったので、確かにその通りだけれどねと考えていたら、
「それより、話をしようよ。もっとね。外国に行くなら早い方がいいし」と言ったので、
「いつか行くの?」と聞いたら、
「夏休みにお金を貯めて行く予定」と言ったのですごいなと思った。
「そう」
「佐倉はどうするの? 高校から?」と聞かれて、黙った。
「なに?」と聞き返されて、
「その余裕が今はないから、また今度ね」と言ったら、
「何、言ってるの。こういうときだからこそ、そういう明るい話題をしないとね」と言われてしまい、前向きだなあとその大きな目を見てしまった。

 ピアノの音が聞こえたので、またいるのかなと思いながら歩いていた。音楽委員だからって、先生の雑用まで頼まれたくないなと思いながら荷物を置いたあと、覗き込んだら、案の定彼がピアノを弾いていた。
「綺麗な曲だなあ」と言ったら、笑っていて、やめてしまったので、
「もっと聞きたい」と言ったら、
「意外とわがままだ」と笑っていて、弾いてくれた。
「癒されるなあ。嫌な事が続いたから、よけいにそう思う」と終わったあとに言ったら、
「ああ、一之瀬ね。無理だよ。去年からひどかったから。目の前で見ていて、変な人だと思った。ああいう子は好きにはなれない」
「同じクラスだったんだ?」
「ああ、そうだけれどね。ああいうやり方は好きじゃない」
「そう」
「違うクラスになれてほっとしたよ」
「こっちは同じ部活だから逃げられない」と言ったら笑っていて、
「どうせ辞めさせられるんだろう? テニス部の子が怒っていた。『私たちにもとばっちりが』と言っていたよ」
「だれかいたっけ?」
「前園さんと湯島さんがいる。後、確か部長の子もね」湯島さんに違いない。確かに副部長なら怒るのも当然だろうね。
「前園さんはどうも好きになれない」
「え?」
「得体が知れない。勉強ができると、人をバカにする傾向にあるのかもしれないが、そういうのは嫌いだから」
「好き嫌いが激しいんだね?」
「そうかもな。嫌いなものばかりだ」
「どうして?」
「納得できない事だらけ、自分の意見を押し付けて間違っていないと主張し、そういうのは好きじゃない」と横を向いた。
「だから、ピアノを弾いているの?」
「そうだろうな。お前も同じ理由で外国に行くんだろ?」と聞かれて唖然とした。
「どうして知ってるの? 誰にも言っていないのに」
「ああ、それは通りかかったから。あの衝立の後ろにちょうどいたら聞こえただけ。『ヒアリングをがんばらないと』とか言っていた」なるほど、先生に相談していたときだな。応接セットの横に衝立があったのを思い出した。少し離れていたけれど聞こえたらしい。
「できれば、他の人には」
「ああ言わない。言ってほしくないようなことを言ってただろう?」
「そうしてください」
「ふーん。留学するのか?」
「留学と言うより、親のそばに行くだけ」
「親の仕事の都合なのか?」
「違う、向こうで暮らしているの」
「へえ、似たようなものだな」
「え?」
「俺も親が向こうで仕事をしていてね。だから、一応、帰国子女だ」
「そうなんだ? すごいね」
「向こうじゃ、色々大変だぞ。言いたいこともはっきり言うけれど、人種の問題もある」
「そう」
「ふーん。まだ、覚悟がなさそうだな」
「覚悟も何も、そこの部分を直したくて行くの」
「どうして?」
「母に言われた。気の弱さはこれから困るって。片親だから就職したらその部分で苦労するだろうってはっきり言われたの」
「片親ね。日本的な発想だ。うちなんか、複数いるけれどね」
「なにが?」
「母親が」と言いながら、行ってしまい、冗談なんだろうか?……と後姿を見てしまった。

 部活に遅れていったら、にらまれてしまった。
「遅いよ。もめちゃって」と緑ちゃんに言われて、
「どういう意見があるの?」と聞いたら、退部は仕方ないという人、そこまでしなくても謹慎期間もあったので、大目に見たらと言う意見、とりあえず試合は出さずに本人の様子を確認したいという意見に分かれているようだ。
「私は反対です。あの先輩とこのままやっていくなんて」と後輩が言いだして、後輩のほとんどがうなずいていたので、そう思っていたんだなと気づいた。
「どうする?」とみんなが小平さんに聞いていて、
「決を一応取るわ」と言ったので、手を上げさせられた。でも、退部が2年生に圧倒的に多くて、様子を見ようというのは3年生に多かった。意外だったのは前園さんで退部の方に手を上げていて、相良さんも上げていたため、驚いてしまった。百井さんは、
「試合に出られなくなるなら、辞めてもらいたい」と言ったため、かなりの人がうなずいていて、そう思ってもしょうがないのかもしれないなと思った。
「そうね。それは私も思っているわ」と小平さんまで言ったので、流れが変わってきているなと思った。男子が寄ってきて意見を聞いたあと、
「辞めさせてくれればすっきりする」とはっきり言ったため、困ってしまった。
「でも」と言ったら、
「佐倉先輩が一番の被害者でしょう?」と結城君がなじるように言った。
「それはそうだけれどね、彼女は一応執行猶予期間中の扱いじゃない? これから、まだ、がんばろうとしていて」
「でも、問題を起こしたんだから、即退部になってもしかたないよ」
「でも、昔の事件でしょう? しかも実際に何が起こったのかは本人の口から説明を受けたい」と言ったら、みんなが黙った。
「理由はどうあれ、本人が起こした事には代わりないよ」と男子が怒っていて、
「そうよね、迷惑な話」と相良さんまで言い出したため、困ってしまった。
「今、現在の心境を確かめてからでも」と言ったら、
「そうね。それは私も確かめたいわ。納得できなければ退部はやむを得ない。そういうことで柳沢先生も交えて一之瀬さんに話を聞きましょう」と小平さんが言って、その場は分かれて練習しだした。
「こうこも怒ってるね」と緑ちゃんが小声で言って、そう言えば意外だったなと思った。室根さんと2人千沙ちゃんのそばに寄ってくるようになり、なんだか複雑だなと見ていた。
 部活の後に、更にあちこちで文句を言っている人も多くて、困った事にならないといいなと見ながら考えてしまった。
「居場所がなくなってからだとやばいかもな」と拓海君まで言い出して、
「でも」
「そういうのは流れがあるぞ。どっちに転んでもおかしくない状態でほって置かれると、さすがに小平さんでも見放すかもね。そういう雰囲気になっていくのは否めない」
「難しいね」
「それはどこのグループでもあるさ。バスケも最初のころと話すやつも違うし、選手も入れ替えはいくらでもね」
「そうなんだね」
「外れたヤツはひねくれるヤツもいるし、がんばるヤツもいるし、複雑だぞ。一之瀬の場合はひねくれすぎてて、今更戻ってきて心を入れ替えますって誰が納得するんだよ」
「どうして?」
「女子更衣室の血ってほとんどの女子は知ってるんだろう?」
「ずっと残ってたの。どうしてかなと思ったら、ふき取ってはいけないと言われてたんでしょう?」
「見せしめでやられたらしいぞ。かなりかわいい子でね。だから、後輩は怖がっていた。当然、そんな先輩が戻ってきてみろ、嫌に決まっているだろう? 追い出した方が楽だぞ」
「それでああいう雰囲気なんだね」
「人間心理ってどっちに転ぶか分からないけれど、主導権を握っているヤツの意見が割と反映されるからね。小平さんとロザリー、加藤さんに、近藤さんの意見で決まるな。結城は納得しないだろうからうるさいだろうしね」
「どうして、あそこまで言うんだろう?」
「お前のためだぞ。多分な」
「どうして?」
「あいかわらず鈍いヤツ」と言われて、意味が分からないなあと見てしまった。

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