38

取っ組み合い

 ため息をついていたら、
「球技大会のメンバーってさ。誰が入れ替えするの?」と三井さんが聞いた。みんなが根元さんを見たけれど、
「あら、バレーは選手がいるから。その人たちでいいじゃない。バスケは?」と聞かれていて、
「補欠しかいないよ。ど下手なやつならこの辺に」と男子のバスケ部員が指差していて、手越さんがうつむいていた。
「そういう言い方は」と仙道さんが止めたけれど、
「あら、本当のことでしょ。人のことは言っておいて、自分が言われたくなかったら、金輪際言わないことね」と根元さんがさらっと言って、なぜか男子が拍手していた。
「すごい」「さすがだ」と言われて、
「当然でしょ。自分は傷つくけど、人は傷つかないって、それって自己中じゃない」と言いきられて、
「そう言われたら、そうだよな」と男子が考えていて、さすがに三井さんと手越さんが何も言えなくなっていた。
「それより、メンバー表ってどこ?」と仙道さんに聞いていて、慌てて机に戻っていた。
「根元の方が学級委員に向いてるんじゃないのか?」と小声で男子が言っているのが聞こえて、
「それより男子の委員を変えてくれ」と言った時、本郷君が後ろにいたため、
「なんだよ」と怒り出してしまい、
「別にいいだろ。みんな内心そう思っているさ。あちこちで裏で言ってるのに気づかなかったのか?」
「そういう事を言ってたのか?」と周りを睨んでいて、
「お前こそ、高飛車なんだよ」
「なんだと、もう一度言ってみろ」と本郷君が怒り出して、つかみ合いになってしまい、
「おい、誰か止めろ」と男子が言いだして、必死になって剥がしていたけれど、2人ともやりあってしまい、
「何してるんだ?」と拓海君が教室に入ってきて、
「やめろ」と引き剥がしていた。
「本郷、どうしてこうなった?」と聞いていて、2人ともにらみ合っていた。
「なるようになっただけさ。本郷の高飛車な態度が気に入らなくて言ってしまったら、本郷がなぐりかかって」
「逆。本郷になぐりかかった」とそばの男子が説明していた。
「まったく、そういうことはするなよ。本郷もどうしたんだ?」と拓海君に聞かれて、
「こいつに言われたくなかっただけだ。こんな下のほうの」
「やめろ」と拓海君が止めた。後ろで三井さんたちがひそひそと笑っていて、
「やめなさい、みっともない。あなたも何か言ったらどう?」と根元さんが仙道さんを見たあと、
「本郷君、山崎君、ちょっと」と手招きして、3人が出て行った。
「なんだよ、あいつ」と怒っていて、あちこち男子が、
「あいつのほうが悪いと思うぞ。あの程度で怒ってね」
「でもさ、変えてくれって言いすぎじゃないか?」
「成績だって下がってるじゃないか。本宮のほうが」
「いいよ、やめてくれ。俺は器じゃないから」と本宮君が止めて、
「でもさあ」
「成績順じゃないさ。こういうことがあったとき止められるかどうかのほうが大事だと思う。お互いピリピリしてくるのはしょうがないけど、謝った方がいいと思う」と本宮君に言われて、
「そうね」と仙道さんにも言われて、
「しょうがないな」とその男子も出て行った。
「いつかやると思ったよ。あいつ言いすぎだよな。磯辺と同じだ。成績だけで判断してる。先生や親に言われた事を今更言われたくないね」
「言えてるよな。同じ年なのに上からものを言われたら面白くないよ。ただでさえ、親に言われて」と言いあっていた。

 昼休みに桃子ちゃんと話をしていたら、
「詩織ー!」と呼ばれて、
「ごめん」と教室を出た。霧さんが手を振っていて、
「なにかあった?」と聞いたら、
「あのさー、何とかなりそうだから、空港券の手配」と言ったので、慌てて連れ出した。
「内緒だって言ってあったのに」と人から離れてからぼやいたら、
「ああ、ごめん。そうだったね。あまりにうれしくてさ。朝に言おうと思ったけど、篤彦と話してたし」とうれしそうだった。
「それから、航空券の手配はなに?」と聞いた。
「詩織たちと同時に取った方がいいと聞いたから一緒に取って」と言われて、
「じゃあ、手紙に書いておく。お母さん、もう帰っちゃったの」
「なんだ、残念だね」
「しょうがないよ、仕事の都合で来てるんだし」
「わたしのお母さんがね。篤彦を気に入っちゃって、すぐにでも結婚しなさいと言っていて」
「え?」とさすがにびっくりした。
「それでさぁ。お母さんに言われた事を報告したら、延々と説教されて、さっきまで取り成してたんだけど、機嫌が悪くなっちゃった。詩織がなだめて」
「そんな事言われても。それは当事者同士の問題でしょう?」
「まだ早いって言うんだよ。そうでもないと思うけどなぁ。どう思う?」
「早いと思います」
「関係結んでからの方がいいのかな」とあっけらかんと言われて、噴出していた。
「あれ、どうしたの?」
「あ、あ、あのね……」
「なに?」
「えっと、そういうことはそんな簡単に口に出す事じゃ」
「あれ、変なの? 詩織たちはまだ?」と聞かれてさすがに恥かしくて、
「霧さん、ここは学校だよ」と小声で言った。
「え、どうして? 普通、それぐらいはねえ」
「普通じゃないと思う」
「へぇ、そう? そうでもないと思うけどな」半分外人だからだろうか。さすがについていけない……と頭を抱えていたら、
「そいつには刺激が強すぎるから、言うな」と半井君の声がした。
「お前の場合は小学生からやり直せ。そういう部分だけ進むな」と霧さんを見て呆れていた。
「お前もいちいち真に受けるな。どうせ、冗談だ」
「え、いいよ、別に、篤彦なら」と言われて思わず耳をふさいだ。
「うぶなやつ。正反対だよな。霧もそっちの知識より、英語力と一般常識と中学校レベルの学力を身につけておけよ。絶対に苦労するぞ」
「篤彦がいるからいいよ。カバーしてくれるし。どっちかが出来ればそれでいいじゃない」
「お前、呆れるぞ。カバーする方の身になれよ。男子はともかく、女の子ではフォローしてくれないぞ。綺麗なだけじゃ、生きていけないぞ」
「大丈夫だって。何とかなるよ」
「その精神は買うけどな。俺とは無理だと言ってるだろ。他を当たれ」
「えー、いいじゃない」
「いい加減、手を離せ」と私の手を外していて、
「えっと、お邪魔だろうから戻る」と戻ろうとしたら、
「お前に用があるから来たんだ。こいつのバカな話に付いていけるか」と怒っていて、
「いいじゃないの。お母さんが気に入ってくれたから」
「俺が許可してない。さっさと戻れよ」と怒っていて、
「もう、それぐらいいいじゃない」と言いながら戻って行った。
「すごいね。その年でもう決まっちゃうんだ?」
「ないね。あいつとだけはないさ」
「どうして?」
「好みじゃない」と言い切ったため、
「え、でも、あれだけ仲がよくて」
「友達としても、ちょっとな。さすがに疲れるぞ。前向きなのはいいけど、もう少し自力でやってほしい」
「でも、本を読んだりしているじゃない」
「あいつの場合は周りが助けてくれるから、甘えているのかもな。あの顔じゃあしょうがないけど」
「顔が関係あるの?」
「男に取っては重要らしいな。そう聞いたよ」
「だれに?」
「爺さんと親父」
「なるほど」
「最もクラスの男子の話を聞いていたら、そうだと思う。人気がある子って顔が良くて言いなり系だから」
「え?」
「控えめってことだよ。俺はもっと自分の意見を持ってるやつのほうがいいね。会話もできないじゃないか」
「なら、ぴったりの人がいるじゃない」
「却下。あいつも無理。柔軟性が足りない。長い目で見れないやつは無理だな。目先で動く」すごい事を言うなぁ。
「それより、頼んでくれたか?」
「手紙は出したよ」
「ふーん、そうか。それならいいけど」
「霧さんの分も頼まないといけないね」
「あいつはやめておけ。一緒は嫌だ」
「どうして?」
「勝手に盛り上がりそうだ。俺の意思を無視してね」
「よほど何かあったの?」
「あいつの場合は」
「詩織」と呼ばれてそっちをみたら、拓海君が睨んでいた。
「彼氏の束縛か。いい加減、本当の事を言えよ」と小声で言われて、
「え?」と驚いたら、
「もう言っておいたほうがよくないか?」と聞かれて、
「正式に決まってからにしたいの」と小声で言ったら、
「ふーん、そうやって延ばしていくだけだろ。いつ言ったって変わらないさ」
「え、でも……」と迷っていたら、
「詩織」ともう一度呼ばれて、
「ごめん」と言いながら彼から離れた。
「言っただろ。あいつに近づくな。女子が睨んでる」と小声で言われて、周りを見たらひそひそ言っているのが見えた。
「あいつら、王子のファンみたいだからな。気をつけろよ」
「ごめん、ちょっと相談があって」
「そればっかりだな。旅行するのはいいが、あいつまで付いていくと言いそうだ」と言われて、どうしようか迷ったけれど、
「……ごめん」とだけ言った。

 部活の横でバレーの練習が盛り上がり、掛け声がすごくなった。
「なんだかすごいですね」と結城君が言って、クラスメイトなのか、
「参加しろー」と男子に呼ばれていて、
「あればっかりだ。俺はアタックなんて無理」と結城君が言って、みんなが笑っていた。
「私は合流したいかもね」と一之瀬さんが言ったけれど、
「ちゃんとやってよ」と相良さんに言われて、
「はいはい」と答えていた。佐藤ペアに負けたのがよほど悔しかったらしくて、時々睨んでいた。
「ねえ、王子となに話してたの?」と元川さんが寄って来た。
「耳塞いでたじゃない」と言われても困ってしまい、
「さあねえ、聞こえなかったし」とごまかした。
「そう言えばさぁ。王子って。返上したんでしょう?」と湯島さんが聞かれていて、
「王子と聞こえると睨んでたよ」と教えていて、
「えー、駄目なの」とぼやいていた。
「王子ってさすがに抵抗があるんじゃないの?」とみんなが笑っていた。

 基本練習を終えたあと、試合をしていた。千沙ちゃんがやりたいと言い出したため、やっていたけれど、
「いまいちだな」と、男子に言われてしまった。
「基本はいいけど、その後の展開が」と金久君達に言われて、
「そっちこそ、どうなのよ」と相楽さんとやりあっていた。千沙ちゃんたちといえば、
「押され気味だな。矢上のほうが調子がいい分だけ押している」と男子に言われてしまった。
「近藤は真面目すぎるね。もっと、変化させるとかさ。基本過ぎて面白みに欠けるね」と金久君が言って、
「そっちはあれこれやりすぎて格上相手だと自滅するくせに」と男子に笑われていた。
「へぇ、そうなんだ?」と相良さんと一之瀬さんが笑った。
「うるさい。湯島たちには勝った」と言いあっていて、
「余裕があるかどうかは重要かも」と思わず言ってしまった。
「どうして?」と湯島さんに聞かれて、
「ねえ、やろうよ」と百井さんに言われて、湯島さんたちと対戦していた。終わったあと、
「まだまだだよね」と千沙ちゃんが疲れていて、矢上さんが、
「勝ったら選手になれますか?」と堂々と聞いたため、みんなが顔を見合わせた。
「まだ、やってもいないうちにその発言、すごいわね」と相良さんが言ったら、
「いえ、気合の入れ方が違いますから聞いておきたかっただけです」と言ったため、
「やる気が出すためって事? すごい、負けず嫌いだね」とみんなが笑った。人それぞれだなぁと聞いていた。
「何か、意見ある?」と小平さんが聞いていて、
「結局、どうだったの?」と元川さんが聞いた。
「うちと一之瀬さんのところはこっちが勝ったわ。百井さんのところは五分五分だったけど、かろうじて一之瀬さんが。矢上さんと近藤さんは、矢上さん」
「ふーん、じゃあ、まだ決められないね」とみんなが考えていた。

 ぼんやりしていたら、
「勉強しなくてもいいのか?」と聞かれてそっちを見たら、半井君が帰るところだった。
「気が乗らない」
「ふーん、一応、テープとかは聞いてる程度だろ。向こうで困るぞ」
「分かってる」と小声で言った。
「よほど、後ろが気になるようだな。まぁ、引退するまでは普通に過ごしたいのかもな。一之瀬はほっとけよ。どうせ、気分で変わる女だ」
「あなたが優しく笑ってあげればきっといいと思う」
「なんで、そんなことしないといけないんだ?」
「笑ってほしかったらこっちも笑った方がいい。おじいちゃんに教えてもらったの」
「ふーん、おじいちゃんねえ」
「田舎に住んでいたから、最初は閉鎖的だった。でも、慣れてきて私が笑うようになったら、相手も受け入れてくれたの。それでそういう意味だったんだなと思った。私は萎縮していて、泣いてばかりいたらしくて」
「ふーん。それはあるかもな。相手の態度で敵か味方か判断するだろうし」
「半井君も彼女に笑顔で話してほしければ、笑顔で接しないと」
「やだ」と即答したので笑ってしまった。
「笑ってあげればいいじゃない。笑顔で手を振ってあげれば、その辺の女の子がみんな優しくなりそう」
「俺には無理。本宮だって疲れたようじゃないか。そういうのは向き不向きがある。どうしてもと言うなら、別の作戦を考えてやるよ」
「作戦?」
「お前はがんばって勉強しろ。特に英語、夏休みは特訓しないとな。そういうことで」と行ってしまった。

 拓海君が来るまでその辺を散歩していた。
「いい加減、告白したらいいじゃない」という声が聞こえた。
「え、でも」
「手紙だけじゃ気持ちは伝わらないよ。あちこち、一緒に勉強しようと約束してるらしいよ。もっとも、塾にいく人も多いんだって。クーラーがあるからって理由」
「へぇ」と言っている声に聴き覚えがあった。
「でもね、なんだか、優しいけれど、どこか煮え切らなくて」
「押せばいけるよ。彼なら優しいもの」
「でも」
「前ちゃんぐらいの成績なら言えるけど」と言ったので、誰だかわかってしまった。ちょっと離れたところにいたので向こうは気づいていないようで、そっと離れた。一緒にいたのは円井さんだろう。そうして、前ちゃんと言ったのは、前末さんだろうなと思った。前末さんは桃子ちゃんの次ぐらいに成績がいいと聞いている。そういう話をこの間していて、順位発表していた。私もがんばらないといけないし、英語の検定も受けないといけないから準備しないといけないなとぼんやり考えながら戻っていた。学校によっては英語補習クラスがあるところもあるらしい。公立の学校もあると聞いた。検定も受けておいたほうがいいと言われているし、半井君も受けるのかもしれないなと考えていたら、
「どこに行ってた?」と拓海君がやってきた。
「ちょっと考え事」
「あれほど、あいつと会うなと言っても話すんだな。もっとも、あいつが話しかけているのが面白くないけど」
「そう?」
「芥川と違って、女子には無愛想だぞ。男子も一部と合わないらしいな。あいつ、ハッキリしてるよ」
「そうかもね」
「お前も話すのをやめた方がいい。噂になってるぞ。この間のレストランでの一件でさすがに話題になって」
「夏休み終わるまでにあの二人がくっつくと思うから大丈夫」
「本当か? 戸狩は逆だと言ってたぞ」
「え、どうして?」
「王子が話しているのは確かに芥川さんが多いけれど、それは向こうが話しかけているだけ。王子が話しかけているのはお前だから」
「ふーん。相談があるからだけだよ」
「まさか、あいつも行くとか言わないよな」と聞かれてため息をついた。
「やっぱり」と睨まれてしまった。
「向こうのお友達の話を聞きたいんだって。それに通訳代わりに霧さんと一緒にってことみたい」
「ふーん、どうして、そういうことは早く言わないんだ」と怒られてしまい、
「ごめんなさい」と頭を下げた。
「行こうぜ」と後ろをチラッと振り返ってから歩き出した。見たら、バスケ部の男子がニヤニヤしてこっちを見ていた。
「ごめんね」
「しょうがないよな。でも、よく、そんな暇があるよな。あいつ、勉強大丈夫か? 国語が相当足引っ張ってると聞いたぞ」
「そこまでひどいの?」
「数学は100点ばかり。英語だって95以上だと聞いたぞ」すごいかも。
「後の教科は知らない。そこまで良くないようだけど」
「日本の歴史は長いから苦手と言ってた」
「それはそうだろう。アメリカは短いからな」
「そうじゃなくてね。長くてもやってることが現代と変わらないからって。戦争するか、権力闘争」
「なるほど、納得。でも、他にも色々あるだろうに」
「さあね。彼は良く分からない。拓海君とは違うもの。優しさが」
「え?」
「拓海君に甘えるのはやめないといけないね。ごめんね」
「どうしたんだ、突然」
「ちょっとね、色々考えたの。高校に行ったら離れちゃうから、甘え癖を直さないと」
「そんな事は心配するなよ。相談に乗ってやるから。電話でもいいし、自転車で行ってやるよ」
「いいの。そんな暇があったら部活と勉強しないと。進学校なら受験も大変じゃない」
「ああ、それね。聞いたよ。でも、ほっとくらしいぞ」
「え、どうして?」
「学校によっては取り組み方が違う。進学校でもあそこまでのレベルだとほっといてもライバル意識が強くなり負けず嫌いが多く、プライドもあるから落ちこぼれない限り自分で勉強していくそうだ。受験も同じように通信教育や予備校の補習を自分に合ったものを探してやっていくらしいよ。でも、海星はそれなりに取り組むらしいぞ。聞いてないのか?」と言われて困ってしまった。
「どうした? まさか、その上を狙ってるのか? 今からだと内申が難しいぞ。テストの点が上がっても、五分五分だと大変だから先生とやりあうらしい」
「えっとね、私」
「とにかく、一緒にやろうぜ。そのほうが安心だ」
「いいの」
「どうして?」
「やらないといけないことがあるから。お母さんの知り合いにそういう勉強の会を紹介してもらったから、そこに参加しないと」
「どうして、そういう事を早く言わないんだよ」と怒り出したので、びっくりした。
「この頃、変だぞ。王子と密会したり、勝手に決めていて、相談しろよ」
「あのね、私、少しでも負担に」
「やめろ。あいつらの言ったことは気にするな。お前まで気にする事はないさ。あいつらはいつもああやって」
「何か言ってるの?」と聞いたら、
「ああ、いや、それは……」と困った顔をしていた。
「誰?」と聞いたけれど黙っていた。
「そう……。とにかく、決めてしまったのごめんなさい。母との約束だから」
「どうしてだ?」
「父とは進学の話が出来ないの。お金の問題もそれからそのほかも逃げていて、相談にならなくて。母と決めてあるから大丈夫。点数も上げないといけないから特訓しないと怒られるの」
「相談してくれたら良かったのに」
「仕方ないの。今まで考えてなさ過ぎたんだと思う。拓海君に迷惑ばかり掛けたくないし」
「遠慮する仲じゃないだろう?」
「いいの。拓海君は部活と受験。がんばらないとね」
「あの人には負けられないよな。全教科100点取ったら来いって約束。守らないと」
「えー、それはいいよ」
「いや、負けたままでは嫌だね」
「拓海君も負けず嫌いだね」と言ったら、
「当たり前だ。あの人に負けるわけにいかない」と真剣に言ったので笑ってしまった。


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