26

裏で言うタイプ

 成績表が返された途端、大騒ぎになった。勝手に覘きに行く男子と女子を見て、
「おーい、やめろ」と赤木先生が止めたけれど無駄だった。拓海君はヒョイとかわして、さっさと自分の鞄にしまっていて、でも、根元さんは堂々と見せていて、本郷君は立ち止まっていた。それを覗き込んだ男子が、
「お前、3番じゃないか。なんだ、クラスで一番だと豪語してたくせに」と言ってしまったため、
「へえー」「なんだ」「それでもすごいじゃん」と勝手な感想を周りが言っていて、
「どう……して……?」と本郷君が不本意な感じでショックを受けていた。あちこちうるさくて、
「教えなさいよ」と根元さんが仙道さんに言っていて、仙道さんもなんだかため息をついてうつむいている気がした。あちこちで、
「えー、下がった」「あれだけやったのに」とぼやいていたり騒がしかった。
「えー、模試の結果も参考にして志望校を決めて勉強に励むように。くれぐれも点数を言って歩く事のないように。三井、手越、苦情が出ていた。箱に入っていたので、注意してください。それから、他の生徒も成績やその他で言い争い、点数や成績の事で揉め事は禁止になりました。苦情が多すぎて対処できないのでそれぞれで慎むようにしてください」と言ったため、みんなが驚いていた。
「この間のこともあるかもね。ほら、例のさあ」とそばの女の子が言っていて、私は成績表を見てからしまおうとしたら、
「お、佐倉が意外といい点数だ」と勝手に横から覗き込んで言われてしまって驚いていた。後ろに的内の友達の井尻君がいた。
「やめろって言われたばかりだぞ」と本郷君が見かねて、注意した。
「俺、今来たばかりだもん」と悪びれず答えた。的内君たちの不良グループは教室には遅れてやってくることが多い。授業も時々抜け出していた。
「井尻、成績の事は言いふらしたりしないように。それから覘くことも禁止だ。みんなも気をつけてくれ。受験生なのだから、そういう問題は起こさないように」と先生が繰り返し注意していた。

「なんで、あれだけうるさいの?」と周りの女の子が会話しているのが聞こえた。
「仕方ないよ。苦情の数が一時期増えたじゃない? その中に、成績のこともあったんだって。テストの後に苦情がいっぱい増えたらしいけど、名前が書いてなかったらしくてね」
「なんだか、そういうのって困るよねえ」
「投書しやすいけど、なんだか密告みたいでやだなあ」
「そうでもしないと根にもたれるからだよ。例の人たちみたいになりたくないから」とひそひそ言い合っていた。
「三井、寄るな。お前と同類と思われたくない」と男子が言っているのが聞こえた。
 碧子さんは、最近橋場君と何度か廊下で会っているようで、
「なんだか、あちこちうらやましいなあ」と言いながら、沢口さんたちが戻ってきた。
「何かあった?」と桃子ちゃんが聞いていて、
「本宮君、また申し込まれていたよ。でもさあ、下の学年でくっつく子が多いみたいだなあ。うらやましい。小宮山さんの弟がね、また、申し込まれたんだって」と言ったため、
「へえ、いいね」と桃子ちゃんが笑った。
「進展してないところもあるからいいじゃん。橋場はありえないよな。そう言えば山崎はどうなってるんだ? ちっともそういう雰囲気じゃないよな」と男子がからかった。
「うるさい」と拓海君が素っ気無く言っていて、なぜか浮かない顔をした仙道さんと話をしていた。

 昼休みにトイレに言った帰りに、
「王子、また、百点なんだって。どうして、国語とあそこまで差が」と言っているのが聞こえた。ぐいっと、後ろから肩をもまれて、振り向いたら半井君がいて、そばで噂していた子が逃げるように行ってしまった。
「あいつら、うるさい」
「点数って言ったらいけないと注意されたよ」
「他のクラスはね。Eはうるさすぎて聞いてない連中ばかりだ。的内、一之瀬達がいる。Dも似たようなものだな。佐分利がいるしね。内藤とは引き離すべきだったな」
「え?」
「あの二人の噂は知らないヤツもいなかったというのに、先生も疎いよな」
「どういうこと?」
「ここにも疎い子がいたな。それより、どうだった?」
「なにが?」
「英語の点数」
「一応、それなり」
「それで母親は納得してくれそうか?」
「さあね。受験の勉強もしておいた方がいいのかもね」
「ふーん、決めたのか?」
「まだ。先生にはああ言ったけど、変更するべきなのかもね。でも、その先を考えたら」
「先?」
「色々、考え中。そっちは志望校は決めたの?」
「同じだよ。俺も向こうに行こうかな。こっちは堅苦しくて嫌だね。何で日本に戻ってくるやら、気まぐれな親で疲れるよ」
「そう」
「霧はぼろぼろだったからな」
「何が、ぼろぼろ?」
「成績。お前もがんばれよ。あれじゃあ、向こうに行っても危ないぞ、あいつ」と言って、教室に戻って行った。周りがひそひそ言っていたので、慌てて教室に戻った。
「また、あいつと話す」と拓海君が寄って来た。男子がもめているのが見えて、
「ほっとけ」と私が見ていたら言われてしまった。
「なにか、あったの?」
「あまり言わないほうがいいかもな。成績の事でね。一番だと思ってたヤツが下になっただけ。もっと下のヤツが馬鹿にしたから喧嘩しただけ。それだけのことだ」
「一番は誰だったの?」と聞いたら、拓海君が黙った。
「知ってるの?」
「根元だよ。どうせクラス中知ってるから教えるけど、内緒だぞ」
「そう」
「これで益々勝気さが増すな」
「お前らさあ、それでも学級委員かよ」と遠くで男子がやりあっていて、
「黙れよ」と本郷君が怒鳴っていた。
「お前の成績を言ってから言えよ」と本郷君に言われてしまい、
「ここ、ここ」とクラスの男子が指差した。よりによって成績表が貼られていた。
「あー、いつのまに」
「あれほど言うなって注意を受けて」
「俺は言ってないぞー」とふざけて逃げていた。
「言ってなくても貼ってあれば同じことでしょう」と女子がたしなめていたけれど、
「貼ったのは井尻だから、あいつじゃない」と言ったため、
「どこよ」と探したけれど逃げたあとだった。
「あいつら、呆れるぞ。まったく」と言い合っていた。

 テニス部でも成績の話と志望校の話をしていたけれど、私は黙っていた。
「ねえ、海星? それとも、もっと下?」と緑ちゃんに聞かれて、それでも黙っていた。
「教えてくれてもいいじゃない。点数どうだった? 井尻君が言ってたのは本当?」
「言えないんじゃないの?」と前園さんがばかにするように言ったため、
「やめて」と小平さんが淡々とした口調で止めた。
「そういう話はクラスでも禁止になったでしょう」と湯島さんが呆れていた。
「そう言われても、ちょっとぐらいいいじゃない」と緑ちゃんが軽く言ったら、
「そのちょっとがエスカレートしていじめにつながったと思うわ」とどこか責める口調で言ったため、周りがシーンとなっていた。
「それはあるかもしれない。緑ちゃん、どうして詩織ちゃんの事を、そうやってからかうの?」と千沙ちゃんが止めた。
「え、だって、言いやすいじゃない。言い返さないから」と言ったため、唖然となった。
「その態度が目に余るのよ。2人ともそういうことはやめてください。柳沢先生がこれからは厳しく処分すると言ってました。問題行動を起こした時点で注意や処分があるそうですから」と淡々と言ったため、びっくりした。どこか怒っているようにも見えた。
「あの先生は対応が遅すぎる」となぜか美鈴ちゃんも怒っていて、
「謝れよ。小山内」とそばにいた掛布君が注意していて、緑ちゃんが渋々頭を下げていた。
「前園もだろ」と大和田君が冷めた声で言ったので、ちょっと驚いてしまった。前園さんも渋々の態度で頭を下げていた。
「3人とも処分すればよかったんだ。前の時点でやらないから、未だに反省の色が弱いよな。全然変わってないから、意味ないかもね」と大和田君が冷たく言い放って行ってしまった。
「どうかしたのかな?」と湯島さんが聞いたら、
「一之瀬さんのことでしょうね。半井君とやりあったのはいいけど、テニス部の悪口をいっぱい言っていたらしいから。前園さんもね」と小平さんが困った顔をしていて、
「反省してないなら、やめたらいいのに」と美鈴ちゃんが言いだしてびっくりした。
「心を入れ替えると聞いたから、受け入れたはずなのに、いつのまにか、その態度はすっかりなくなってきているもの。前とは違って、黙っている事はできないと思う。試合をがんばりたいから練習しているのであって、一之瀬さんためのテニス部じゃないわ」と美鈴ちゃんが言いだして、みんなが困ってしまった。
「一年生がやめるようなことだけは避けたいの。二年生も同じ。今度問題が起きたら、困るからね」と小平さんに言われて、さすがの緑ちゃんがしょんぼりうな垂れていた。

 分かれて練習し始めて、一之瀬さんと美鈴ちゃんがもめていた。一之瀬さんは基本ではなく実践の方に混ざっていた。
「納得できないと言ってるだけ。話し合いに応じてくれないと」と美鈴ちゃんに言われて、
「ふん、無駄よ」と一之瀬さんが馬鹿にするような態度だった。確かに目に余るかも。テニスがやりたい、好きだと言ったあの態度はまったく無くなっていた。
「何をしている」と柳沢がそばにやってきて聞いていた。
「近藤の方に賛成だ」と言ってしまったため、一之瀬さんが思いっきり気に入らなさそうな顔をしていた。
「一之瀬、お前、基本に戻れ」と言われていて、さすがにみんながチラチラ見ていて練習が止まってしまった。
「いいか、サーブが入らなくなるのはおまえ自身に問題がある。近藤の言うとおりだ。基本練習ができてないうちに、いきなり実践ばかりしたって無意味だぞ」
「試合になればできるわよ」と一之瀬さんが食って掛かっていた。
「わかってないようだな。もう、次はないと言ったろ。言うことが聞けないなら、今すぐ帰りなさい」と怒られて、一之瀬さんが睨むのをやめた。
「先生」と小平さんが見かねて声をかけたと思ったら、
「練習の邪魔ですから、一之瀬さんは謹慎期間にしてください。反省するまで練習は参加させないで見学ということで」と言ってしまったため、さすがにびっくりしてしまった。
「どう言う事よ、あなたにそんな事を言われたくないわよ」と一之瀬さんが怒鳴った。小平さんは目もあわせずに、
「そうしてください。練習の邪魔です」と言い切っていて、みんながさすがに困った顔になっていて、
「謝った方がいいよ」と千沙ちゃんが取り成していて、
「ふーん」と、気に入らなさそうな声が聞こえて振り向いたら前園さんが冷めた顔をしていた。一之瀬さんは悔しそうな顔をしていたので、仕方なく「先生」と言ったら、全員が一斉に見てきた。
「なんだ?」と先生も困った顔をしていた。
「テストしてください」と言ったら、
「なんだ、それ?」と男子から声が出ていた。
「一之瀬さんのサーブ。10本中5本以上入ったら、基本には戻らなくてもいい。でも、それ以下だったら基本に戻る」
「戻るも戻らないも見学でいいんじゃないのか?」と大和田君が言ったけれど、
「そうしてください」ともう一度言ったら、さすがに先生も、
「仕方ない、やってみろ。後の者は練習を再開しなさい」と柳沢が言った。
「絶対無理だな」「言えてる。あの力の入りすぎじゃ無理だな」と言われていて、一之瀬さんが睨んでいた。
「やるわよ、やればいいんでしょう」と言い放ち、さっさと位置についてから小平さんをにらんで、サーブを打ち始めた。10本打つ間はみんな練習はせずに見守っていた。結局、最後の1本をかろうじて入れて、5本は入っていたけれど、
「失格」と柳沢が言った。
「どうしてよ、約束なら」
「ファーストサーブと言えるのか、あれが? あんなヘナチョコなサーブ、室根と小山内でも返せるぞ。そんな玉はファーストとは言えない」
「ひどい」とそばにいた室根さんがさすがに傷ついていた。
「取れるかなあ?」と緑ちゃんは空気を読まずに言ってしまって、そばの男子に叩かれていた。
「言えてる。わざと弱く打って、無理やり入れてた気がするね」と男子がばかにするように言ったため、
「もう一度、やらせてよ」と一之瀬さんが食い下がった。
「無理だ、今のお前では無理だ。そういうことで基本に戻れ。但し、今日は頭を冷やすために見学してろ。これから、何かあったら見学。そういうことで練習再開」と、柳沢が行ってしまった。
「どうしてよ、どうして、サーブが入らなくなるのよ」と一之瀬さんが怒り出して、
「冷静じゃないからに決まってる。結城、問題点」と掛布君が結城君に聞いた。
「えー、この間言ったじゃないですか。トスの位置、フォームの乱れ。それに尽きます」
「違う」と私が言ったら、男子が一斉に見てきた。
「だってさあ」と何か言いたそうだったけれど、
「フォームは乱れていたけど、それだけじゃない。苛立ちから肩に力が入りすぎる。だから、頭に血がどんどん上って、肩に余分な力が入る。トスの乱れはそこから来る。フォームの崩れも同じ。最初だけ入るということは、崩れてくるのに気づいてないから。フォームの乱れじゃない。肩の力を抜く事を覚えないと」
「それはあるかもなあ」
「言えてるな。お前、木下とちょっとかぶる」と大和田君が言ってしまったため、
「お前ら、こいつだけは一緒にするな」と木下君が抗議していた。

 結局、一之瀬さんは見学と言いながらも、後ろの方で緑ちゃんたちと雑談し始めて、目に余ってしまった。
「あそこは困るな」と男子が言っていたけれど、柳沢も見放した態度だった。
「やめさせたらよかったんだよ。あの性格は直らないみたいだし」と帰る時に男子が言っていた。確かにそうかもしれない。拓海君も見放して、どうしたらいいんだろうなと考えていた。一之瀬さんは腐って帰ってしまい、緑ちゃんも面白くなかったのか一緒に帰ってしまった。
「あの2人、どうするんだろうね」と元川さんが他人事のように前園さんに言ったら、
「来なくてもいいわよ。どうせ、できないわよ。勉強と同じね」と冷たい言い方で小声で言ったのでびっくりしてしまった。
「王子に注意されたくせに、まだ言ってるよ」とそばにいた男子が言ったので、前園さんが驚いて振り向いていた。一番後ろだから誰にも聞かれないと思ったようで、
「え、今のは冗談で」と慌てて訂正していた。
「無駄無駄」と男子が笑っていて、
「え?」と前園さんがさすがに驚いていた。
「お前が裏で言ってる内容は、もうばれてるんだよな。立ち聞きした女子が怖いと言い合っていたから、王子もそれを聞いて注意したんだろう? 表で普通にしていて裏でひどい事を言うタイプだってみんな知ってるからね。今更、取り繕っても遅いってこと」と軽く言われていた。
「そういうこと」と掛布君が笑っていて、近くにいた女の子達がひそひそ言い合っていた。

 テニス部での揉め事を拓海君に相談したら、
「ああ、それね。密かに有名。あの子、裏でしか言わない子だってね。しかも、本人とは平気で話しておきながら、聞いた内容でこき下ろしてばかにする事を言うらしい。一之瀬が話した内容は全部話されているようだ。そのせいで噂が出回ったんだよな。もっとも、間に矢井田が入るからまともに伝わってないけど」と拓海君が教えてくれた。
「結構、性格が悪いって言われているらしいよ。俺も一度注意したかったけど、又聞きだから迂闊な事は言わないほうがいいかと思ってね。知ってる子は多いはずだよ。王子が注意したために、さすがに話題になったから」
「そういう理由だったんだ。彼、あの人のこと、苦手だと言っていて」
「苦手じゃなくて、面と向かって嫌いと言ったらしいぞ。あの王子、結構、きついよな」確かに。
「とにかく、そういう子が混じっている以上は気をつけるしかないさ。そういう陰口を叩く子はいるからね。ただ、普通は残らないんだよな」
「え、どうして?」
「雰囲気が悪くなるだけじゃないか。お互いに猜疑心が芽生え始めるだけだぞ。そういうタイプがいるだけでね。だから、そのうち避けるようになり当たり障りのない程度しか話さなくなるんだよな。バスケもそうだから」
「そう」
「バレーはミコがいるから、そういう子はほとんど残らないよ。テニス部で残ったのは顧問が注意しなかった事と、小平さんがそのままにしてしまったからだろうね。彼女は湯島さんぐらいしか相談してなかっただろう?」そう言われたら、最初はそうだったかも。
「とにかく、そういう子だと割り切って、それなりに付き合っていけばいいさ。それしかないから」
「そうかもしれない。なんだか、怖いね」
「男子にはばれていないと思ってたんだろうな。彼女も認めてほしい気持ちが強いのかもね。それが陰口をたたく事で晴らしているのかもしれないな。でも、俺にはどうしても理解できない。近藤さんと同じ気持ちだな」
「え?」
「クラスで言っていたらしいよ。一之瀬さんが納得できない。前と同じ態度になってきたことが理解できないらしい。試合にもある程度の結果を残したい、テニス部でもそれなりに仲を修復してから引退したいと言っていた。それはこのままだと難しいと困っていたようだ」
「そう」
「でも、無理だよな。小平さんががんばっても、一之瀬達の性格は直らないし、ロザリーはたまにしか参加しないし」
「そう言えば、あまり来ない」
「友達と休日のテニスを楽しむ事に忙しいそうだ。テニス部では試合に出られないし、楽しくないと言っていたようだな」
「そう、そういう理由なんだね」
「ロザリーの気持ちも分かるよ。結局、一之瀬達に振り回されている気がするからね。誰か強く言うにしても、今までのさばってきたから、切り替えが上手くいってないから」
「小平さんが変わって来たのはそのためなのかな?」
「違う。見放したんだよ。もうね」
「え、そうなの?」
「いくら注意しても、あの態度だ。だから、無理だよ。一度問題を起こしても心を入れ替えたのなら納得するが、前とほとんど変わってないと思うからな。王子の言うとおり、そばに寄りたくないという気持ちかもね」
「えー、それはちょっと」
「仕方ないさ」
「困ったね」と考えていた。

 やむを得ず、楢節先輩に電話を掛けたら出てくれた。相談したら、
「ふーん、どういう風の吹き回しかと思ったら、そんな相談か? 恋愛相談なら受け付けると言ったろ」と楢節さんがあいかわらずの口調で言ったので、
「もう、ほとんどが見放してしまって聞く人が先輩だけなんですから、いい知恵を」
「知恵ね。じゃあ、一言だけ。引き離せ」
「え?」
「だから、引き離せ。一之瀬の周りにいる女子、全員、味方を引き離せ」
「えー、どうやって?」
「加藤に頼め。それで上手くいく。それから前園は本宮か誰か頭のいいスマートな男に頼め」
「なんですか、それ?」
「好みのタイプってこと。小山内は掛布。それでいける」
「はあ」
「それでも駄目なら、諦めろ。以上、蘭王の星、楢漬ちゃんでした」
「おーい」
「味方がいなくなれば変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。やるだけやってみろ。一人だけだとそこまで強くないぞ、あいつ。誰かと悪口を言い合うのが得意なタイプは誰もいなくなったら弱い場合があるからね。そういうことで、チャオ」
「チャオ?」と聞いたけど、電話は切れていた。うーん、それで効目があるのかなあ? と半信半疑だった。

back|next

home > メモワール2

inserted by FC2 system